GMOインターネットグループ 暗号資産マイニング事業参入 北欧の自社採掘にチップ開発とマシン販売を加え、1年後に販売を中止して自社採掘へ絞った判断

更新:

時期 2017年9月
当時の社長 熊谷正寿
論点 本業の外に置いた設備投資型の新事業と、その損失の限定
何をなぜ決めたか
概要

2017年9月7日、GMOインターネット(現GMOインターネットグループ)は仮想通貨マイニング事業への参入を発表し、同年12月に事業を始めた。自社で採掘するだけでなく、半導体チップを共同で開発してマイニングマシンを外部へ売り、設備の一部を貸し出すクラウドマイニングまで手掛ける三本立てを組んだ。

投資計画は発表時の総額100億円から、2018年2月には総額380億円へ引き上げた。2018年12月25日、マイニングマシンの開発・製造・販売を中止して自社マイニングだけを残すと決め、仮想通貨マイニング事業再構築損失35,385百万円を特別損失に計上した。

背景

インターネットインフラ、広告・メディア、ネット金融を収益源に、2017年12月期の連結売上高は154,256百万円、経常利益は17,315百万円に達していた。同じ2017年9月には子会社のGMOコインが仮想通貨交換事業を始めている。仮想通貨の領域について会社は、マイニング、エクスチェンジ、ペイメントの三つに商機があるとみて、手数料の高騰で商用化が見通せないペイメントを後回しにし、マイニングとエクスチェンジで首位を狙う順番を選んだ。

内容

採掘能力の目標は、発表時の500PH/sから2017年11月に1,500PH/s、2018年2月には2018年末3,000PH/sへと引き上げられた。電力は北欧で調達し、電気代は日本の4分の1程度とした。2018年1月にはみずほ銀行から5,000百万円、大和証券から10,000百万円をマイニング事業の投資資金として借り入れた。

2018年下期からは自社チップへ切り替える計画で、償却を終えた貸し出し用マシンを自社採掘へ回せる点を挙げ、会社は 『残るは電気代となるため、ある意味リスクは限定的だと捉えています』 と答えていた。

含意

ビットコイン価格の下落と、想定を上回るグローバルハッシュレートの上昇で、自社マイニングは想定どおりのシェアを取れなかった。マシン事業は部材不足で製品化が遅れ、販売に至らないまま中止となり、開発会社ZettaHashへの製造前払いの債権を合同会社MP18へ譲って債権譲渡損17,421百万円が出た。

2018年12月期の連結営業利益は21,787百万円と増益を保った一方、親会社株主に帰属する当期純損益は20,707百万円の損失へ転じた。自社マイニングは北欧2拠点のうち1拠点を閉じ、電気代が北欧の半分以下となる新拠点へ移した。

いつ何が起きたか 9件
筆者の見解
筆者の見解

本業の外に置いた賭け

この参入は新事業というより、ネット金融で積んだ運用の勘を設備産業へ持ち込んだ投資だったのだろう。マイニングの採算はビットコイン価格と世界の採掘能力という、会社が一つも動かせない二つの変数で決まる。投資総額を半年で100億円から380億円へ積み増したのは、価格が高いうちに規模を取れば償却は数か月で済むという読みに立ったからだろう。自社チップとマシン販売を加えたのは、同じ変数に採算を左右される他社へ道具を売る側にも回り、変動の片側を埋めようとした方針と読める。

もっとも、道具を売る側に回る計画は、価格下落の局面で道具の値も同時に崩れることを織り込んでいなかった。販売に至る前に中止したマシン事業だけで23,696百万円の損失が出ている。それでも2018年12月期の連結営業利益は21,787百万円と前期を上回り、損失は特別損失の一行に収まった。本業の稼ぎを傷つけずに撤退線を引けたことは、2007年のローン・クレジット事業の撤退から続く損失を限る方針が働いた到達点といえる。

