OpenAIへの巨額出資とAIインフラ「スターゲート」
2025年実施情報革命の本命を人工知能に賭ける——孫正義氏はなぜOpenAIへ累計646億ドルを投じ、米国のAIインフラに5000億ドルを構想したのか
- 概要
- 2025年1月、ソフトバンクグループが米国のAIインフラに今後4年で5000億ドルを投じる新会社Stargateの設立に加わり、3月にはOpenAIへ最大400億ドル(約5.98兆円、実質最大300億ドル)の追加出資で合意した投資判断。段階的に払い込みを進め、2026年2月にはさらに300億ドルの追加出資で合意し、累計646億ドル・持分約13%まで積み増した。
- 背景
- 情報革命の次の段階を人工知能が担うと見た孫正義会長兼社長は、その学習と運用に桁違いの計算資源と資本が要ると考えた。ARM買収とビジョン・ファンドでAI投資会社へ転じたソフトバンクグループは、AIインフラそのものと、モデル開発企業への直接投資へと進んだ。
- 内容
- Stargateは今後4年で5000億ドル、うち1000億ドルを直ちに投じる計画で、ソフトバンクグループが財務を担う。OpenAIへは2025年3月に最大400億ドルの追加出資で合意し、12月に225億ドルを払い込んで持分約11%、2026年2月にさらに300億ドルで合意して累計646億ドル・約13%とした。
- 含意
- AI半導体のAmpere Computingを65億ドルで買収し、保有するアーム株を担保にしたローンで資金を捻出するなど、AIへの集中投資を強めた。投資先の評価と資金調達が業績を左右する構造で、勝者総取りをねらう賭けか、一つの技術に賭けすぎた過剰なリスクか——評価はまだ定まっていない。
情報革命への一点賭け
この決断の核心は、情報革命の本命をOpenAIとAIインフラに定め、そこへソフトバンクグループの資本を集中させた点にある。ARM買収とビジョン・ファンドで投資会社へ転じた同社は、モデル開発企業への直接出資と、その計算基盤を担うStargateへの資金供給という二つの入り口から、一つの領域へ資本を注ぎ込んだ。OpenAI一社への出資は一年足らずで累計646億ドルへ膨らみ、2026年3月期の連結純利益が5兆円を超えたのは、この集中がうまく回ったときの姿を映している。
もっとも、集中は裏返せば分散の放棄でもある。OpenAIやAIインフラの価値が伸び続けるかぎり評価益はグループの決算を潤すが、AIブームが冷えれば同じ経路で損失が跳ね返る。しかも出資の相当部分を、保有するアーム株などの担保でまかなうため、AI関連株の下落は資金繰りにも及びかねない。勝者総取りをねらう賭けなのか、一つの技術へ賭けすぎた過剰なリスクなのか——本稿の時点でその答えは出ておらず、いま進むAIへの投資が実を結ぶかどうかに、ソフトバンクグループの命運はかかっている。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
背景
米国AIインフラへの5000億ドル——スターゲート
2025年1月、ソフトバンクグループは米国のAIインフラ構築を目的とする新会社スターゲート(Stargate)の設立に加わった。孫正義会長兼社長は、情報革命の次の段階を人工知能が担うと見ており、その学習と運用には桁違いの計算資源が要ると考えていた。発表によれば、Stargateは今後4年間で5,000億ドルを投じてデータセンターなどのAIインフラを米国内に築く計画で、このうち1,000億ドルは直ちに投資を始めるとされた。ワシントンでの発表にはトランプ大統領やOpenAIのアルトマンらが同席した[1][2]。
ソフトバンクが財務面を担う枠組み
この巨大な事業で、ソフトバンクグループは資金の出し手としての中心に座った。Stargateの初期の出資者はソフトバンクグループ、OpenAI、Oracle、MGXの4者で、なかでもソフトバンクグループとOpenAIが事業を主導する。役割の分担は明快で、ソフトバンクグループが財務を、OpenAIが運営を受け持ち、孫正義氏が会長に就いた。AIインフラの資金繰りをみずから背負うことで、ソフトバンクグループの命運は、OpenAIの成長とインフラ層で分かちがたく結びついた[3][4]。
決断
OpenAIへの最大400億ドルの追加出資
インフラの資金を引き受けたソフトバンクグループは、AIの中核をなすモデル開発企業そのものへも巨額を投じる。2025年3月31日(米国時間)、同社はOpenAIへ最大400億米ドル(約5兆9,808億円)の追加出資を行う確定契約を結んだと発表した。ただし全額を単独で負うわけではなく、出資額の一部を外部投資家にシンジケーションする予定で、それが実現すれば同社の実質的な出資額は最大300億米ドル(約4兆4,856億円)となる見込みだった。出資は2025年4月と同年12月の二段構えで実行される[5][6]。
累計646億ドル・持分約13%への積み増し
合意した出資は、予定どおり段階的に実行に移された。2025年12月26日(米国時間)、ソフトバンクグループはセカンドクロージングとして225億米ドル(約3兆5,000億円)の払い込みを終え、OpenAIへの累計出資額は347億ドルに達した。持分は約11%となり、同社はOpenAIの大株主の一角を占めた。この払い込みには、英半導体設計子会社アームの株式を担保にしたローンが充てられている。手元資金だけでは届かない規模を、保有資産を担保にした借り入れでまかなう資金繰りであった[7][8]。
積み増しは、そこで止まらなかった。2026年2月27日、ソフトバンクグループはOpenAIへさらに300億米ドル(約4兆6,743億円)を追加出資する契約を結んだと発表する。この出資が完了すれば、OpenAIへの累計出資額は646億米ドル、持分比率は約13%に達する見込みで、追加分は2026年4月から10月にかけて100億ドルずつ三回に分けて払い込まれる。一年に満たない間に、ソフトバンクグループは一社の未上場企業へ、日本円で10兆円に迫る資本を投じる立場へと自らを置いた[9][10]。
結果
AIへの集中と、半導体の補完
OpenAIとStargateへの出資は、ソフトバンクグループの資源をAIへ集める動きの一部であった。2025年3月には、AI向け半導体を設計する米Ampere Computingを総額65億米ドル(約9,730億円)で買収すると発表し、傘下の英アームがもつ設計基盤を補う駒を加えた。孫正義氏は、人工超知能の未来には前例のないコンピューティングパワーが要ると述べ、モデル開発・インフラ・半導体の三つをそろえてAIへ集中する構えを示した。AIへ資本を注ぐ賭けの全体像が、ここで整った[11][12]。