三共との経営統合(2005年・第一三共の決断)

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論点 単独路線を放棄して対等統合するか
第一三共:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
国内2社の対等な結合による第一三共の誕生と、単独路線の放棄

何をなぜ決めたか:国内2社の対等な結合による第一三共の誕生と、単独路線の放棄

概要

2005年9月28日、三共と第一製薬が商法第364条に定める株式移転を行い、両社を完全子会社とする共同持株会社「第一三共」が発足した。交付した株式は普通株式735,011,343株、資本金は500億円、資本準備金は1兆833億49百万円。

2007年4月1日には持株会社が両社を吸収合併し、医療用医薬品事業を自ら営む事業会社へ移った。合併ではなく持株会社を先に置く、二段構えの統合である。

背景

国立大学病院の独立行政法人化や入院医療費包括評価制度の採用施設の増加で医療費抑制策が浸透し、外資系メーカーをはじめとする大手との企業間競争が激化していた。

主力のプラバスタチン(日本販売名メバロチン)は日本で2002年10月、ドイツと英国で2004年8月に特許が満了し、米国でも2006年4月に満了する。後発品の影響で原薬の売上が大きく減る見通しのなか、単独で研究開発を支える道は細っていた。

内容

統合は段階に分けて設計された。第一段階の株式移転で持株会社を設立し、2006年4月までに米国営業機能、欧米開発機能、ヘルスケア事業の統合を終える。2007年3月末を目処に非医薬品事業をグループ外へ自立させ、2007年4月1日に三共と第一製薬の医療用医薬品事業を持株会社へ吸収合併した。

株式移転比率は三共1株に第一三共1株、第一製薬1株に1.159株。リスクと便益を両社が継続して共同で負担・享受するため持分の結合にあたると判断し、持分プーリング法で処理したので、のれんは発生していない。

含意

掲げた企業目標は2009年度のグループ売上高9,320億円、営業利益2,550億円、DOE5%。第1期にあたる2006年3月期の売上高は9,259億18百万円で目標まであと61億円だったが、営業利益は1,547億28百万円にとどまり、2,550億円とは1,000億円の開きがあった。

規模はすでにあり、伸ばすべきは利益だった。その答えとして選ばれたランバクシーの買収が、2009年3月期に3,513億9百万円ののれん償却と2,154億円の当期純損失を招く。

いつ何が起きたか 9件
考察:「緩やかな統合」という選択
考察

考察:「緩やかな統合」という選択

この統合の設計で効いているのは、株式移転を持分の結合として扱ったことだろう。取得企業を決めず、のれんも計上しない処理は、どちらが買ったのでもないという建前を会計の形で固定する。その建前があったからこそ、持株会社のもとで2年をかけて機能ごとに統合を進める道筋が成り立った。いきなり合併していれば、統合比率の交渉は勝ち負けの数字として社内に残ったはずである。三共1株に1株、第一製薬1株に1.159株という比率を置いたうえで、実体の一体化は後回しにする——移行設計としては周到だったのだろう。

もっとも、周到さは規模の使い道までは決めない。2009年度の目標に掲げた売上高9,320億円は、第1期の9,259億18百万円からほとんど動かない水準で、統合の果実は費用面の効率化に置かれていた。成長の絵を描き直す必要は残り、その答えとして選ばれたのがランバクシーの買収だった。持株会社という緩衝を置いて丁寧に内を固めた会社が、外に対しては一気に4,883億円を投じ、翌期にその大半を償却する。統合の巧拙は発足の設計ではなく、その後に何を買うかで決まったのかもしれない。

数字で見る 3表

数字で見る

図と表

第一三共:統合後の連結業績の推移

売上高(百万円)営業利益率(%)
第一三共:統合後の連結業績の推移
(百万円) 売上高営業利益当期純利益 備考
2006年3月期 925,918154,72887,692 第1期。両社の通期の連結業績に、9月28日以降の当社の業績を加えている
2007年3月期 929,506136,31378,549
2008年3月期 880,120156,82797,660 2007年4月1日に三共と第一製薬を吸収合併し、事業会社へ移行した最初の期
2009年3月期 842,14788,870△215,499 ランバクシーののれん351,309百万円を特別損失として償却し、初の当期純損失
2010年3月期 952,10595,50941,852
2011年3月期 967,365122,14370,121
出所:第一三共 有価証券報告書 第1〜6期(連結損益計算書)
出所:第一三共 有価証券報告書 第1〜6期(連結損益計算書)

