パルタックの完全子会社化(2005年・メディパルHDの決断)

更新:
論点 日用品卸を医薬品と並ぶ事業にするか
メディパルHD:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
全国大手の日用品卸の統合と、医薬品卸だけの事業構成の転換

何をなぜ決めたか:全国大手の日用品卸の統合と、医薬品卸だけの事業構成の転換

概要

2005年4月18日、メディセオホールディングスとパルタックの取締役会は、株式交換による経営統合を決議し、基本合意を結んだ。5月13日に株式交換契約を締結し、10月1日にパルタックはメディセオHDの完全子会社となった。パルタックの普通株式1株にメディセオHDの普通株式1.50株を割り当て、45,353,485株を交付している。株式交換交付金の支払いはなかった。

同じ10月1日、メディセオHDは商号をメディセオ・パルタックホールディングスへ改めた。統合の目的に掲げたのは、医薬品・医療機器に限られた事業から、化粧品・日用雑貨品を含む「新しい業態卸」への転換である。パルタックの三木田國夫社長は、メディセオ・パルタックHDの代表取締役副社長に就任した。

背景

メディセオHDは、統合の前から医薬品卸の再編を続けていた。2004年4月にアトルとエバルスを株式交換で完全子会社とし、10月には会社分割で事業持株会社に移り、商号をメディセオホールディングスに改めた。2005年3月期の連結売上高は1兆6,658億15百万円である。それでも医薬品等卸売事業が売上高・営業利益・資産の9割超を占め、事業の種類別セグメント情報は開示していなかった。

パルタックは大阪市に本店を置く化粧品・日用雑貨品の卸で、販売先はドラッグストア、コンビニエンスストア、ホームセンター、GMSであった。2005年9月期の売上高は3,967億3百万円、経常利益は87億54百万円である。統合を発表した時点で、両社の間に資本関係・人的関係・取引関係はなかった。

内容

交換比率は、メディセオHDが中央青山フィナンシャル、パルタックが野村證券に算定を依頼し、その結果をもとに両社が協議して決めた。現金の支払いを伴わない株式交換で、パルタックの株式取得価額は59,821百万円、連結開始時の連結調整勘定は11,137百万円となった。2004年に統合したアトルとエバルスでは、連結調整勘定がそれぞれ△18,554百万円・△18,566百万円であった。

統合初年度の2006年3月期、連結売上高は1兆9,217億13百万円、経常利益は327億36百万円と前期比41.2%増えた。化粧品・日用雑貨品卸売事業は10月からの6か月で売上高1,964億22百万円、営業利益29億67百万円を計上した。売上高に対する営業利益の比率は1.5%であった。期末配当には経営統合記念配当3円を加えた。

含意

統合の後、日用品卸はパルタックへ集めた。2006年10月にクラヤ三星堂とエバルスの一般用医薬品卸をパルタックに集約し、2008年4月にはコバショウと合併させた。2009年3月期、化粧品・日用品、一般用医薬品卸売事業の営業利益は7,521百万円となり、医療用医薬品等卸売事業の5,876百万円を上回った。2011年3月期のセグメント利益は8,725百万円で、医療用の3,688百万円の2倍を超えた。

2010年3月、Paltacは東証・大証の市場第一部に上場し、メディパルHDは保有株式9百万株を売り出した。2026年5月には一転して1株6,650円の公開買付けで完全子会社化を決め、7月に議決権の92.64%を取得して残る株式の売渡請求に進んだ。PALTACの上場廃止は8月10日の予定とされた。

いつ何が起きたか 12件
考察:薬価の外にある売上を求めた統合
考察

考察:薬価の外にある売上を求めた統合

なぜメディセオHDは、医薬品卸ではなく日用品卸を統合したのか。2004年にアトルとエバルスを加えても、事業の9割超は医薬品等卸のままであった。医薬品卸どうしの統合は規模を大きくするが、売る商品と得意先は変わらない。一方、パルタックの得意先はドラッグストアやホームセンターで、医療用医薬品とは別の値決めで動く。株式交換なら現金の支出も要らない。医薬品の外に収益源を持つ手段として、全国大手の日用品卸の全株式を取得する選択は合理的だったと思われる。

もっとも、日用品卸は利幅の大きい事業ではなかった。統合初年度の半期で、化粧品・日用雑貨品卸売事業の営業利益は29億67百万円で、売上高の1.5%にとどまる。しかも、アトルとエバルスの統合では連結調整勘定がマイナスで生じたのに対し、パルタックでは11,137百万円のプラスとなった。純資産を上回る対価で、利幅の薄い事業を取得したことになる。医薬品と日用品では仕入先も売り先も違い、統合の効果がどこまで出るかは発表の時点では見えていなかった。

