5社再編でLINEヤフー発足(2023年・LINEヤフーの決断)

更新:
論点 持株会社体制を解消し5社を統合するか
LINEヤフー:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
Zホールディングス・ヤフー・LINEなど5社の1社への統合と、持株会社体制の解消

何をなぜ決めたか:Zホールディングス・ヤフー・LINEなど5社の1社への統合と、持株会社体制の解消

概要

2023年10月1日、Zホールディングスを吸収合併存続会社としてヤフー、Z Entertainment、Zデータの3社を吸収合併し、あわせてLINEを吸収分割会社とする会社分割でその事業を承継した。同じ日に商号をZホールディングスからLINEヤフーへ変更し、2019年10月から続いた持株会社体制を解消した。

再編に先立って、完全子会社のZホールディングス中間が保有するヤフーとLINEの全株式を現物配当で受け入れ、金融関連の権利義務は吸収分割でZフィナンシャルへ移した。関与したのは存続会社を含めて5社である。

背景

2019年11月にZホールディングスとLINEが経営統合で基本合意し、ソフトバンクとNAVERが折半出資するAホールディングスの下に両社を置く構造が決まった。2021年3月の統合完了後も、検索・ECのヤフーとメッセージのLINEは別々の法人格のまま並び、Co-CEOの二頭体制が続いた。

柔軟かつ機動的な意思決定と経営資源の最適配分を掲げて2019年10月に移行した持株会社体制は、事業の選択と集中を進める段になると、法人格が分かれていること自体が意思決定の速度を制約した。

内容

いずれの取引も共通支配下の取引として処理したため、連結上で新たなのれんは生じない。消滅会社の株式が消える見合いで、提出会社の個別決算に抱合せ株式消滅差損72,321百万円を特別損失として計上した。

一方、LINEからの吸収分割で承継した資産には、2021年3月のLINE取得時に連結で認識したのれんの一部854,714百万円と、商標権110,746百万円、顧客基盤190,767百万円が含まれる。提出会社の総資産は3,919,402百万円へ膨らみ、のれんはその21.8%を占めた。

含意

持株会社を事業会社に戻した効果は、提出会社の姿にそのまま出た。従業員数は339名から11,176名へ、売上高および営業収益は53,272百万円から378,169百万円へ増え、翌期には763,188百万円となった。連結の従業員数は28,385名から28,196名でほぼ動いていない。

出澤剛社長は 『グループ内再編による最大の効果は経営のスピードアップです』 と、意思決定の速さを再編の成果に挙げている。もっとも発足直後の2023年11月には最大約44万件の情報漏えいが表面化し、2024年3月には行政指導を受け、ネイバーとのシステム・ネットワークの分離と委託関係の縮小へ進んだ。

いつ何が起きたか 7件
当時の取締役 10名

当時の取締役(2022年6月株主総会決議)

考察:持株会社を畳み、事業会社へ戻す
考察

考察:持株会社を畳み、事業会社へ戻す

この再編は日韓のネット企業の統合の続きというより、2019年10月に自ら選んだ持株会社体制を畳み直す作業だった。柔軟で機動的な意思決定を掲げて設けた持株会社は、ヤフーとLINEという二つの事業会社を下に置いたことで、かえって決めるための階層を増やしていた。会計上は共通支配下の取引にすぎず、連結の数字はほとんど動かない。動いたのは提出会社の姿のほうで、数百名の管理会社が11,176名の事業会社に戻った点にこそ、この判断の実質があっただろう。

もっとも、法人格を一つにしたことで消えたわけではない論点が残る。吸収分割で提出会社の貸借対照表に移った854,714百万円ののれんは、LINE取得時に連結で認識した金額を事業の時価比で按分したもので、総資産の2割強を占める。その回収可能性は監査上の主要な検討事項に選ばれている。加えて、発足直後の情報漏えいと行政指導は、ソフトバンクとネイバーの折半出資という資本構造が、システムと認証基盤の共有と一体であることを可視化した。意思決定を一本化しても、誰がデータとシステムの最終的な責任を負うのかという設計は、これから問われるのだろう。

数字で見る 4表

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図と表

LINEヤフー:従業員数の推移(連結・提出会社)

提出会社(人)子会社ほか(人)
LINEヤフー:従業員数の推移(連結・提出会社)
(人) 連結提出会社 備考
2019年3月期 12,8746,515
2020年3月期 14,16863 2019年10月の持株会社体制への移行で、事業と人員を新設のヤフーへ承継した
2021年3月期 22,531243 2021年3月1日の株式交換でLINEを完全子会社化し、連結が急増した
2022年3月期 23,705281
2023年3月期 28,385339 連結の増加は主にPayPay(株)の連結子会社化による
2024年3月期 28,19611,176 2023年10月の再編で持株会社体制を解消し、提出会社が事業会社に戻った
2025年3月期 27,00311,035
出所:LINEヤフー 有価証券報告書 第25〜30期【主要な経営指標等の推移】【従業員の状況】
出所:LINEヤフー 有価証券報告書 第25〜30期【主要な経営指標等の推移】【従業員の状況】

