ダイエー関東事業とイオンマーケットの統合(2025年・ユナイテッド・スーパーマーケットHDの決断)

論点 対価を現金でなく株式で払うか
ユナイテッド・スーパーマーケットHD:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
現金対価を避けた自社株交付による首都圏のイオン系SMの集約

何をなぜ決めたか:現金対価を避けた自社株交付による首都圏のイオン系SMの集約

概要

2025年12月22日、U.S.M.Hと完全子会社のマックスバリュ関東は、イオンの完全子会社ダイエーが関東で営むスーパーマーケット事業をマックスバリュ関東へ吸収分割で承継させ、同じくイオンの完全子会社であるイオンマーケットを吸収合併する契約を結んだ。分割の対価はマックスバリュ関東株式13,385株、合併の対価は2,156株で、その株式は同じ日のうちに株式交換でU.S.M.H株式へ替わる。交換比率はマックスバリュ関東株式1株にU.S.M.H株式741.042株で、2026年3月1日に効力が生じ、マックスバリュ関東はイオンフードスタイルへ商号を改めた。

背景

U.S.M.Hは2015年3月にマルエツ、カスミ、マックスバリュ関東の共同株式移転で設立され、イオンの関東のSM事業の中核として売上高1兆円・1,000店舗体制を掲げてきた。2024年11月にいなげやとの経営統合を終え、契約の時点で首都圏のSMは667店舗を数えた。売上高は2025年2月期に7,939億86百万円へ伸びた一方、経常利益は2021年2月期の194億33百万円から61億42百万円へ細っていた。取り込む側のマックスバリュ関東は首都圏30店舗で営業利益80百万円、ダイエーは首都圏・近畿圏194店舗で営業損失30億33百万円(いずれも2025年2月期)と、どの当事者も利益が薄かった。

内容

対価を現金にすると新たな資金調達が要り、既存事業への投資余力が削がれるとして、分割の対価には株式を選んだ。一方でマックスバリュ関東との100%親子関係は保つ必要があり、効力発生と同じ日のうちに株式交換を重ねる組み立てとした。支配株主イオンとの取引であるため、2025年9月8日に社外取締役3名と社外監査役1名で特別委員会を設けた。みずほ証券の算定で、交換比率はマックスバリュ関東をDCF法で評価したレンジ552.765〜992.839の内にあり、類似企業比較法のレンジの上限308.418は超えていた。委員会は2025年12月22日、少数株主に不利益でないと答申した。

含意

U.S.M.Hは簡易株式交換で株主総会を経ずに普通株式11,516,533株を交付し、発行済株式総数は199,100,691株から210,617,224株へ、資本準備金は9,366百万円増えた。2026年7月6日には中間持株会社のイオンマーケットインベストメントが保有株をイオンへ現物配当し、イオンの直接の議決権比率は55.40%となった。統合直前の2026年2月期の連結業績は、売上高9,444億25百万円に対し経常利益49億11百万円、親会社株主に帰属する当期純損失31億85百万円で、規模と利益が逆を向いたまま統合の日を迎えた。

いつ何が起きたか 7件
当時の取締役 7名

当時の取締役(2025年5月株主総会決議)

考察:現金の代わりに差し出した株
考察

考察:現金の代わりに差し出した株

この統合は、親会社イオンが持っていた首都圏の店舗網を、U.S.M.Hの株式と引き換えに付け替えたグループ内の再配置だったと読める。U.S.M.Hが現金を払わなかった理由は投資余力の温存で、代わりに差し出したのは11,516,533株の新株である。ダイエーは3期続けて営業損失を出しており、関東事業だけの損益は開示されていない。少数株主から見れば、損益の見えない事業を自社株で引き受けた形であり、特別委員会が希薄化の程度に配慮する必要を答申の理由に書き込んだのもそのためだろう。

もっとも、首都圏のイオン系SMを1社の上場会社の下へ寄せる道は、U.S.M.Hの設立の時点で敷かれていた。2026年2月期の売上高は9,444億円となり、掲げてきた売上高1兆円は統合で手の届く距離に入った。問われるのは経常利益率で、2021年2月期の2.7%から0.5%まで下がっている。算定の前提に置いた事業計画は2027年2月期以降の大幅な増益を見込むが、規模の目標が先に満ち、利益率の回復は統合後の運営に預けられたとみられる。

数字で見る 2表

数字で見る

図と表

ユナイテッド・スーパーマーケットHD:マックスバリュ関東の業績の推移

売上高(百万円)営業利益率(%)

承継先のマックスバリュ関東は売上高443億円で、営業利益は80百万円だった

ユナイテッド・スーパーマーケットHD:マックスバリュ関東の業績の推移
(百万円) 売上高営業利益 備考
2023年2月期 42,95558
2024年2月期 44,681437
2025年2月期 44,34580 総資産9,832、純資産2,007。首都圏で30店舗
出所:ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス 臨時報告書(2025年12月24日提出)
出所:ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス 臨時報告書(2025年12月24日提出)

ユナイテッド・スーパーマーケットHD:ダイエー(全社)の業績の推移

売上高(百万円)営業損益率(%)

ダイエーは売上高2,990億円に対し、3期続けて営業損失を計上していた

ユナイテッド・スーパーマーケットHD:ダイエー(全社)の業績の推移
(百万円) 売上高営業損益 備考
2023年2月期 279,074△3,979 近畿を含む全社の値。関東事業だけの業績は開示がない
2024年2月期 292,300△1,085
2025年2月期 299,028△3,033 総資産125,878、純資産28,864。首都圏・近畿圏で194店舗
出所:ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス 臨時報告書(2025年12月24日提出)
出所:ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス 臨時報告書(2025年12月24日提出)
当時の取締役 7名

当時の取締役(2025年5月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考
  • ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス 臨時報告書「臨時報告書(吸収分割・吸収合併・株式交換)」
  • ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス 臨時報告書「臨時報告書(親会社及び主要株主の異動)」
  • ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス 有価証券報告書「第11期(2026年2月期)【沿革】【重要な後発事象】【発行済株式総数、資本金等の推移】」

次に読む決断

免責事項およびポリシー