日本エアシステムと統合(2001年・日本航空の決断)

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論点 国内線の劣勢を統合で補うか
日本航空:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)
同業大手との経営統合による国内事業基盤の再編

何をなぜ決めたか:同業大手との経営統合による国内事業基盤の再編

概要

2001年11月、日本航空(JAL)は日本エアシステム(JAS)と共同持株会社の設立で合意した。計画は株式移転で持株会社をつくって経営を統合し、その後に運航会社や関連事業を組み直すというものだった。2002年10月、両社を傘下に置く持株会社「日本航空システム」が発足した。

第2段階では2004年春までに国内線・国際線・貨物の事業ごとに会社を組み直し、持株会社がグループの戦略と経営資源の配分を受け持つ形を描いた。2000年度の国内線旅客のシェアはJALグループ25%、JASグループ23%で、合わせると首位の全日本空輸グループの49%とほぼ並ぶ。

背景

JALは収入の7割を国際線に頼り、国内線は3割にとどまっていた。兼子勲社長は、国際線は需要の上下動が激しく、国内線の収入を安定させることが前々からの課題だったと述べている。だが国内線旅客の7割超が使う羽田・伊丹の発着枠には制限が残り、その枠は全日空が半分を持ち、JALとJASが4分の1ずつを分け合う形だった。

会社は、JALもJASも単独では他社からシェアを奪って国内の基盤を広げる見込みはないと判断した。JAS側でも、東京急行電鉄の清水仁会長がグループの再建を急ぎ、電鉄との相乗効果が薄いとされるJASについて、国内に航空会社が3社も要るのかと疑問を示していた。

内容

公正取引委員会の承認を得るため、JALは羽田空港の発着枠9便分を手放し、片道の普通運賃を10%下げる措置を受け入れた。兼子社長は、この減収を路線網の拡大、団体予約から個人予約への切り替え、営業部門の統合で補うとした。

2002年10月には両社の営業組織を新会社「JALセールス」にまとめ、予約・発券・空港の基幹システムは2004年4月までに統合する計画を示した。マイレージは2002年10月から国内線で提携し、2003年4月1日に新「JALマイレージバンク」へ一本化すると発表した。会員はJAL側1,000万人、JAS側300万人で、国内最大の規模になる。

含意

統合後、国内で全国規模の大手は全日空とあわせて2グループだけになり、会社自身も競争が予想どおり激しくなったと認めた。2003年3月期は国内線の営業収入が208億円減ったが、貨物が好調で連結営業収入は540億円増え、純損益は前期の367億円の赤字から107億円の黒字に戻った。

会社は統合の相乗効果が出そろう2005年度に営業利益1,200億円以上を中期計画の目標に置いた。一方で次の2004年3月期は1,620億円の減収を見込み、営業損失220億円・純損失430億円を予想して、370億円の費用削減計画を組んだ。規模を得た直後から、需要の落ち込みへの備えに追われる形になった。

いつ何が起きたか 6件
考察:「規模」だけでは埋まらないもの
考察

考察:「規模」だけでは埋まらないもの

この統合は、発着枠という制度の壁にシェアを縛られた市場で、規模の拡大によって1位企業に対抗しようとした試みであったと思われる。狙いどおり国内線はANAとほぼ拮抗する2強体制へと収れんし、グループは世界有数の旅客規模を手にした。しかし、規模の獲得が即座に収益力や利用者便益の向上を意味したわけではない。複占路線での運賃上昇や運賃引き下げ措置の早期打ち切り、統合後のシェア低下といった事実は、再編が市場全体の競争環境に及ぼす影響が一様ではないことを示しているといえる。

その後のJALが2010年に経営破綻へ至った経緯を踏まえれば、規模の統合と経営体質の改善は別の課題であったとも読める。異なる成り立ちをもつ2社を一つの組織へまとめる作業には、路線網やブランドの統合だけでなく、コスト構造や企業文化の調整という長い時間を要する課題が伴う。成立した統合であっても、その帰結を狙いどおりに引き寄せられるかは、発表後の統合作業そのものにかかっている――本件は、そうした視点を改めて思い起こさせる事例といえるだろう。

参考文献

参考文献

参考
  • 日本航空 Annual Report 2002「Message from the President」
  • 日経ビジネス 2001年11月19日号
  • 日本航空システム Annual Report 2003「Interview with the President」
  • 日本航空 Annual Report 2002「Objectives of Business Integration」
  • 日経ビジネス 2001年12月10日号
  • 日本航空 Annual Report 2002「Specific Measures」
  • 日本航空・日本エアシステム ニュースリリース「新「JALグループ」、統合マイレージプログラムの詳細を決定」(2002年9月13日)
  • 公正取引委員会(平成13年度:事例10)「日本航空(株)及び(株)日本エアシステムの持株会社の設立による事業統合」(平成14年4月23日)
  • 土居直史・大橋弘「JAL-JAS合併に関する定量的評価」独立行政法人経済産業研究所(RIETI)ディスカッション・ペーパー(2015年8月)
  • 「日経ビジネス」2001年11月19日号 No.1117(日経BP)
  • 「日経ビジネス」2002年1月14日号 No.1124(日経BP)

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