第一三共:連結と提出会社の従業員数

連結従業員数(人)提出会社(人)
第一三共:連結と提出会社の従業員数
(人) 連結従業員数提出会社従業員数 備考
2006年3月期 18,43476 提出会社は子会社の経営管理だけを担う持株会社で、従業員は76名
2007年3月期 15,35875 非医薬品事業のグループ外自立で連結の人員が減った
2008年3月期 15,3495,925 2007年4月の吸収合併で、提出会社が医療用医薬品事業を営む事業会社になった
2009年3月期 28,8955,960 ランバクシーとその連結子会社53社が連結の範囲に加わった
2010年3月期 29,8256,028
2011年3月期 30,4886,043
出所:第一三共 有価証券報告書 第1〜6期(従業員の状況)
出所:第一三共 有価証券報告書 第1〜6期(従業員の状況)

経営統合の条件

経営統合の条件
科目 概要 備考
結合当事企業 三共と第一製薬 いずれも医薬品等の製造及び販売並びに輸出入。三共は1913年3月1日、第一製薬は1918年1月31日の設立
企業結合の法的形式 共同株式移転による持株会社の設立 商法第364条に定める株式移転。両社は完全子会社となり、第一三共が完全親会社となった
経営統合契約の調印 2005年5月13日 両社の株主総会が株式移転を承認したのは2005年6月29日
株式移転の効力発生日 2005年9月28日
株式移転比率 三共1株に1株、第一製薬1株に1.159株 割り当てたのはいずれも第一三共の普通株式
交付株式数 普通株式735,011,343株
資本金 50,000百万円 資本準備金の額は1,083,349百万円
株式移転交付金 旧両社普通株式1株につき25円 2005年9月27日最終の株主名簿に記載された株主へ、中間配当金の支払に代えて支払った
会計処理 持分プーリング法 リスクと便益を完全子会社が継続して共同で負担・享受するため、持分の結合に該当すると判断した
のれん 発生していない 持分の結合として処理したため、取得原価の配分も、のれんの計上も行っていない
完全子会社の規模 三共821,595/第一製薬556,677百万円 2006年3月31日現在の総資産。資本金は三共68,793百万円、第一製薬45,246百万円
事業会社の合併 2007年4月1日 合併契約の締結は2006年11月30日。第一三共を存続会社、三共と第一製薬を消滅会社とする吸収合併
合併の会計処理 共通支配下の取引等 新株の発行も資本金の増加もなく、連結財務諸表に与える影響はない。合併後の資本金は500億円
出所:第一三共 有価証券報告書 第1期(2006年3月期)【経営上の重要な契約等】・第2期(2007年3月期)【経営上の重要な契約等】・第3期(2008年3月期)【企業結合等関係】
出所:第一三共 有価証券報告書 第1期(2006年3月期)【経営上の重要な契約等】・第2期(2007年3月期)【経営上の重要な契約等】・第3期(2008年3月期)【企業結合等関係】
参考文献

参考文献

参考
  • 第一三共株式会社 プレスリリース 2005年9月28日「第一三共株式会社の設立について」
  • 公正取引委員会(平成17年度:事例4)「三共株式会社及び第一製薬株式会社による共同持株会社の設立について」
  • 第一三共 有価証券報告書「第1期(2006年3月期)【経営上の重要な契約等】(1) 経営統合契約」
  • 第一三共 有価証券報告書「第1期(2006年3月期)【連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項】」
  • 第一三共 有価証券報告書「第1期(2006年3月期)【対処すべき課題】」
  • 第一三共 有価証券報告書「第2期(2007年3月期)【経営上の重要な契約等】(1) 三共㈱及び第一製薬㈱との合併」
  • 第一三共 有価証券報告書「第3期(2008年3月期)【企業結合等関係】」

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