東北楽天ゴールデンイーグルス設立(2004年・楽天グループの決断)

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論点 本業と異なるプロ野球球団を保有するか
楽天グループ:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)
50年ぶりのプロ野球への新規参入と、球団運営による知名度の向上

何をなぜ決めたか:50年ぶりのプロ野球への新規参入と、球団運営による知名度の向上

概要

2004年10月、楽天は宮城県仙台市宮城野区に株式会社楽天野球団を設立した。翌11月、日本プロフェッショナル野球組織(NPB)は同社の球団「東北楽天ゴールデンイーグルス」の新規参入を承認した。新しい球団のプロ野球への参入は50年ぶりである。決めたのは代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏である。

楽天野球団は楽天が100%を出資する子会社で、2005年12月末の資本金は400百万円。関連商品の企画・販売は、楽天野球団が51.0%を出資する楽天スポーツプロパティーズが受け持った。2005年12月末には、楽天は楽天野球団の株式を800百万円で保有し、5,270百万円を長期で貸し付けていた。

背景

球団の設立までの1年あまり、楽天は買収で事業の数を増やしていた。2003年9月に宿泊予約のマイトリップ・ネットを完全子会社にし、11月にはディーエルジェイディレクト・エスエフジー証券を子会社にした。2004年9月には、あおぞらカードも完全子会社にしている。連結売上高は2002年12月期の9,894百万円から、2004年12月期の45,567百万円へ4.6倍に増えた。

ただし、最終損益は赤字が続いていた。当期純損失は2003年12月期が52,643百万円、2004年12月期が14,271百万円である。楽天会員数は2004年12月末で784万人だった。球団の保有は、ネットの事業とは違う顧客層に社名を広める手段でもあったとみられる。

内容

楽天は2005年1月に事業区分を見直し、「プロスポーツ事業」を新しい区分として立てた。球団の経営には島田亨氏を充てた。島田亨氏は2004年11月に楽天野球団の取締役副社長、12月に代表取締役社長となり、2005年3月には楽天の取締役も兼ねた。設立した2004年12月期は売上が無く、営業費用54百万円がそのまま営業損失になった。

最初のシーズンとなる2005年12月期、プロスポーツ事業は売上高6,867百万円、営業利益156百万円を計上した。球場内の看板や球場命名権の広告、年間シート、放映権、チケット、球場での飲食が収入になった。同じ期の資本的支出は2,954百万円で、従業員は89名だった。

含意

球団の効果は本業の会員数に表れた。楽天会員数は2004年12月末の784万人から2005年12月末の1,879万人に増え、「楽天市場」の出店数は15,000店を超えた。楽天は知名度が上がったシニア層に向けて「楽天シニア市場」も開いた。

一方、球団の収支は2年目から再び赤字になった。営業損失は2006年12月期が1,396百万円、2007年12月期が836百万円である。初めてクライマックスシリーズに進んだ2009年12月期も、売上高8,360百万円に対して営業損失617百万円だった。2013年11月、球団は日本シリーズで初めて優勝した。

いつ何が起きたか 12件
考察:知名度の効果と続いた営業損失
考察

考察:知名度の効果と続いた営業損失

なぜ楽天はプロ野球球団を持ったのか。楽天は2003年から2004年にかけて、宿泊予約・証券・クレジットカードの会社を次々に子会社にした。事業が増えるほど、楽天という社名を広く知ってもらう必要が高まる。球団は毎日の試合で社名が報じられ、ネットを使わない層にも届く。広告費を払って社名を流すのではなく、球団を持って社名を流す選択だったと考えられる。実際、楽天は球団の運営による認知度の向上が各事業に寄与することを期待していた。

もっとも、球団の運営は楽天の本業とは性質の違う事業である。収入は観客の数とチームの成績に左右され、選手の人件費や球場の設備投資が先に出ていく。プロ野球の協約の規制も受ける。知名度の効果が大きくても、球団の収支が赤字なら、その赤字は広告費と同じく毎年の負担になる。2005年12月末に楽天が球団へ5,270百万円を貸し付けていたことは、球団が単独では資金を賄えない事業であったことを示しているのだろう。