統合の成果は、日用品卸の利益に表れた。2009年3月期、日用品卸の営業利益は7,521百万円となり、医療用医薬品等卸の5,876百万円を上回った。2011年3月期には8,725百万円と、医療用の2倍を超えている。医薬品卸の利益が伸び悩むなかで、統合した日用品卸が主な利益源になった。メディパルHDは2010年にこの会社を上場させて株式の一部を売り出し、2026年には1株6,650円の公開買付けで完全子会社化に動いた。上場で外部の株主を迎えた事業を、改めて全株取得する判断は、統合の価値を会社自身が認め直したものとみられる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

メディパルHD:日用品卸セグメントの売上高と営業利益

化粧品・日用品卸 売上高(百万円)化粧品・日用品卸 営業利益率(%)

日用品卸の営業利益は2006年3月期の半期29億円から、2011年3月期に87億円へ増えた

メディパルHD:日用品卸セグメントの売上高と営業利益
(百万円) 化粧品・日用品卸 売上高化粧品・日用品卸 営業利益 備考
2006年3月期 196,4222,967 連結は10月から。6か月分の化粧品・日用雑貨品卸売事業
2007年3月期 515,1033,939 一般用医薬品卸を加えた区分に変更
2008年3月期 535,9486,564
2009年3月期 711,0297,521 2008年4月にコバショウと合併
2010年3月期 717,4938,677 2010年3月にPaltacが上場
2011年3月期 734,7598,725 セグメント情報の新基準。営業利益の列はセグメント利益
出所:メディセオ・パルタックホールディングス 有価証券報告書 第97期〜第100期(2006年3月期〜2009年3月期)【事業の種類別セグメント情報】 / メディパルホールディングス 有価証券報告書 第101期(2010年3月期)【事業の種類別セグメント情報】、第102期(2011年3月期)【セグメント情報】
出所:メディセオ・パルタックホールディングス 有価証券報告書 第97期〜第100期(2006年3月期〜2009年3月期)【事業の種類別セグメント情報】 / メディパルホールディングス 有価証券報告書 第101期(2010年3月期)【事業の種類別セグメント情報】、第102期(2011年3月期)【セグメント情報】

メディパルHD:連結売上高と経常利益の推移

売上高(百万円)経常利益率(%)
メディパルHD:連結売上高と経常利益の推移
(百万円) 売上高経常利益 備考
2002年3月期 1,222,2219,130
2003年3月期 1,274,50213,644
2004年3月期 1,283,92519,312
2005年3月期 1,665,81523,185 2004年4月にアトルとエバルスを連結
2006年3月期 1,921,71332,736 2005年10月にパルタックを連結。6か月分
2007年3月期 2,166,76241,574 パルタックが通期で寄与
2008年3月期 2,254,93642,635
2009年3月期 2,463,56929,005
2010年3月期 2,546,02926,802 負ののれんの償却が終わり経常利益が減少
2011年3月期 2,662,82122,888
出所:メディセオ・パルタックホールディングス 有価証券報告書 第97期(2006年3月期)【主要な経営指標等の推移】 / メディパルホールディングス 有価証券報告書 第102期(2011年3月期)【主要な経営指標等の推移】
出所:メディセオ・パルタックホールディングス 有価証券報告書 第97期(2006年3月期)【主要な経営指標等の推移】 / メディパルホールディングス 有価証券報告書 第102期(2011年3月期)【主要な経営指標等の推移】

