会社更生法への切替とイオンの支援受入れ(2001年・マイカルの決断)

更新:
論点経営陣が残る再建か管財人の再建か
マイカル:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)
経営陣が残る民事再生の放棄と、管財人のもとでのイオン傘下の再建2001年11月22日、マイカルは民事再生法による手続きを廃止し、会社更生法の適用を申請した。支援企業はイオンに決まり、瀬戸英雄弁護士が保全管理人に就任した。民事再生法の施行以来、初めての更生法への移行だった。

何をなぜ決めたか:経営陣が残る民事再生の放棄と、管財人のもとでのイオン傘下の再建

概要

2001年11月22日、マイカルは民事再生法による手続きを廃止し、会社更生法の適用を申請した。支援企業はイオンに決まり、瀬戸英雄弁護士が保全管理人に就任した。民事再生法の施行以来、初めての更生法への移行だった。

この選択は、2か月前の判断を覆すものだった。9月14日、取締役会は会社更生法の申請を準備していた四方修社長を動議で解任し、新社長の山下幸三氏のもとで民事再生法の適用を申請していた。山下幸三氏は当時を『民事再生法か会社更生法かは問題ではなかったが、会社更生法はイオン(旧ジャスコ)の支援が前提だった』と振り返っている。

背景

破綻の前、マイカルは連結で1兆7,000億円の有利子負債を抱えていた。当時の四方修社長が清水直弁護士とともに用意していたのは会社更生法の申請で、イオンを支援企業とする線がほぼ決まっていた。第一勧業銀行が支援の条件に置いたのも、民事再生ではなく会社更生だった。

これに対し山下幸三氏は、経営陣が残る民事再生法を選び、店舗の競合が少ない外資の米ウォルマート・ストアーズに望みを託した。ウォルマートは同時多発テロの影響もあって腰が引け、第一勧業銀行も支援に難色を示した。山下幸三氏は9月28日に辞任し、末席の取締役だった浦野一雄氏が社長に就任した。

内容

浦野一雄社長のもとで、実質的な権限は再生弁護団代表の坂井秀行弁護士が持った。10月12日、支援企業の候補をイオン、イトーヨーカ堂、ウォルマート、仏カルフールの4社に絞り、入札で競わせた。イトーヨーカ堂が引き受けるのは優良店30店前後にとどまり、債務の返済原資には足りなかった。

イオンは入札の進め方に反発して10月下旬にいったん交渉を打ち切り、11月9日には再建には会社更生法しかないという立場を示した。11月21日に第一勧業銀行が支援を決め、翌22日に会社更生法の申請とイオンの支援が決まった。イオン社長の岡田元也氏が事業管財人となり、イオン出身の榎本惠一氏が事業管財人代理に就任した。

含意

再建はイオンの手で進んだ。2002年にトップバリュと新しいハウスカードを導入し、2003年9月30日の関係人集会を経て更生計画案が認可された。イオンは2003年11月にマイカルを子会社とし、マイカルは2005年12月、予定より7年早く更生手続を終えた。

ただし、店舗数は大きく減少した。期末店舗数は2002年2月期の139店から2006年2月期には109店となった。2006年2月期のマイカルは売上高5,870億円で当期純損失71億円だった。2011年3月にはイオンリテールに吸収合併され、サティの名もイオンに統一された。

いつ何が起きたか12件
考察:遠回りした末の、最初の案
考察

考察:遠回りした末の、最初の案

なぜマイカルは、一度捨てた会社更生法に戻ったのか。民事再生法は経営陣が残れる手続きで、9月の取締役会がこれを選んだのは、自分たちの手で外資と組む選択肢を残したかったからだろう。だが外資は動かず、メーンバンクも降りた。残る支援企業は国内大手で、そのうちイオンは管財人の権限が強い会社更生法でなければ引き受けないとした。優良店だけを選ぶ相手では債務を返せない。全体を引き受ける相手の条件に合わせるほか、道はなかったとみられる。

もっとも、遠回りの代償は小さくなかった。民事再生法を選んだ取締役会の判断で、イオンとの交渉は一度途切れた。会社更生法へ戻るまでの2か月、社長は2度替わり、支援企業の入札も不調に終わった。その間に支援企業の候補は4社から1社へ絞られ、ヨーカ堂の引き受けは優良店に限られた。9月の時点で四方修社長の案を通していれば、同じ結論にもっと早く着いた可能性が高い。経営陣が残ることを優先した判断が、時間を失わせたと思われる。

結果は、再建としては成功である。更生計画は2003年に認可され、手続は2005年12月に予定より7年早く終わった。ただ、マイカルは独立を保てなかった。2003年にイオンの子会社となり、期末店舗数は139店から109店に減少し、2011年にはイオンリテールに合併されてサティの名も消えた。会社更生法への切替は店の営業の継続を可能にしたが、会社としてのマイカルを残す選択ではなかった。

Yutaka Sugiura, 2026年10月
数字で見る1表

数字で見る

図と表

マイカル:マイカル単体の期末店舗数の推移

期末店舗数(店)

会社更生法へ移った2002年2月期の139店から、更生手続を終えた2006年2月期には109店まで減少した

マイカル:マイカル単体の期末店舗数の推移
(店)期末店舗数備考
2001年2月期128
2002年2月期1392001年9月に民事再生法、11月に会社更生法を申請
2003年2月期121
2004年2月期1132003年11月にイオンの子会社となる
2005年2月期112
2006年2月期1092005年12月に更生手続を終結
出所:マイカル 会社概要(2006年4月)(都道府県別店舗の欄外の期末店舗数)
出所:マイカル 会社概要(2006年4月)(都道府県別店舗の欄外の期末店舗数)
参考文献

参考文献

参考
  • 日経ビジネス 2001年12月3日号 p6-7
  • 日経ビジネス 2001年10月15日号 p139-142
  • 日経ビジネス 2001年10月8日号 p14-16
  • 日経ビジネス 2003年12月15日号 p100-102
  • マイカル 公式サイト「マイカルのあゆみ」(2006年11月時点)
  • イオン 有価証券報告書 第81期(2006年2月期)【沿革】
  • マイカル 会社概要(2006年4月)
  • イオン 有価証券報告書 第81期(2006年2月期)【関係会社の状況】
  • 日経ビジネス 2001年10月8日号(日経BP社)
  • マイカル 代表取締役の異動に関するお知らせ(2001年1月11日)
  • マイカル 会社概要(2006年4月)(都道府県別店舗の欄外の期末店舗数)
  • イオン 有価証券報告書「第81期(2006年2月期)【沿革】【関係会社の状況】」
  • イオン 有価証券報告書「第86期(2011年2月期)【業績等の概要】」
  • マイカル 会社概要「会社概要(都道府県別店舗)」
  • マイカル 企業公式サイト「マイカルのあゆみ」

次に読む決断

免責事項およびポリシー