LINEヤフー ZOZO買収で親子上場 4,007億円で議決権の過半だけを取り、ファッションECを時間ごと手に入れた選択

更新:

時期 2019年9月
当時の社長 川邊健太郎
論点 ファッションEC強化と上場子会社化
何をなぜ決めたか
概要

2019年9月12日開催の取締役会でZOZO株式の公開買付けを決議し、11月13日に152,952,900株を400,736百万円の現金で取得した。議決権割合は50.1%で、完全子会社とはせず上場を残したまま過半だけを押さえている。

eコマース事業のさらなる成長のためにファッションECを強化することが目的で、取得資金は取引金融機関5行からの400,000百万円の借入で賄った。返済期限は1年後の2020年11月14日、無担保、連帯保証人はヤフー㈱である。

背景

ヤフーのコマース事業は、ソフトバンク連携のポイント還元が奏功してショッピング事業取扱高が4年連続で20%以上の成長を続け、2019年度には「PayPayモール」と「PayPayフリマ」を投入していた。伸びていたのは取扱高であって、品揃えではない。自前のモールにファッションのブランドと客を積み上げるには年単位の時間がかかる。ZOZOTOWNはその領域を単独で押さえており、買えば足りない一角がそのまま埋まる。

内容

取得対価400,736百万円に対し、受け入れた資産の公正価値は607,479百万円、引き受けた負債は233,902百万円、非支配持分は185,750百万円。差額として計上したのれんは212,910百万円である。

払った額の内訳で最も大きいのは、企業結合により識別した無形資産502,199百万円で、うち顧客基盤が322,070百万円(耐用年数18〜25年)、商標権が178,720百万円を占める。取得対価の配分は2020年3月期第4四半期に完了し、当初の暫定額からの変動はなかった。

含意

支配獲得日から期末までの4か月半で売上収益57,462百万円、当期利益5,773百万円を取り込み、コマース事業の売上収益は740,466百万円、セグメント利益は80,739百万円へ伸びた。期首に結合したと仮定したプロフォーマでは、グループの売上収益は1,120,023百万円になる。一方で49.9%を市場に残したため利益の半分は非支配持分へ流れ、その累積額は2025年3月期で191,107百万円に積み上がっている。

いつ何が起きたか 6件
筆者の見解
筆者の見解

4,007億円で買ったのは客と名前だった

払った4,007億円の内訳を開くと、のれん2,129億円よりも、企業結合により識別した無形資産5,022億円のほうが大きい。その大半は顧客基盤と商標権で、つまりこの取引で手に入れたのはZOZOTOWNという名前と、そこに集まっている客そのものだった。自前のモールを持ちながらファッションのブランドと客を自力で積み上げれば年単位の時間がかかる。その時間を金で買ったのだと思われる。議決権を過半に絞ったのも同じ計算の延長で、同じ資金で連結できる事業を最大にする設計であった。

もっとも、半分だけ買う設計は代償を伴う。ZOZOグループの当期利益は連結後に伸び続けたが、その49%前後は非支配持分へ配分され続け、累積額は1,911億円のまま動かない。稼ぎの半分は外に置いたままである。さらに1年後のLINEとの経営統合で連結ののれんは1兆7,787億円へ膨らみ、ZOZOの2,129億円は全体の一部に沈んだ。ファッションECを時間ごと手に入れた判断そのものは当たったが、上場子会社を抱えた構図の是非は、その後も論点として残り続けている。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
買収の条件

