リージョナルプラスウイングスの完全子会社化(2026年・ANAHDの決断)

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ANAHD:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
少数出資の提携から、AIRDO・ソラシドエアとの経営の一体化への転換2026年10月29日、ANAホールディングスは取締役会で、リージョナルプラスウイングス(RPW)を株式交換で完全子会社とすることに向けて協議・検討を進める基本合意書の締結を決議し、同日締結した。RPWはAIRDOとソラシドエアを完全子会社に持つ持株会社で、ANAホールディングスは普通株式129,352株、15.32%を保有する。

何をなぜ決めたか:少数出資の提携から、AIRDO・ソラシドエアとの経営の一体化への転換

概要

2026年10月29日、ANAホールディングスは取締役会で、リージョナルプラスウイングス(RPW)を株式交換で完全子会社とすることに向けて協議・検討を進める基本合意書の締結を決議し、同日締結した。RPWはAIRDOとソラシドエアを完全子会社に持つ持株会社で、ANAホールディングスは普通株式129,352株、15.32%を保有する。

株式交換はANAホールディングスを完全親会社とする簡易株式交換で、同社の株主総会の承認は経ない。株式交換契約の締結は2026年12月下旬、RPWの臨時株主総会は2027年2月下旬、効力発生は2027年4月1日を予定する。基本合意書は独占交渉義務・秘密保持義務などの一部を除いて法的拘束力を持たず、交換比率も未定である。

背景

ANAグループはAIRDOと2002年から、ソラシドエアとは前身のスカイネットアジア航空と2005年から業務提携と資本関係を持ち、全日本空輸とのコードシェアを通じた販売連携や機材・燃油の調達支援を重ねてきた。2006年3月期末に全日本空輸が保有するスカイネットアジア航空株式は17,900株、貸借対照表計上額1,200百万円で、同年4月には同社の羽田−宮崎・熊本・長崎線の全便でコードシェアを開始した。

ただし独立した事業主体のままでは、競争上機微な情報の共有や路線・ダイヤ・販売戦略の一体的な判断に制約があった。ビジネス需要の減少と機材・整備費用の高騰が重なるなか、国土交通省が2025年5月に設けた有識者会議の議論を経て、大手からAIRDO・ソラシドエアなどへの出資規制が2026年5月に廃止された。ANAホールディングスは2026年5月25日、低下した国内旅客事業の収益力の復元を掲げてRPWに完全子会社化の意向表明書を提出した。

内容

RPWの2026年3月期の連結売上高は108,801百万円、営業利益は3,431百万円で、営業利益は2024年3月期の4,139百万円から2期続けて減少した。大株主は日本政策投資銀行25.86%、ANAホールディングス15.32%、宮崎交通8.57%、双日5.64%の順である。両社の間には航空機のリース取引があり、全日本空輸とはコードシェア・整備・地上取扱業務の受委託がある。

両社が確認したシナジーは、国際と地域のネットワークの接続強化、人財とオペレーションのノウハウ共有、地域に不可欠な航空ネットワークの維持、抜本的な収益改善と経営資源の最適化の4点である。実現後も当面はAIRDOとソラシドエアのブランドを維持し、事業計画・収入管理・調達・施設で機能を統合したうえで、中期的にはANAブランドへの統合も視野に検討する。

含意

2026年3月期の国内線旅客(ANAブランド)は旅客数4,563万人、収入7,380億円で、ともに前期を上回った。それでも同社は国内線旅客事業を、多額の資産を投下しながら収益性が低迷している事業と位置づけ、安定収益基盤への復元を課題に置いた。2026年10月の決算説明会では、コロナ前の2015〜2017年度の水準である営業利益率10%の復元を目指す姿に掲げた。

国内の他社への資本関与では、2008年11月にスターフライヤー、2015年9月にスカイマークの株式を取得したが、いずれも増収等の相乗効果を期待する保有にとどまる。2017年4月にはPeach Aviationの議決権比率を38.7%から67.0%へ引き上げて連結子会社とした。同業の日本航空は2002年10月に日本エアシステムと持株会社を設立して経営を統合しており、2000年度の国内旅客シェアはJALグループ25%、JASグループ23%、ANAグループ49%だった。

いつ何が起きたか12件
筆者考察
考察

考察:少数出資の提携から支配へ

この決断は、補完し合う相手と少数出資の提携のまま協業するか、支配して一体で経営するかという問いへの答えである。ANAホールディングスはAIRDOと2002年から、ソラシドエアとは2005年から、少数出資とコードシェアで提携してきた。独立した事業主体のままでは、路線・ダイヤ・販売戦略を一体で判断できなかった。出資規制が2026年5月に廃止されると、ANAホールディングスは15.32%を持つRPWを、株式交換で完全子会社とすると決めた。基本合意に法的拘束力はなく、交換比率も未定で、結末はまだ出ていない。

国内の他社への資本関与は、長く支配を伴わない形をとってきた。ANAは2008年11月にスターフライヤー、2015年9月にスカイマークの株式を取得したが、いずれも増収等の相乗効果を期待する保有にとどまる。転機は2017年4月、Peach Aviationの議決権比率を38.7%から67.0%へ引き上げて連結子会社とした判断である。今回の決断は、Peachで選んだ支配の方式を、規制が外れたAIRDO・ソラシドエアにも広げるものと読める。提携先の中で規制の対象だった2社から先に支配へ移した点に、それまでの距離を決めていたのが規制だったことがうかがえる。

