20億円から30億円を売ればヒットと呼ばれる乳製品で、明治乳業は初年度の目標を30億円に置き、実際には80億円を売った。売り物にしたのは味ではなく、胃で働く乳酸菌という性質である。ヨーグルトを嗜好品の棚から体調を整える商品の棚へ移す作業を、特定保健用食品の認可を取らないまま、説明会と番組と一面広告の連鎖だけで成立させた。薬の言葉を一度も使わずに、胃に効く商品という評判だけが立った。
発売を翌月に控えた2月上旬、明治乳業は厚生省の監視指導課に呼ばれた。三剤併用の承認をなお待っていた薬の側からすれば、順序が逆であった。容器を納める三陽パックスの稲葉弘文社長までが『ピロリ菌を死滅させるヨーグルト』と呼んでいた事実は、触れ込みが会社の説明より先へ走ったことを示している。機能で売ると決めることは、その説明の精度まで引き受ける仕事であった。