買収の条件

科目 概要 備考
被取得企業 株式会社ZOZO ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」の企画・運営、物流倉庫「ZOZOBASE」の運用
企業結合の目的 ファッションECの強化 eコマース事業のさらなる成長のために強化することを目的とした
取得の法的形式 公開買付け 2019年9月12日開催の取締役会で決議し、2019年11月13日に終了した
支配獲得日 2019年11月13日 公開買付けの終了日と同じ日
取得した株式数 152,952,900株
取得後の議決権割合 50.1% 完全子会社とはせず、上場を維持したまま過半だけを取得した
取得対価 400,736百万円 対価の種類は現金
取得した資産の公正価値 607,479百万円 無形資産503,017、その他42,533、営業債権及びその他の資産30,442を含む
引き受けた負債の公正価値 233,902百万円 その他162,951、有利子負債42,589、営業債務及びその他の債務28,362
非支配持分 185,750百万円 識別可能な被取得企業の純資産の公正価値に対する持分割合で測定した
のれん 212,910百万円 事業展開とシナジーにより期待される将来の超過収益力を反映した額
識別した無形資産 502,199百万円 顧客基盤322,070(耐用年数18〜25年)、商標権178,720(耐用年数不確定)
取得原価の配分 2020年3月期第4四半期に完了 当初の暫定的な金額と最終的な金額の間に変動はない
取得資金の借入 400,000百万円 みずほ銀行をエージェントとする取引金融機関5行と契約し11月19日に実行
借入の返済期限 2020年11月14日 無担保。連帯保証人はヤフー㈱。純資産と資本の75%維持等の条項付き
支配獲得日以降の売上収益 57,462百万円 当期利益は5,773百万円。無形資産の償却費等を含む
通期換算した売上収益 1,120,023百万円 期首に結合したと仮定したグループの数値。当期利益90,350百万円。非監査情報

出所:Zホールディングス 有価証券報告書 第25期(2020年3月期)連結財務諸表注記「5. 企業結合」「19. 有利子負債」/第26期(2021年3月期)連結財務諸表注記「5. 企業結合」

のれんと無形資産の推移

LINEヤフー:のれんと無形資産の推移

(百万円) のれん無形資産総資産 備考
2015年3月期 27,67332,382990,541
2016年3月期 156,362128,7111,342,799
2017年3月期 159,505138,6921,534,212
2018年3月期 162,015167,1122,516,633
2019年3月期 175,301165,2932,429,601
2020年3月期 400,034679,3753,933,910 ZOZOの連結でのれん212,910、無形資産502,199を計上した
2021年3月期 1,778,7651,075,8716,696,680 LINEとの経営統合による増加。翌期に配分が確定しのれんは1,790,487へ
2022年3月期 1,788,4811,216,3797,110,386
2023年3月期 2,074,7791,267,7388,588,722
2024年3月期 2,067,8621,248,9239,043,969
2025年3月期 2,073,4701,233,4219,158,346
のれんと無形資産
のれん(百万円)無形資産(百万円)

出所:Zホールディングス/LINEヤフー 有価証券報告書 第20期〜第30期(連結財政状態計算書。IFRSのためのれんは償却していない)

ZOZOグループの推移

LINEヤフー:ZOZOグループの推移

(百万円) 売上収益当期利益非支配持分の累積額 備考
2020年3月期 57,4625,773188,603 支配獲得日の2019年11月13日以降4か月半ぶん。非支配持分の割合は49.9%
2021年3月期 147,93521,941195,076 通期で寄与した最初の期
2022年3月期 167,33825,812187,085
2023年3月期 184,88830,754193,611
2024年3月期 198,26935,200191,008 非支配持分の割合は48.5%へ低下
2025年3月期 214,86232,469191,107
ZOZOグループの売上収益と利益率
売上収益(百万円)当期利益率(%)

出所:Zホールディングス/LINEヤフー 有価証券報告書 第25期〜第30期(連結財務諸表注記「当社にとって重要な非支配持分がある子会社の要約連結財務情報等」)

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参考文献
出典・参考
  • Zホールディングス 有価証券報告書「第25期(2020年3月期)連結財務諸表注記「5. 企業結合」」
  • Zホールディングス 有価証券報告書「第25期(2020年3月期)連結財務諸表注記「19. 有利子負債」」
  • Zホールディングス 有価証券報告書「第26期(2021年3月期)連結財務諸表注記「5. 企業結合」」
  • Zホールディングス/LINEヤフー 有価証券報告書「第25期〜第30期 連結財務諸表注記「当社にとって重要な非支配持分がある子会社の要約連結財務情報等」」
  • Zホールディングス 有価証券報告書「第25期(2020年3月期)「経営成績の状況」「セグメント情報」」

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