結果は部分的な成功である。知名度の面では、楽天会員数が2004年12月末の784万人から1年で1,879万人に増え、球団は本業の会員の獲得に役立った。2013年には日本シリーズで初優勝し、球団の名も定着した。一方、球団の収支は初年度の営業利益156百万円が最高で、2006年12月期から2009年12月期まで営業損失が続いた。球団は楽天の知名度を高める投資としては成功したが、単独で利益を出す事業にはならなかった。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

楽天グループ:プロスポーツ事業の売上高と営業利益の推移

プロスポーツ事業 売上高(百万円)プロスポーツ事業 営業利益率(%)

初年度は営業利益156百万円だったが、2006年から赤字が続いた

楽天グループ:プロスポーツ事業の売上高と営業利益の推移
(百万円) プロスポーツ事業 売上高プロスポーツ事業 営業利益 備考
2004年12月期 −△54 10月に楽天野球団を設立。売上は無く、営業費用54が営業損失に
2005年12月期 6,867156 最初のシーズン。広告・年間シート・放映権が順調に推移
2006年12月期 6,547△1,396 スタジアムの拡張と二軍練習場の整備を実施
2007年12月期 7,553△836
2008年12月期 7,963△811 チーム強化に向けた投資負担が増加
2009年12月期 8,360△617 球団初のクライマックスシリーズ進出
出所:楽天 有価証券報告書 第9〜13期(2005〜2009年12月期)【業績等の概要】【事業の種類別セグメント情報】
出所:楽天 有価証券報告書 第9〜13期(2005〜2009年12月期)【業績等の概要】【事業の種類別セグメント情報】

楽天グループ:楽天の連結売上高と経常利益の推移

連結売上高(百万円)連結経常利益率(%)
楽天グループ:楽天の連結売上高と経常利益の推移
(百万円) 連結売上高連結経常利益 備考
2001年12月期 6,7801,408
2002年12月期 9,8942,241
2003年12月期 18,0824,438
2004年12月期 45,56715,474 楽天野球団を設立し、NPBが新規参入を承認
2005年12月期 129,77535,826 7月から楽天KCを連結
2006年12月期 203,27130,406
2007年12月期 213,9382,376
2008年12月期 249,88344,531
2009年12月期 298,25254,890
出所:楽天 有価証券報告書 第9期(2005年12月期)・第13期(2009年12月期)【主要な経営指標等の推移】
出所:楽天 有価証券報告書 第9期(2005年12月期)・第13期(2009年12月期)【主要な経営指標等の推移】
参考文献

参考文献

参考
  • 楽天 有価証券報告書 第9期(2005年12月期)【業績等の概要】
  • 楽天 有価証券報告書 第9期(2005年12月期)【表紙】
  • 楽天 有価証券報告書 第9期(2005年12月期)【関係会社の状況】
  • 楽天 有価証券報告書 第9期(2005年12月期)【主な資産及び負債の内容】
  • 楽天 有価証券報告書 第9期(2005年12月期)【沿革】
  • 楽天 有価証券報告書 第9期(2005年12月期)【主要な経営指標等の推移】
  • 楽天 有価証券報告書 第9期(2005年12月期)【事業の種類別セグメント情報】
  • 楽天 有価証券報告書 第9期(2005年12月期)【役員の状況】
  • 楽天 有価証券報告書 第9期(2005年12月期)【事業の種類別セグメント情報】【従業員の状況】
  • 楽天 有価証券報告書 第10期(2006年12月期)・第11期(2007年12月期)【業績等の概要】
  • 楽天 有価証券報告書 第13期(2009年12月期)【業績等の概要】
  • 楽天 有価証券報告書 第17期(2013年12月期)【沿革】
  • 楽天 有価証券報告書 第10期(2006年12月期)【業績等の概要】
  • 楽天 有価証券報告書 第9〜13期(2005〜2009年12月期)【業績等の概要】【事業の種類別セグメント情報】
  • 楽天 有価証券報告書 第9期(2005年12月期)・第13期(2009年12月期)【主要な経営指標等の推移】
  • 楽天 有価証券報告書「第9期(2005年12月期)【業績等の概要】【事業の種類別セグメント情報】【関係会社の状況】【事業等のリスク】」
  • 楽天 有価証券報告書「第10期(2006年12月期)〜第13期(2009年12月期)【業績等の概要】」
  • 楽天 有価証券報告書「第14期(2010年12月期)【沿革】」
  • 楽天 有価証券報告書「第17期(2013年12月期)【沿革】【業績等の概要】」

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