LINEヤフー LINEとの経営統合 ヤフーの商号の放棄と、株式交換によるLINEの完全子会社化

更新:

時期 2019年10月
当時の社長 川邊健太郎
論点 経営統合と競争環境再設計
何をなぜ決めたか
概要

2019年10月1日、ヤフー株式会社は会社分割を実施して持株会社体制へ移行し、商号をZホールディングス株式会社へ改めた。同年12月にLINEとの経営統合に関する最終合意を締結し、翌2020年1月31日、LINEの完全子会社であるLINE分割準備株式会社との間で株式交換契約を締結した。

株式交換比率はZホールディングス1に対しLINE分割準備11.75で、2019年12月23日に合意・決定している。効力発生日は当初2020年10月1日を予定したが、実際の支配獲得は2021年3月1日となり、普通株式2,831,284,030株を交付してLINEを完全子会社とした。

背景

連結売上収益は2019年3月期の954,714百万円から2020年3月期に1,052,943百万円へ伸びたが、その拡大はアスクル・一休・ZOZOの連結化に支えられていた。ZOZOは2019年11月13日に終了した公開買付けで152,952,900株を現金400,736百万円で取得し、議決権割合50.1%の連結子会社としたもので、のれんは212,910百万円にのぼる。

海外へ出る道も塞がっていた。1996年4月1日に締結したライセンス契約でヤフーが得たのは、日本市場向けにカスタマイズされた情報検索サービス等の非独占的な使用権と、日本における商標の利用権にとどまり、対価として売上収益から広告販売手数料等を差し引いた金額の3%をロイヤルティとして払い続けていた。

内容

取得対価の公正価値は1,850,494百万円、引き受けた純資産は482,478百万円で、差額の大半がのれんとして残った。取得時は暫定的な会計処理により1,357,901百万円を計上し、2022年3月期に取得対価の配分が確定して1,384,985百万円となった。識別可能な無形資産394,413百万円の内訳は、顧客基盤232,019百万円、技術資産2,278百万円、商標権160,116百万円である。

2021年2月には主要株主である筆頭株主が、ソフトバンクとNAVER Corporationが共に半数を出資するAホールディングス株式会社へ異動した。同社は2021年3月31日時点で4,956,651,075株、議決権の65.3%を保有している。

含意

支配獲得日以降に連結した被取得企業の売上収益は25,205百万円、当期損失は6,355百万円で、この損失には減損損失10,699百万円が含まれる。企業結合が期首に完了したと仮定したプロフォーマの売上収益は1,440,552百万円、当期利益は52,592百万円だった。資産合計は2020年3月期の3,933,910百万円から2021年3月期に6,691,328百万円へ膨らみ、のれんは400,034百万円から1,790,487百万円へ跳ね上がった。

IFRSではのれんを償却せず、資金生成単位グループへ配分して減損テストに晒し続ける。日本における「LINE Pay」は2025年4月30日にサービスを終了して決済はPayPayへ寄り、Yahoo!およびYahoo! JAPANに関連する日本での商標権を取得したことで、海外制約という統合の論拠の一つも薄れた。

いつ何が起きたか 7件
筆者の見解
筆者の見解

競争を止めるための統合が、二度の再編を要した理由

この判断の核心は、新しい市場を開拓するための攻めの統合ではなく、同じ資本の下で競い合う二社の消耗を止め、抱えていた構造の弱みをまとめて解くための守りの再編にあった。自力の成長はZOZOの連結化なしには続かず、1996年のライセンス契約は日本の外への道を塞いでいた。競合の統合という一手でそのいずれにも同時に手当てをする——それが、社名まで捨てて持株会社へと姿を変えたZホールディングスの選んだ答えだったのだろう。

もっとも、守りの再編は一度では収まらなかった。株式交換で完全子会社としながらブランドも組織も温存した設計は統合の効き目を遅らせ、支配獲得日以降に連結した被取得企業は6,355百万円の当期損失を計上している。二社を一つに融かすには2023年10月のLINEヤフー発足という二段目の再編が要り、決済もLINE Payの終了まで待つことになった。防衛のための統合は止血には効いたが、そこから新しい成長を生むまでには、さらに長い再編の時間を必要としたのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
経営統合の条件

