NISSHA ベトナムUSMの株式譲渡 取得から約4か月での全株譲渡と、のれん減損6,759百万円の計上

更新:

時期 2026年9月
当時の社長 鈴木順也
論点 東南アジアの医療機器製造拠点の獲得と、短期での撤退
何をなぜ決めたか
概要

2026年9月4日、NISSHAが取締役会でベトナムの医療機器メーカーUSM HEALTHCARE MEDICAL DEVICES FACTORY JOINT STOCK COMPANYの株式すべてを同社取締役のVO XUAN BOI LAM氏へ譲渡すると決議し、同日に株式譲渡契約を結んだ。5月に60%を取得してから約4か月での撤退である。

背景

取得は2026年1月23日の取締役会で決めていた。2030年の連結売上高に占めるメディカルを50%に高める目標のもと、米国に偏る医療機器CDMOの拠点を東南アジアへ広げ、ステントでベトナム唯一の国産メーカーを取り込む狙いだった。取得対価は約58億円。

内容

譲渡は2段階に分かれる。2026年9月中旬に50%、2027年9月中旬から2028年9月中旬に10%を実行する予定で、USMは特定子会社に該当しなくなる。譲渡の理由と対価の金額は臨時報告書に記載がない。

含意

譲渡を踏まえたIFRSの減損テストで、USMののれんの回収可能価額が取得時の想定を下回り、2026年12月期中間期の連結決算にのれんの減損損失6,759百万円をその他の費用に計上した。個別決算の関係会社株式評価損6,133百万円は連結で消去され、連結業績には影響しない。

いつ何が起きたか 7件
筆者の見解
筆者の見解

拠点を買う道から退く道へ

この撤退で目を引くのは、損失の大きさよりも決断の速さである。米国に偏ってきた医療機器CDMOの足場を、ステントの国産メーカーを通じて東南アジアへ広げる構想は、有価証券報告書の後発事象にまで理由が書き込まれていた。その構想を、取得から4か月で白紙に戻したことになる。取得対価の約58億円を上回るのれんの減損が出たのは、買ったときの収益の見立てが、手放す条件に引き直すと成り立たなくなったためとみられる。

もっとも、撤退の中身は一括の売却ではない。2026年9月に50%、2027年から2028年にかけて10%と、60%を二段に分けて譲る形であり、譲渡先は現地の取締役である。事業を現地の経営者へ戻す形に収めたことで、傷を浅いうちに切り離したと読めなくもない。ただし譲渡の理由と対価は開示されておらず、メディカル50%の目標に向けて、東南アジアの拠点づくりをどう続けるのかは、なお見えない。

Yutaka Sugiura, 2026年10月

業績の推移
のれんと無形固定資産の推移

NISSHA:のれんと無形固定資産の推移

(百万円) のれん無形固定資産総資産 備考
2021年12月期 20,18613,884209,274
2022年12月期 21,41014,252230,212
2023年12月期 20,23814,644217,853
2024年12月期 31,83419,928251,847 Isometric・滋賀県製薬などの買収が重なった期
2025年12月期 33,27723,144250,120 USMは後発事象で、まだ連結していない
のれんと無形固定資産
のれん(百万円)のれん以外の無形固定資産(百万円)

出所:NISSHA 有価証券報告書 第103期〜第107期(連結財政状態計算書。IFRS)

メディカルテクノロジー事業の推移

NISSHA:メディカルテクノロジー事業の推移

(百万円) 売上高セグメント利益セグメント資産 備考
2021年12月期 24,17677639,510
2022年12月期 32,45749047,166
2023年12月期 36,0111,49350,341
2024年12月期 45,6222,38867,917
2025年12月期 47,1302,03567,171 USM取得の決議は2026年1月で、この期の数字には含まない
メディカルテクノロジーの売上高と利益率
売上高(百万円)セグメント利益率(%)

出所:NISSHA 有価証券報告書 第103期〜第107期(セグメント情報)

同じ問いに直面した会社

同じ問いに直面した会社

海外撤退2011年住友金属鉱山チリでの権益取得から、二度の減損を経た全持分の売却までの撤退銅資源権益の取得と撤退
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2013年ガンホー・オンライン・エンターテイメントソフトバンクとの共同出資による取り込みと、10か月後の売却グローバル案件への参画と資本の独立性
2012年ポーラ・オルビスホールディングス化粧品会社の取り込みによる、初の本格的な海外M&Aへの踏み出し海外展開とブランドポートフォリオ
参考文献
出典・参考
  • NISSHA 臨時報告書「特定子会社の異動(USM HEALTHCARE MEDICAL DEVICES FACTORY JOINT STOCK COMPANY)」
  • NISSHA 有価証券報告書「第107期(2025年12月期)【連結財務諸表注記 後発事象】」
  • NISSHA 決算説明会資料「2025年12月期 通期決算説明会資料(訂正版)」
  • NISSHA 臨時報告書「財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に著しい影響を与える事象(減損損失)」

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