合弁によるスター・チャンネルの設立(1986年・東北新社の決断)

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論点番組の販売に加えて放送も担うか
東北新社:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)
テレビ局への配給に依存しない、自前の映画専門チャンネルへの共同出資

何をなぜ決めたか:テレビ局への配給に依存しない、自前の映画専門チャンネルへの共同出資

概要

1986年3月、東北新社は合弁でスター・チャンネルを設立し、衛星放送関連事業を開始した。設立時の事業は有線テレビ(CATV)向けの番組供給で、東急エージェンシーや東映などと共同で出資した。東北新社の植村伴次郎社長は、同じ1986年3月にスター・チャンネルの代表取締役社長にも就任した。

狙いは、テレビ局向けの配給とCM制作に次ぐ収益源の確保にあった。米国と同じく日本にもCATVの時代が来るという植村伴次郎社長の読みに基づく設立で、設立の翌年には収益化の見通しを『利益が出るのはまだ4~5年先になる。1つの実験だと割り切って辛抱している』と明かしている。

背景

東北新社はテレビとともに成長した会社である。1962年6月に国際テレビジョン企画を設立して配給事業を始め、1966年には英国の人形劇「サンダーバード」の配給を開始した。1986年時点で、テレビ放映用の洋画の配給と日本語版制作で5割以上のシェアを持っていた。

その土台のテレビが伸び悩んでいた。CM部門の売上高はここ数年、毎年10%前後の増収だったが、事業を育てたテレビの頭打ちが最大の課題とされた。東北新社は1983年にメディア開発本部を発足させてビデオソフトに進出し、ビデオソフトの売上高は1985年の28億円から1986年には47億円に増加した。

内容

スター・チャンネルは、ハリウッドのメジャースタジオの作品を中心に世界の映画を放映する映画専門チャンネルとして設立された。2002年時点ではハリウッドメジャー8社の作品を中心に年間700本以上の映画を、CSの3チャンネルとBSの1チャンネルで放送していた。

東北新社は単独では保有せず、他社と共同で出資した。2002年時点の出資比率は17.8%で、スター・チャンネルは持分法適用関連会社として東北新社から映像ソフトを購入していた。衛星放送では、1995年11月にファミリー劇場を合弁で設立し、1997年にはクラシカ・ジャパンを設立して専門チャンネルを拡充した。

含意

衛星放送は東北新社の事業の1つになった。2002年3月期の衛星関連事業の売上高は7,524百万円、営業利益は1,561百万円だった。2003年時点では、BSとCSを合わせて10の専門チャンネルを展開していた。2015年10月には株式を追加取得して議決権を50.0%から60.0%に引き上げ、スター・チャンネルを連結子会社とした。

一方で、スター・チャンネル本体の収益は安定しなかった。2001年6月期には売上高11,654百万円に対して経常損失1,279百万円を計上し、加入世帯の伸び悩みから2005年12月期には20,218百万円の債務超過となった。2024年6月、東北新社はスター・チャンネルの全株式をジャパネットブロードキャスティングに譲渡した。

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考察:実験として始めた映画専門チャンネル
考察

考察:実験として始めた映画専門チャンネル

なぜ合弁で専門チャンネルを始めたのか。東北新社の強みはハリウッドの映画会社との取引で、洋画の配給では5割以上のシェアを持っていた。しかし、テレビ局への販売だけでは、テレビが伸び悩めば配給も頭打ちになる。自ら放送の窓口を持てば、調達した映画を別の経路で提供できる。ただし有線テレビの普及はまだ先で、単独で負うには大きな負担だった。植村伴次郎社長は、他社と出資を分担し、実験として始める方針を採ったのだろう。

もっとも、合弁は経営の主導権を他社と共有することでもあった。2002年の出資比率は17.8%にとどまり、スター・チャンネルの損失を東北新社だけでは抑制できない。加入世帯が伸びない間も、映画の調達費は固定費として残る。番組の販売元である東北新社にとって、スター・チャンネルは映像ソフトの顧客であり、出資先でもあった。この二重の立場が、赤字の続くチャンネルを支え続ける理由になったとみられる。

結果は部分的な成功である。衛星放送は2002年3月期に営業利益1,561百万円を生む事業となり、東北新社は専門チャンネルを自社の事業の1つに加えた。一方で、スター・チャンネル本体は2005年12月期に20,218百万円の債務超過に陥り、東北新社は連結子会社とした9年後の2024年に全株式を譲渡した。有線テレビの時代が来るという読みは専門チャンネルの事業として実を結んだが、旗艦のチャンネルを自社の手で収益事業に育てることはできなかったと考えられる。

Yutaka Sugiura, 2026年10月
参考文献

参考文献

参考
  • 東北新社 有価証券報告書 第54期(2016年3月期)【沿革】
  • 日経ビジネス 1987年3月16日号(日経BP社)
  • 東北新社 新株式発行並びに株式売出届出目論見書(2002年9月)【役員の状況】
  • 東北新社 新株式発行並びに株式売出届出目論見書(2002年9月)【事業の概況等に関する特別記載事項】
  • 東北新社 新株式発行並びに株式売出届出目論見書(2002年9月)【関係会社の状況】
  • 東北新社 新株式発行並びに株式売出届出目論見書(2002年9月)巻頭「沿革」
  • 日経ビジネス 2003年6月9日号(日経BP社)
  • 東北新社 有価証券報告書 第54期(2016年3月期)【企業結合等関係】
  • 東北新社 臨時報告書「臨時報告書(連結子会社の株式譲渡)」
  • 東北新社 有価証券届出書「新株式発行並びに株式売出届出目論見書」
  • 東北新社 有価証券報告書「第44期(2006年3月期)【事業等のリスク】」
  • 東北新社 有価証券報告書「第47期(2009年3月期)【連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項】」
  • 東北新社 有価証券報告書「第54期(2016年3月期)【沿革】【企業結合等関係】」
  • 東北新社 公式サイト「沿革」

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