中部電力監査等委員会設置会社へ移行:監査役会を廃し、議決権を持つ監査等委員と社外過半の取締役会が監督を担う機関設計へ

更新:

時期 2024年6月
当時の社長 林欣吾
論点 執行と監督の分離
概要

2024年6月26日の定時株主総会を以て、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行した。掲げた理由は執行と監督の分離の一層の深化であり、機動的な意思決定とより高度なガバナンスの両立を実現することに置かれた。

移行後の取締役は13名で、うち7名と過半を社外取締役が占める。監査等委員である取締役は5名、うち3名が社外取締役で、いずれも取締役会の議決権を持つ。

背景

2023年度の取締役会実効性評価では、執行と監督の分離の深化による取締役会の監督機能の強化が課題に挙がった。前年度に挙がったのはグループ戦略の議論の加速とグループ会社に対するガバナンス強化で、2020年4月に持株会社体制へ移ってからの数年、持株会社が事業会社をどう監督するかが続けて問われていた。

2023年3月と2024年3月には公正取引委員会から独占禁止法に基づく命令を受けている。コンプライアンス事象を踏まえたガバナンスの強化と定着は、機関投資家との対話でも関心事項に挙がっていた。

内容

監査役5名(うち社外3名)による監査役会は廃止され、監査等委員である取締役5名による監査等委員会が置かれた。監査等委員が取締役会の議決権を持つことで、監査・監督の機能が取締役会の意思決定そのものへ組み込まれる。定款上の取締役の員数は20名から15名へ改めた。

監査等委員会は原則として毎月1回開催し、執行部門から独立した監査等委員会室と監査特命役員、職員11名がその職務を補助する。移行した2025年3月期の開催は、監査役会が8回、監査等委員会が15回であった。

含意

移行を決めた2024年6月26日の定時株主総会では、取締役選任議案の賛成率が候補者によって割れた。社外取締役の候補者4名が97.5〜98.8%、社外の監査等委員候補3名が98.9〜99.2%を集めたのに対し、勝野哲会長は80.1%、林欣吾社長は80.4%にとどまり、社内出身の監査等委員候補2名も91.5%だった。

移行初年度の監査等委員会は、独占禁止法および行為規制の遵守を重点監査項目に据え、コンプライアンス徹底策とその強化策が確実に実施されていることを確認している。

筆者の見解

議決権を持つ監査

機関設計の変更は制度の選び直しに見えるが、この移行で実際に動いたのは監査する側の立ち位置であった。監査役には取締役会の議決権が無く、意見を述べても決議には加われない。監査等委員である取締役5名が議決権を得たことで、監査の目線は決議の外から内側へ移る。取締役13名のうち7名を社外が占め、うち3名が監査等委員を兼ねる構成は、執行を担う4名の社内取締役に対して社外と監査が多数を成す形だといえる。定款上の員数を20名から15名へ絞ったのも、決議に加わる人数を抑えて議論の密度を上げる方向に働くとみられる。

もっとも、監督の器を組み替えたことと、監督が効くこととは同じではない。移行を決めた総会で、社外取締役の候補者が軒並み97%台を超える賛成を得た一方、会長と社長は80%前後にとどまった。株主が是としたのは新しい機関設計であって、それを運ぶ経営陣ではなかった、とも読める差である。独占禁止法および行為規制の遵守を重点監査項目に据えた監査等委員会が、命令を受けた事業会社の日々の業務にどこまで届くのか。その答えは、機関設計ではなく運用の側にしかない。

Yutaka Sugiura, 2026年9月

経緯と対応

科目 概要 備考
移行の決議 2024年6月26日 定時株主総会。2023年度の取締役会の主な審議事項に挙がっていた
移行前の機関設計 監査役会設置会社 監査役5名のうち3名が社外監査役。取締役は9名で、うち4名が社外取締役
移行後の機関設計 監査等委員会設置会社
移行の理由 執行と監督の分離の一層の深化 機動的な意思決定とより高度なガバナンスの両立を実現するためとした
取締役の員数 13名(うち社外7名) 社外が過半数。男性10名・女性3名で、女性比率は23%
監査等委員である取締役 5名(うち社外3名) 財務及び会計に関する相当程度の知見を有する者を含む
定款上の取締役の員数 15名 移行前は20名
取締役の任期 1年 監査等委員である取締役を除く。執行役員も同じく1年
監査等委員会の開催 原則として毎月1回 2025年3月期は監査役会を8回、監査等委員会を15回開催した
監査等委員会の補助組織 監査等委員会室・監査特命役員 執行部門から独立し、職員11名が職務を補助する。執行部門の役職は兼務しない
重点監査項目 独占禁止法および行為規制の遵守 コンプライアンス徹底策と強化策に基づく各種対策の実施状況を確認した
実効性評価の課題(2023年度) 執行と監督の分離の深化 対応として、移行とモニタリングの充実・権限委譲の実施を挙げた
内部監査の体制 社長直属の経営考査室(25名) 結果を社長・監査等委員会・取締役会へ報告する

出所:中部電力 有価証券報告書 第100期(2024年3月期)・第101期(2025年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】、コーポレート・ガバナンスに関する報告書(2024年8月30日)

中部電力:移行を決めた定時株主総会の取締役選任賛成率

(%) 賛成率 備考
第3号 勝野哲 80.1 代表取締役会長。取締役(監査等委員である取締役を除く)8名選任の議案
第3号 林欣吾 80.4 代表取締役社長
第3号 水谷仁 98.6
第3号 鍋田和宏 98.8
第3号 橋本孝之 98.7 以下4名は社外取締役の候補者
第3号 嶋尾正 97.5
第3号 栗原美津枝 97.5
第3号 工藤陽子 98.8
第4号 古田真二 91.5 監査等委員である取締役5名選任の議案。以下2名は社外取締役候補者ではない
第4号 澤栁友之 91.5
第4号 中川清明 98.9 以下3名は社外取締役の候補者
第4号 村瀬桃子 99.2
第4号 山形光正 99.2

出所:中部電力 臨時報告書(2024年6月28日提出)定時株主総会における議決権行使の結果

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出典・参考
  • 中部電力 有価証券報告書「第100期(2024年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】」
  • 中部電力 有価証券報告書「第100期(2024年3月期)【対処すべき課題等】」
  • 中部電力 有価証券報告書「第101期(2025年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】」
  • 中部電力 コーポレート・ガバナンスに関する報告書「コーポレート・ガバナンスに関する報告書(2024年8月30日)」
  • 中部電力 統合報告書「中部電力グループレポート2024「コーポレート・ガバナンス」」
  • 中部電力 臨時報告書「臨時報告書(2024年6月28日提出)」

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