LINEヤフー 宮坂学氏が社長就任 16年続いた井上雅博体制を終え、44歳の宮坂学氏と社外3名を入れた取締役会に賭けた

更新:

時期 2012年4月
当時の社長 宮坂学
論点 トップ交代と組織文化改革
何をなぜ決めたか
概要

2012年4月、執行役員コンシューマ事業統括本部長だった宮坂学氏が最高経営責任者執行役員に就任し、6月21日の定時株主総会で代表取締役社長となった。1996年7月から16年にわたり社長を務めた井上雅博氏は、同じ総会で取締役を退任した。

取締役会は交代前の4名から5名へ、社外取締役は0名から3名へ、監査役会の常勤は1名から2名へ変わった。取締役として留任したのは会長の孫正義氏だけで、顔ぶれは一度の総会でほぼ入れ替わっている。

背景

交代前の取締役会は井上雅博氏・孫正義氏・梶川朗氏・喜多埜裕明氏の4名で、2012年1月18日にジェリー・ヤン氏が辞任してからは社外取締役が一人もいなかった。取締役の任期は1年、定数は10名以内で、選任には議決権の3分の1以上を有する株主の出席と、その過半数の賛成を要した。

株主構成はソフトバンクが35.45%、ヤフー・インクが34.74%、SBBM株式会社が6.42%で、上位3社が76.61%を占めた。選任の決議要件を満たす持分は親会社の側にまとまっていた。

内容

新しい取締役会は、宮坂学氏と孫正義氏に社外取締役3名を加えた5名で発足した。社外の宮内謙氏と今井康之氏はソフトバンクグループ各社の代表取締役や執行役員を兼ね、ティモシー・モース氏はヤフー・インクの上級副社長兼最高財務責任者だった。独立役員の届出は3名の社外監査役が担っている。

監査役会は4名全員が社外で、鬼塚ひろみ氏が加わって常勤が2名になった。業務執行の側は統括本部制をカンパニー制へ改め、取締役会による監督と、執行役員・カンパニーによる業務執行を分けた。

結果

初年度にあたる2013年3月期の連結売上高は342,989百万円、営業利益は186,351百万円で、いずれも前期を上回った。連結従業員数は5,124名から5,780名へ増え、その後も2018年3月期の12,244名まで伸びている。

2014年3月期には「課題解決って楽しい」「爆速って楽しい」「フォーカスって楽しい」「ワイルドって楽しい」の4つをバリューに掲げ、役員・社員全員でこれをよりいっそう追求するとした。

いつ何が起きたか 9件
筆者の見解
筆者の見解

顔ぶれを入れ替えた交代

この交代の眼目は、44歳の社長が生まれたことよりも、取締役会そのものを組み替えた点にあると思われる。交代前の取締役会は4名で、社外取締役はジェリー・ヤン氏の辞任以来ひとりもいなかった。そこへ社外3名を入れて5名とし、留任した取締役は会長の孫正義氏だけになった。社長を替えるだけなら1名の差し替えで済むところを、監督する側の構成ごと入れ替えている。任期1年の取締役会が、事実上76.61%を握る親会社側の意思で毎年組み直せる形になったとも読める。

もっとも、入った社外3名はソフトバンクグループ各社の役員とヤフー・インクの最高財務責任者で、独立役員の届出は社外監査役が担ったままだった。独立性を足す交代ではなく、大株主の側から執行を近くで見る布陣に替える交代だったと言える。統括本部制をカンパニー制へ改め、監督と業務執行を分けた組み替えも、その布陣を前提にした速度の設計だったのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
社長交代の経緯と対応