同業の日本航空は2002年10月、日本エアシステムと持株会社を設立して経営を統合した。2000年度の国内旅客シェアはJALグループ25%、JASグループ23%で、合わせると首位のANAグループの49%にほぼ並ぶ。同じ2002年、ANAはAIRDOとの提携を始めたが、選んだのは統合ではなく少数出資とコードシェアだった。違いの理由は立場にあったとみられる。首位のANAには規模を加える必要が薄かった。2026年に一体化を選んだ理由も規模ではなく、低下した国内旅客事業の収益力の復元にある。

Yutaka Sugiura, 2026年10月

数字で見る

ANAHD:国内線旅客(ANAブランド)の収入

ANAHD:国内線旅客(ANAブランド)の収入

国内線旅客収入(億円)

国内線旅客収入は2026年3月期に7,380億円で、4期続けて前期を上回る

ANAHD:国内線旅客(ANAブランド)の収入
(億円)国内線旅客収入備考
2022年3月期2,798緊急事態宣言が繰り返され需要が低迷
2023年3月期5,295旅客数はコロナ前の7割の水準まで回復
2024年3月期6,449
2025年3月期7,039
2026年3月期7,380旅客数4,563万人。AIRDO・ソラシドエアとのコードシェア便を含む
出所:ANAホールディングス 有価証券報告書 第77期〜第81期【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】国内線旅客(ANAブランド)
出所:ANAホールディングス 有価証券報告書 第77期〜第81期【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】国内線旅客(ANAブランド)
ANAHD:リージョナルプラスウイングスの連結業績

ANAHD:リージョナルプラスウイングスの連結業績

売上高(百万円)営業利益率(%)

RPWの営業利益は2026年3月期に34億円で、2期続けて減少

ANAHD:リージョナルプラスウイングスの連結業績
(百万円)売上高営業利益備考
2024年3月期101,4954,139
2025年3月期105,2783,638親会社株主に帰属する当期純損失523百万円
2026年3月期108,8013,431ANAHDの持分は15.32%
出所:ANAホールディングス 臨時報告書(2026年10月29日提出)【報告内容】Ⅰ(2)
出所:ANAホールディングス 臨時報告書(2026年10月29日提出)【報告内容】Ⅰ(2)
当時の取締役10名

取締役10名(2026年6月株主総会議決)

区分役員名役職
取締役業務執行担当領域
業務執行兼務芝田浩二取締役:代表取締役業務執行:社長担当:グループ経営戦略会議議長、グループESG経営推進会議総括、グループ監査担当
中堀公博取締役:代表取締役業務執行:副社長執行役員・グループCFO担当:グループ経理・財務室長
直木敬陽取締役:代表取締役業務執行:副社長執行役員・グループCHO担当:グループ経営戦略担当
片野坂真哉取締役:取締役業務執行:会長・取締役会議長担当:
平澤寿一取締役:取締役業務執行:担当:
種家純取締役:取締役業務執行:常務執行役員担当:グループESG経営推進会議議長、グループリスク&コンプライアンス・グループ法務・グループ総務担当
山本亜土取締役:取締役業務執行:担当:
独立役員勝栄二郎官僚取締役:取締役業務執行:担当:
峰岸真澄取締役:取締役業務執行:担当:
井上ゆかり取締役:取締役業務執行:担当:
この一覧は2026年6月の定時株主総会の直後に提出された有価証券報告書の【役員の状況】による。
参考文献

参考文献

参考

  • 全日本空輸 有価証券報告書 第56期(2006年3月期)【有価証券明細表】
  • 全日本空輸 有価証券報告書 第57期(2007年3月期)【業績等の概要】
  • ANAホールディングス 有価証券報告書 第81期(2026年3月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
  • ANAホールディングス 有価証券報告書 第81期(2026年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
  • ANAホールディングス 2027年3月期第2四半期決算説明会資料(2026年10月29日)
  • ANAホールディングス 有価証券報告書 第81期(2026年3月期)【株式の保有状況】
  • 日本航空システム Annual Report 2003「Interview with the President」
  • 日本航空 Annual Report 2002「Objectives of Business Integration」
  • ANAホールディングス 有価証券報告書 第77期〜第81期【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】国内線旅客(ANAブランド)
  • ANAホールディングス 決算説明会資料「2027年3月期第2四半期決算説明会資料」
  • ANAホールディングス 決算説明会資料「2027年3月期第1四半期決算説明会資料」
  • ANAホールディングス 決算説明会質疑応答「2027年3月期第1四半期決算説明会 質疑応答」
  • ANAホールディングス 臨時報告書「臨時報告書(株式交換に係る基本合意書の締結)」
  • ANAホールディングス 有価証券報告書「第81期(2026年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】【株式の保有状況】」
  • ANAホールディングス 有価証券報告書「第68期(2018年3月期)【企業結合等関係】」
  • 全日本空輸 有価証券報告書「第56期(2006年3月期)【有価証券明細表】・第57期(2007年3月期)【業績等の概要】」
  • 日本航空 アニュアルレポート「Annual Report 2002「Objectives of Business Integration」・日本航空システム Annual Report 2003」

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