LINEヤフー:提出会社(単体)の規模

売上高および営業収益(百万円)
LINEヤフー:提出会社(単体)の規模
(百万円) 売上高および営業収益総資産額純資産額 備考
2019年3月期 434,0251,103,868750,885 事業会社としてのヤフー(株)の単体決算
2020年3月期 215,0051,402,020578,320 2019年10月に持株会社へ移行し、営業収益は半年分で途切れる
2021年3月期 14,4433,190,1952,377,303 収益は子会社からの経営指導料が主。LINE完全子会社化で総資産が拡大
2022年3月期 92,2853,547,6982,338,047
2023年3月期 53,2723,500,8612,345,743
2024年3月期 378,1693,919,4022,347,435 2023年10月以降が事業会社の収益。承継したのれん854,714百万円を含む
2025年3月期 763,1883,786,3492,200,814 事業会社として通年で計上した最初の期
出所:LINEヤフー 有価証券報告書 第25〜30期【主要な経営指標等の推移】(提出会社の状況)
出所:LINEヤフー 有価証券報告書 第25〜30期【主要な経営指標等の推移】(提出会社の状況)

LINEヤフー:報告セグメント別の外部収益

メディア事業(百万円)コマース事業(百万円)
LINEヤフー:報告セグメント別の外部収益
(百万円) メディア事業コマース事業戦略事業 備考
2019年3月期 301,880646,443− 報告セグメントはメディア・コマースの2区分
2020年3月期 307,672740,466−
2021年3月期 339,685838,024−
2022年3月期 632,777809,130110,415 LINE統合に伴い戦略事業を新設し3区分へ。メディアにLINEが加わる
2023年3月期 633,914834,618189,222
2024年3月期 699,906819,663288,220 再編に伴い第3四半期から一部のサービスと費用を区分間で移管した
2025年3月期 723,768846,116339,886
出所:LINEヤフー 有価証券報告書 第25〜30期【セグメント情報】各期の当期欄。区分の移管で翌期の前期欄とは一致しない
出所:LINEヤフー 有価証券報告書 第25〜30期【セグメント情報】各期の当期欄。区分の移管で翌期の前期欄とは一致しない

再編の条件

再編の条件
科目 概要 備考
決議日 2023年4月28日 取締役会で再編に係る契約の締結時期と効力発生日を決議した
企業結合日 2023年10月1日 同じ日に商号をZホールディングス(株)からLINEヤフー(株)へ変更した
吸収合併存続会社 Zホールディングス(株) 事業内容はグループ会社の経営管理およびそれに付随する業務
吸収合併消滅会社 ヤフー、Z Entertainment、Zデータ いずれも当社の100%子会社。3社を同時に吸収合併した
企業結合の法的形式 吸収合併および吸収分割 吸収合併1件と吸収分割2件を同じ日に実施した
LINEの権利義務の承継 吸収分割(本吸収分割①) LINEを吸収分割会社、当社を承継会社とし、一定の海外株式等を除く全てを承継
金融関連の権利義務の承継 Zフィナンシャル(株)へ吸収分割 当社を吸収分割会社、Zフィナンシャルを承継会社とする(本吸収分割②)
再編の前提 Z中間によるヤフー・LINE株式の現物配当 完全子会社のZホールディングス中間が両社の全株式を当社へ現物配当した
結合後企業の名称 LINEヤフー(株) 2019年10月から続いた持株会社体制はこの日に解消された
会計処理 共通支配下の取引 企業結合会計基準および同適用指針に基づき処理。連結で新たなのれんは生じない
抱合せ株式消滅差損 72,321百万円 提出会社の特別損失に計上。共通支配下の取引に伴い生じたもの
承継したのれん(提出会社) 854,714百万円 LINE取得時に連結で認識したのれんを事業の時価比で按分。総資産の21.8%
承継した無形固定資産(提出会社) 商標権110,746百万円、顧客基盤190,767百万円 ソフトウエア1,400百万円を含む。いずれも連結の取得価額を基に算定
出所:LINEヤフー 有価証券報告書 第29期(2024年3月期)【企業結合等関係】/Zホールディングス 有価証券報告書 第28期(2023年3月期)【追加情報】
出所:LINEヤフー 有価証券報告書 第29期(2024年3月期)【企業結合等関係】/Zホールディングス 有価証券報告書 第28期(2023年3月期)【追加情報】
当時の取締役 10名

当時の取締役(2022年6月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考
  • 総務省 2024年3月5日「LINEヤフー株式会社に対する通信の秘密の保護及びサイバーセキュリティの確保に係る措置(指導)」
  • Zホールディングス 有価証券報告書「第28期(2023年3月期)【追加情報】連結子会社との組織再編」
  • LINEヤフー 有価証券報告書「第29期(2024年3月期)【企業結合等関係】」
  • LINEヤフー 有価証券報告書「第29期(2024年3月期)監査上の主要な検討事項」
  • LINEヤフー 統合報告書「統合報告ポータル 2023年度「CEOメッセージ」」

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