経営統合の条件

科目 概要 備考
被取得企業 LINE株式会社 旧社名はLINE分割準備株式会社。LINEの全事業を吸収分割で承継した会社
取得の法的形式 株式交換 Zホールディングスを株式交換完全親会社、LINE(株)を株式交換完全子会社とする
株式交換契約の締結 2020年1月31日 同日の取締役会決議に基づき締結。当初の効力発生日は2020年10月1日としていた
支配獲得日 2021年3月1日
取得した議決権付資本持分の割合 100%
株式交換比率 1対11.75 Zホールディングス1に対しLINE分割準備11.75。2019年12月23日に合意・決定
交付した株式数 2,831,284,030株 支配獲得直前の日の終値で評価。取得対価には企業結合に伴う代替報酬を含む
取得対価の公正価値 1,850,494百万円 対価の種類は当社普通株式等で、現金の支払いはない
引き受けた純資産 482,478百万円 資産1,042,727百万円、負債△560,249百万円。非支配持分は△16,968百万円
のれん 1,384,985百万円 取得時は暫定的な会計処理により1,357,901百万円。2022年3月期に配分が確定
識別可能な無形資産 394,413百万円 顧客基盤232,019・技術資産2,278・商標権160,116。取得時の暫定額は406,964
取得関連費用 2,718百万円 2020年3月期に1,723百万円、2021年3月期に995百万円を販管費へ計上
支配獲得日以降の売上収益 25,205百万円 同期間の当期損失は6,355百万円で、減損損失10,699百万円を含む
プロフォーマの売上収益 1,440,552百万円 期首に完了したと仮定した場合の非監査情報。当期利益は52,592百万円
筆頭株主の議決権比率 65.3% 2021年3月31日現在。Aホールディングス(株)がソフトバンクとNAVERの半数出資

出所:Zホールディングス 有価証券報告書 第25期(2020年3月期)【経営上の重要な契約等】・第26期(2021年3月期)/第27期(2022年3月期)【企業結合】

のれん・無形資産と資産合計の推移

LINEヤフー:のれん・無形資産と資産合計の推移

(百万円) のれん無形資産資産合計 備考
2015年3月期 27,67332,382990,541
2016年3月期 156,362128,7111,342,799
2017年3月期 159,505138,6921,534,212
2018年3月期 162,015167,1122,516,633
2019年3月期 175,301165,2932,429,601
2020年3月期 400,034679,3753,933,910 商号をZホールディングスへ変更。ZOZO連結でのれん212,910・無形資産503,017
2021年3月期 1,790,4871,061,7806,691,328 LINE(株)を完全子会社化。取得対価の配分確定に伴う遡及修正後の数値
2022年3月期 1,788,4811,216,3797,110,386
2023年3月期 2,074,7791,267,7388,588,722
2024年3月期 2,067,8621,248,9239,043,969
2025年3月期 2,073,4701,233,4219,158,346
のれんと無形資産
のれん(百万円)無形資産(百万円)

出所:ヤフー/Zホールディングス/LINEヤフー 有価証券報告書 第20〜30期(連結財政状態計算書)

売上収益と営業利益の推移

LINEヤフー:売上収益と営業利益の推移

(百万円) 売上収益営業利益 備考
2015年3月期 428,487197,212
2016年3月期 652,327224,997
2017年3月期 853,730192,049
2018年3月期 897,185185,810
2019年3月期 954,714140,528
2020年3月期 1,052,943152,276
2021年3月期 1,205,846162,125 支配獲得日以降に連結した被取得企業の売上収益は25,205百万円
2022年3月期 1,567,421189,503
2023年3月期 1,672,377314,533
2024年3月期 1,814,663208,191
2025年3月期 1,917,478315,033
売上収益と営業利益率
売上収益(百万円)営業利益率(%)

出所:ヤフー/Zホールディングス/LINEヤフー 有価証券報告書 第20〜30期【主要な経営指標等の推移】

同じ問いに直面した会社
参考文献
出典・参考
  • Zホールディングス 有価証券報告書「第25期(2020年3月期)【経営上の重要な契約等】」
  • Zホールディングス 有価証券報告書「第26期(2021年3月期)【企業結合】」
  • Zホールディングス 有価証券報告書「第27期(2022年3月期)【企業結合】」
  • LINEヤフー 有価証券報告書「第29期(2024年3月期)/第30期(2025年3月期)」

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