株式交換の条件

株式交換の条件
科目 概要 備考
完全子会社とした会社 株式会社パルタック 大阪市中央区南久宝寺町。化粧品・日用雑貨品卸売業。資本金52億6百万円
取得の法的形式 株式交換 当社を完全親会社、パルタックを完全子会社とする株式交換
株式交換契約の締結 2005年5月13日
効力発生日 2005年10月1日 同日、商号を株式会社メディセオ・パルタックホールディングスへ変更した
株式交換比率 1対1.50 パルタックの普通株式1株に当社の普通株式1.50株を割当交付。第三者機関の算定に基づく
交付した株式 普通株式45,353,485株 発行済株式総数は189,100千株から242,518千株へ増えた
取得した議決権比率 100%
株式の取得価額 59,821百万円 株式交換による株式取得価額は59,846百万円。現金の支出はない
資本剰余金の増加 59,916百万円 株式交換による増加高。期末残高は131,328百万円
受け入れた流動資産 102,121百万円 連結開始時。ほかに繰延資産9百万円
受け入れた固定資産 43,932百万円
引き受けた流動負債 86,271百万円
引き受けた固定負債 11,108百万円
連結調整勘定 11,137百万円 5年間の均等償却。2007年3月期からのれんとして総額表示に改めた
パルタックの売上高 396,703百万円 2005年9月期。経常利益8,754百万円、当期純利益4,757百万円
パルタックの資本合計 58,385百万円 2005年9月30日現在。資産合計154,779百万円、負債合計96,394百万円
統合初年度の連結売上高 1,921,713百万円 2006年3月期。パルタックの寄与は10月からの6か月。前期比15.4%増
通期で寄与した連結売上高 2,166,762百万円 2007年3月期。前期比12.8%増。営業利益は27,776百万円で34.8%増
出所:メディセオ・パルタックホールディングス 有価証券報告書 第97期(2006年3月期)【経営上の重要な契約等】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】【連結剰余金計算書】 / 同 第98期(2007年3月期)【財政状態及び経営成績の分析】
出所:メディセオ・パルタックホールディングス 有価証券報告書 第97期(2006年3月期)【経営上の重要な契約等】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】【連結剰余金計算書】 / 同 第98期(2007年3月期)【財政状態及び経営成績の分析】
参考文献

参考文献

参考
  • メディセオ・パルタックホールディングス 有価証券報告書 第97期(2006年3月期)【経営上の重要な契約等】
  • メディセオ・パルタックホールディングス 有価証券報告書 第97期(2006年3月期)【主要な経営指標等の推移】
  • メディパルホールディングス 有価証券報告書 第102期(2011年3月期)【沿革】
  • メディセオ・パルタックホールディングス 有価証券報告書 第97期(2006年3月期)【事業の種類別セグメント情報】
  • メディセオ・パルタックホールディングス 有価証券報告書 第97期(2006年3月期)【連結キャッシュ・フロー計算書関係】
  • メディセオ・パルタックホールディングス 有価証券報告書 第97期(2006年3月期)【業績等の概要】
  • メディセオ・パルタックホールディングス 有価証券報告書 第97期(2006年3月期)【業績等の概要】【事業の種類別セグメント情報】
  • メディセオ・パルタックホールディングス 有価証券報告書 第98期(2007年3月期)【業績等の概要】
  • メディセオ・パルタックホールディングス 有価証券報告書 第100期(2009年3月期)【事業の種類別セグメント情報】
  • メディパルホールディングス 有価証券報告書 第102期(2011年3月期)【セグメント情報】
  • メディパルホールディングス 有価証券報告書 第101期(2010年3月期)【業績等の概要】
  • メディパルホールディングス 2026年3月期 決算短信【重要な後発事象の注記】
  • メディセオ・パルタックホールディングス 有価証券報告書 第97期〜第100期(2006年3月期〜2009年3月期)【事業の種類別セグメント情報】
  • メディパルホールディングス 有価証券報告書 第101期(2010年3月期)【事業の種類別セグメント情報】、第102期(2011年3月期)【セグメント情報】
  • メディパルホールディングス 有価証券報告書 第102期(2011年3月期)【主要な経営指標等の推移】
  • メディセオホールディングス・パルタック 適時開示「両社の経営統合と株式交換基本合意締結および完全親会社の商号変更と代表取締役増員に関するお知らせ」
  • メディセオホールディングス・パルタック 適時開示「株式交換契約の締結に関するお知らせ」
  • メディパルホールディングス 決算短信「2026年3月期 決算短信【重要な後発事象の注記】」
  • PALTAC 適時開示「株式会社メディパルホールディングスによる当社株式に対する株式売渡請求を行うことの決定、当該株式売渡請求に係る承認及び当社株式の上場廃止に関するお知らせ」
  • メディセオ・パルタックホールディングス 有価証券報告書「第97期(2006年3月期)【経営上の重要な契約等】【業績等の概要】【事業の種類別セグメント情報】【連結キャッシュ・フロー計算書関係】【主要な経営指標等の推移】」
  • メディセオ・パルタックホールディングス 有価証券報告書「第98期(2007年3月期)【業績等の概要】【事業の種類別セグメント情報】」
  • メディセオ・パルタックホールディングス 有価証券報告書「第99期(2008年3月期)・第100期(2009年3月期)【事業の種類別セグメント情報】」
  • メディパルホールディングス 有価証券報告書「第101期(2010年3月期)【業績等の概要】・第102期(2011年3月期)【沿革】【セグメント情報】【主要な経営指標等の推移】」

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