LINEヤフー Yahoo!BB参入 回線を持たないままのブランドと集客の提供と、ISP料金の一部・加入インセンティブの取得

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時期 2001年9月
当時の社長 井上雅博
論点 事業多角化と収益構造
何をなぜ決めたか
概要

2001年9月、ブロードバンド関連の総合サービス「Yahoo! BB」の商用サービスが始まった。ヤフーは回線設備を一切持たず、BBテクノロジーとの業務提携契約に基づいてプロモーション、申込受付、ポータルの運営、料金の集金を担った。

対価は、利用者が払う月額のうちISP料金1,290円の200円分。ADSL料金990円は回線側の取り分である。出資も持分法の適用もなく、ブランドと集客力だけを差し出して通信サービスの売上の一部を自社の損益へ引き込んだ。

背景

1996年の設立以来、ヤフーは検索ポータルと広告で高収益を築いたが、2000〜2001年のネット不況で主力のインターネット広告収入が急落した。親会社ソフトバンクは巨額の有利子負債を抱えながら 『ソフトバンクはブロードバンド(高速大容量)のナンバーワン企業になる』 と宣言し、Yahoo! BBに社運を賭けていた。

業務提携契約を締結したのは2001年6月20日、商用サービスの開始はその3か月後にあたる。連結財務諸表を作り始めたのもこの期からで、第7期(2002年3月期)の連結売上高は31,497百万円、経常利益は10,318百万円だった。

内容

当初の収益はモデムの販売だった。ソフトバンクから仕入れたモデムを取扱説明書とともに「スターターキット」に仕立て、自社サイトで受け付けた加入申込者を付けてBBテクノロジーへ卸し、1台ごとにマージンを取る形である。

この形は長く続かず、2002年4月にモデム販売から加入者獲得インセンティブ等のモデルへ改めた。2004年10月の契約では、新規獲得インセンティブが基本サービス1申込につき15,000円程度、継続インセンティブが1会員あたり月200円程度と定められている。

含意

Yahoo! BB事業は報告セグメントの1つとして開示され、2005年3月期に売上高16,799百万円・営業利益10,009百万円、2006年3月期に19,484百万円・7,676百万円を計上した。全売上高に占める割合は11.2%である。

ただし営業利益は前年同期比23.3%減へ転じ、加入者の伸びが鈍れば取り分も細る構造だった。2007年3月期に事業区分は広告・ビジネスサービス・パーソナルサービスの3つへ改められ、Yahoo! BB事業という区分そのものが消える。

いつ何が起きたか 10件
筆者の見解
筆者の見解

設備を持たずに設備産業の成長を借りる

この判断の芯は、通信事業への進出ではなく、通信事業に出資も設備投資もせずに参加する形をどう設計するかにあった。契約でヤフーが引き受けたのは、プロモーション、申込受付、ポータルの運営という、すでに持っていた資産の転用ばかりである。回線の敷設もテクニカルサポートも相手側の負担で、対価は利用者が払うISP料金1,290円のうちの200円。薄いようだが、追加の費用がほとんど生じない会社にとっては、加入者が増えるだけ積み上がる収入だった。設備を持たない会社が、設備産業の成長を自社の損益へ移し替える回路をつくったとみられる。

もっとも、その回路は自らの意思では回せない。加入者を増やすのも、料金を決めるのも、障害に対応するのも相手側であり、ヤフーの取り分は契約で固定されていた。2006年3月期にYahoo! BB事業の営業利益が前年比23.3%減となったのは、市場がADSLから光ファイバーへ動き始めた影響であって、ヤフーの努力の巧拙とは別の次元にある。翌期に事業区分そのものが消えたことは、この収入がヤフーの事業として自立していなかったことを示しているのだろう。ブランドと集客力を貸し出して得た増収は、貸出先の盛衰にそのまま従属する。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
提携の条件

