第一三共の直近の動向と展望

/

第一三共の直近の業績・経営課題・市場ポジションと、今後の展望をまとめたページです。

セグメント構成や中期的な論点を、現経営陣の発信と有価証券報告書の記述をもとに整理しています。

直近の動向と展望

4本柱中計と売上収益比23%の研究開発費

2025年4月の決算説明で奥澤最高経営責任者は、第5期中計の4本柱(3つのADC最大化、既存事業・製品の利益成長、更なる成長の柱の見極めと構築、ステークホルダーとの価値共創)を示し、2025年3月期の実績としてコア営業利益率16.6%・研究開発費4329億円・当期利益2958億円を報告した。研究開発費は売上収益比23%水準で推移し、5つのDXd ADCに加えて、DS-3939を含む第二世代パイプラインへの投資が並行で進む。エンハーツで稼いだ利益をそのまま研究開発に還流させ、単品依存から脱する速度を自社でコントロールする構えである。4本柱のなかで、既存事業の利益成長と新しい柱の見極めを並列に置いたことで、短期の収益と長期の開発をどうバランスさせるかが経営判断の中心に据え直された。

一方、2025年3月期の販売費・一般管理費は7248億円(前年比975億円増)で、エンハーツのプロフィット・シェア増加(556億円増)が重くのしかかる構造が続いている。アストラゼネカや米国メルクとの提携は開発費負担を軽くする半面、売上拡大に比例して利益の折半負担が増える、入り口は軽く出口は重いモデルに当たる。ダトロウェイや後続三製品を自社単独で持つ比率を高められるかが、粗利率改善のカギとなる。提携で時間を買った代償は、売上拡大局面でこれから顕在化する。エンハーツで証明された提携モデルの強みと弱みが、同じ棚の中にそのまま残されている、いまだ決着のついていない論点でもある。

参考文献
  • 有価証券報告書
  • 決算説明会 FY2024

エンハーツ依存の逓減とポートフォリオの再構築

2025年3月期時点でエンハーツのグローバル製品売上5528億円は連結売上収益1兆8863億円の約29%に相当し、単一製品依存のリスクは依然残っている。ダトロウェイの立ち上げは始まったばかりで、HER3-DXd、I-DXd、R-DXdの3剤も米国メルクとの共同開発が進行中だが、上市時期は2026年以降の見込みである。2026年3月期以降の数年は、エンハーツが成長の大半を担いつつ後続ADCを量産する移行期となる。15人チームで始まった技術の遺産をどれだけ多彩な製品群へ展開できるかが、同社の次の10年を決める問いとして残された。単品依存から複数製品体制へ移る速度と、提携コストを自社単独開発でどこまで置き換えられるかが、移行期の粗利率を分ける要因となる。

国内では2024年4月の第一三共エスファ持分法化、2025年4月の第一三共プロファーマ・第一三共ケミカルファーマ(製造・原薬子会社)の本体への吸収合併と、経営資源をADCの研究・製造へ集中させる組織再編が続く。2008年のランバクシー買収で描かれた、グローバルで後発薬も新薬も抱えるというポートフォリオは、2025年までにほぼ解体された。代わりに、日米欧でDXd ADCを持つ特化型のグローバル企業という輪郭が、同社の新しい姿として残った。統合時に2社を1つに束ねた選択が、15年かけて1つの技術プラットフォームに集約される選択へつながった道のりでもある。広げすぎた棚を畳み、1つの柱に体重を預け直した会社の姿が、いまの第一三共である。

参考文献
  • 有価証券報告書
  • 決算説明会 FY2024

参考文献・出所

有価証券報告書
決算説明会 FY2023
決算説明会 FY2024
第一三共公式トップメッセージ