Yutaka Sugiura, 2026年9月

業績の推移
参入と再構築の条件

参入と再構築の条件

科目 概要 備考
参入の発表日 2017年9月7日 発表時の目標は2018年上期に500PH/s
事業の開始 2017年12月 12月20日に自社マイニングを開始
事業の構成 自社マイニング/マシン開発・販売/クラウドマイニング
当初の投資計画 総額100億円 2017年9月7日の発表時。目標値の達成に必要なキャッシュフローベースの数値
引き上げた投資計画 総額380億円 2018年2月9日に提示。電気代などのランニングコストを含む
採掘能力の目標 3,000PH/s 2018年末の目標。2017年11月時点の目標は2018年下期に1,500PH/s
投資資金の借入 15,000百万円 2018年1月にみずほ銀行5,000百万円、大和証券10,000百万円
クラウドマイニングの料金 1契約500万ドル 2年間のレンタル料の一括前払い。申込受付は2018年3月から
再構築の決定 2018年12月25日 マシンの開発・製造・販売を中止し、自社マイニングは収益構造を再構築して継続
再構築損失 35,385百万円 自社マイニング11,688百万円、マシン開発・製造・販売23,696百万円
うち減損損失 10,098百万円 工具、器具及び備品6,476百万円、建物及び構築物585百万円、その他3,035百万円
うち債権譲渡損 17,421百万円 ZettaHashへの製造前払いに係る債権を合同会社MP18へ譲渡
うち貸倒引当金繰入額 3,732百万円 マシン開発・製造・販売事業の損失に含む

出所:GMOインターネット 有価証券報告書 第27期(2017年12月期)【事業等のリスク】【重要な後発事象】・第28期(2018年12月期)【連結損益計算書関係】/2017年12月期 決算説明会資料

仮想通貨(暗号資産)事業セグメントの売上高と営業利益

GMOインターネットグループ:仮想通貨(暗号資産)事業セグメントの売上高と営業利益

(百万円) 売上高営業利益 備考
2017年12月期 857203 参入を決めた期。第28期で新セグメントへ組み替えた前期の値
2018年12月期 8,246△1,362 自社マイニングの売上高4,210百万円。マシン事業は販売に至らず中止
2019年12月期 6,072958 再構築のコスト削減でマイニングが黒字転換。マイニング売上高2,142百万円
2020年12月期 6,730769 旧拠点の閉鎖と半減期で、マイニング売上高は1,338百万円
2021年12月期 20,6349,093 暗号資産交換事業の取引高が拡大し、交換事業の売上高は13,380百万円
2022年12月期 6,212△342 暗号資産市場の低調で交換事業の売上高が69.0%減
仮想通貨(暗号資産)事業の売上高と営業利益率
売上高(百万円)営業利益率(%)

出所:GMOインターネット 有価証券報告書 第28〜32期(2018年12月期〜2022年12月期)【経営成績等の状況の概要】【セグメント情報】

連結の経常利益と当期純利益

GMOインターネットグループ:連結の経常利益と当期純利益

(百万円) 経常利益親会社株主に帰属する当期純利益 備考
2012年12月期 9,1754,518
2013年12月期 10,9415,244
2014年12月期 12,7345,841
2015年12月期 14,85713,419
2016年12月期 16,6867,234
2017年12月期 17,3158,030 参入を決めた期。マイニング事業への投資は77億円
2018年12月期 19,135△20,707 特別損失37,285百万円。うち再構築損失35,385百万円
2019年12月期 24,5068,337
2020年12月期 27,13610,284
2021年12月期 43,39317,527
2022年12月期 46,02513,209

出所:GMOインターネット 有価証券報告書 第26期(2016年12月期)【主要な経営指標等の推移】 / GMOインターネット 有価証券報告書 第27〜32期(2017年12月期〜2022年12月期)【経営成績等の状況の概要】 / GMOインターネット 2017年12月期 決算説明会資料(CFサマリー)

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参考文献
出典・参考

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