提携の条件

科目 概要 備考
契約の相手方 BBテクノロジー株式会社 締結時はソフトバンクBB。2005年12月1日の会社分割でADSL事業を承継した
業務提携契約の締結日 2001年6月20日 商用サービスの開始は同年9月
契約期間 2001年6月20日〜期限の定めなし
提携の対象 DSL技術を利用したインターネット接続サービス 両社が共同して提供する
ヤフーの役割 プロモーション・申込受付・ポータル運営 メール・ホームページの提供と、Yahoo! BBサービスに係る料金の集金業務
BBテクノロジーの役割 ADSL回線とネットワークの設置・接続 利用者への問い合わせ対応とテクニカルサポートも担う
利用者に提供する料金 ADSL料金990円・ISP料金1,290円
ヤフーが受け取る対価 ISP料金1,290円のうち200円 当社の提供するサービスの対価として業務提携契約に定めた
収益モデルの変更 2002年4月 モデム販売から加入者獲得インセンティブ等のモデルへ変更した
新規獲得インセンティブ 1申込につき15,000円程度 無線LANパック付きは11,000円程度。2004年10月7日のインセンティブ契約
継続インセンティブ 利用継続1会員あたり月200円程度 無線LANパック付きは月250円程度。契約は1年ごとに自動更新
出資関係 なし BBテクノロジーとソフトバンクBBは親会社の子会社として関連当事者に開示
会計上の取扱い 持分法の適用なし 出資を伴わず、報告セグメント「Yahoo! BB事業」として自社に計上した
モデム流動化への融資 57億円 2003年7月17日にBB Modem Rental PLCとメザニンローン契約。満期42か月

出所:ヤフー 有価証券報告書 第11期(2006年3月期)【経営上の重要な契約等】【沿革】【関係会社の状況】【関連当事者との取引】

連結業績の推移

LINEヤフー:連結業績の推移

(百万円) 売上高経常利益当期純利益 備考
2002年3月期 31,49710,3185,868 Yahoo! BBの商用サービスを開始した期。連結従業員数431名
2003年3月期 59,09523,52412,096 2002年4月に収益モデルをモデム販売からインセンティブへ変更
2004年3月期 75,77641,30824,826
2005年3月期 117,77960,29536,521
2006年3月期 173,69579,86747,090
2007年3月期 212,552102,82457,963 事業区分を広告・ビジネスサービス・パーソナルサービスの3つへ改めた
連結売上高と経常利益率
売上高(百万円)経常利益率(%)

出所:ヤフー 有価証券報告書 第11期(2006年3月期)・第12期(2007年3月期)【主要な経営指標等の推移】

Yahoo! BB事業(報告セグメント)の推移

LINEヤフー:Yahoo! BB事業(報告セグメント)の推移

(百万円) 売上高営業利益資産 備考
2005年3月期 16,79910,00922,074
2006年3月期 19,4847,67625,510 売上高は前年同期比16.0%増、営業利益は23.3%減。全売上高に占める割合11.2%

出所:ヤフー 有価証券報告書 第11期(2006年3月期)・第12期(2007年3月期)【事業の種類別セグメント情報】

同じ問いに直面した会社
参考文献
出典・参考
  • 日経ビジネス 2002年2月11日号(日経BP社)
  • 日経ビジネス 2004年12月6日号(日経BP社)
  • ヤフー 有価証券報告書「第11期(2006年3月期)【経営上の重要な契約等】」
  • ヤフー 有価証券報告書「第11期(2006年3月期)【沿革】」
  • ヤフー 有価証券報告書「第11期(2006年3月期)【関係会社の状況】【関連当事者との取引】」
  • ヤフー 有価証券報告書「第11期(2006年3月期)【主要な経営指標等の推移】【事業の種類別セグメント情報】」
  • ヤフー 有価証券報告書「第12期(2007年3月期)【主要な経営指標等の推移】【事業の種類別セグメント情報】」

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