社長交代の経緯と対応

科目 概要 備考
最高経営責任者への就任 2012年4月 執行役員コンシューマ事業統括本部長から最高経営責任者執行役員へ移った
社長交代を決議した総会 2012年6月21日 議案は「取締役5名選任の件」と「監査役2名選任の件」。役職は総会直後の取締役会で決めた
新たに代表取締役社長となる者 宮坂学(代表取締役社長) 1967年11月11日生。1997年6月に入社し、2002年1月メディア事業部長、2009年4月執行役員
代表取締役社長でなくなる者 井上雅博(代表取締役社長) 1957年2月12日生。1996年1月の設立時に取締役、同年7月から16年にわたり社長を務めた
退任後の前社長の扱い 関連当事者「前代表取締役」 2013年3月期のストックオプションの権利行使は104百万円。所有比率は直接0.1%
取締役の任期 1年 2012年3月期に係る定時株主総会終結の時から2013年3月期の総会終結の時まで
取締役の定数 10名以内 定款の定め。選任は議決権の3分の1以上を有する株主が出席し、その過半数の決議による
交代前の取締役会 4名(社外取締役0名) 井上雅博氏・孫正義氏・梶川朗氏・喜多埜裕明氏。2012年1月18日にジェリー・ヤン氏が辞任
交代後の取締役会 5名(うち社外取締役3名) 社外は宮内謙氏・今井康之氏・ティモシー・モース氏。留任した取締役は孫正義氏だけ
交代後の監査役会 4名(全員が社外監査役) 鬼塚ひろみ氏が新任で常勤が2名に。うち3名を独立役員として両取引所へ届け出た
ソフトバンクの持株比率 35.45% 2012年3月31日現在。ヤフー・インク34.74%、SBBM6.42%と合わせ上位3社で76.61%
業務執行の体制 カンパニー制 交代前は統括本部制。取締役会による監督と執行役員・カンパニーの業務執行を分けた
掲げた行動指針 課題解決・爆速・フォーカス・ワイルド 「爆速って楽しい」を含む4つを役員・社員全員が追求するバリューとして掲げた

出所:ヤフー 有価証券報告書 第17期(2012年3月期)・第18期(2013年3月期)・第19期(2014年3月期)【役員の状況】【大株主の状況】【コーポレート・ガバナンスの状況等】【対処すべき課題】

取締役会と監査役会の構成

LINEヤフー:取締役会と監査役会の構成

(名) 取締役うち社外取締役監査役 備考
2008年3月期 514
2009年3月期 514
2010年3月期 514
2011年3月期 514
2012年3月期 404 2012年1月18日にジェリー・ヤン氏が辞任し、社外取締役が不在になった
2013年3月期 424 2012年6月の総会直後は5名・社外3名。ティモシー・モース氏の退任で4名になった
2014年3月期 534
2015年3月期 834 2015年6月の総会をもって監査等委員会設置会社へ移り、監査役会を廃止した
2016年3月期 940 社外取締役4名のうち2名は常勤の監査等委員
2017年3月期 720 社外取締役2名はいずれも常勤の監査等委員
2018年3月期 940 常勤の監査等委員2名に加え、社外取締役2名を置いた
取締役会の構成
社外以外の取締役(名)うち社外取締役(名)

出所:ヤフー 有価証券報告書 第13期〜第23期【役員の状況】(各期の有価証券報告書提出日現在)

売上高と営業利益の推移

LINEヤフー:売上高と営業利益の推移

(百万円) 売上高営業利益 備考
2008年3月期 262,027124,807
2009年3月期 265,754134,618
2010年3月期 279,856143,825
2011年3月期 292,423159,604
2012年3月期 302,088165,004
2013年3月期 342,989186,351 宮坂体制の初年度。営業利益は前期の165,004百万円から21,347百万円増えた
2014年3月期 386,284197,416
2015年3月期 428,487197,212 第20期から国際会計基準を適用。2014年3月期までは日本基準
2016年3月期 652,327224,997
2017年3月期 853,730192,049
2018年3月期 897,185185,810
売上高と営業利益率
売上高(百万円)営業利益率(%)

出所:ヤフー 有価証券報告書 第13期〜第23期(連結損益計算書・連結損益計算書及び連結包括利益計算書)

従業員数の推移

LINEヤフー:従業員数の推移

(名) 連結従業員数提出会社の従業員数
2008年3月期 3,7592,697
2009年3月期 4,5993,622
2010年3月期 4,8823,644
2011年3月期 4,7483,584
2012年3月期 5,1243,836
2013年3月期 5,7803,842
2014年3月期 6,2914,607
2015年3月期 7,0345,439
2016年3月期 9,1775,547
2017年3月期 11,2315,826
2018年3月期 12,2446,330
連結従業員数
連結従業員数(名)

出所:ヤフー 有価証券報告書 第13期〜第23期【従業員の状況】

同じ問いに直面した会社
参考文献
出典・参考
  • ヤフー 有価証券報告書「第17期(2012年3月期)【役員の状況】【大株主の状況】【コーポレート・ガバナンスの状況等】」
  • ヤフー 有価証券報告書「第18期(2013年3月期)【沿革】【役員の状況】【コーポレート・ガバナンスの状況等】【関連当事者情報】」
  • ヤフー 有価証券報告書「第19期(2014年3月期)【対処すべき課題】」
  • ヤフー 有価証券報告書「第13期〜第23期【役員の状況】【従業員の状況】」

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