日本航空の直近の動向と展望

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日本航空の直近の業績・経営課題・市場ポジションと、今後の展望をまとめたページです。

セグメント構成や中期的な論点を、現経営陣の発信と有価証券報告書の記述をもとに整理しています。

直近の動向と展望

2つの経営危機が残した教訓と財務回復の道筋

JALの歴史には2010年の経営破綻と2020年のコロナ禍という2つの経営危機が刻まれている。1度目は半官半民の国策会社体質を清算するきっかけとなり、稲盛和夫のアメーバ経営とJALフィロソフィが組織の体質を下から変えた。2度目は再建後に蓄積した自己資本で乗り切ったが、有利子負債はFY24でも8,872億円とコロナ前のFY18(1,368億円)の6.5倍の水準が続いている。財務の回復にはなお時間がかかる。過去10年かけて積み上げた自己資本の一部はコロナ禍で毀損し、負債も一時膨張した。破綻後に築いた余力があったからこそ2度目は破綻にならなかったが、余力の消耗自体は起きており、次の危機に対する備えはまだ回復途上にある。

赤坂前社長が「移動づくりが存在意義」と語った(日本経済新聞 2023/4/1)ように、JALは航空輸送にとどまらない移動体験全体の価値創造に軸足を移しつつある。鳥取社長が進める非航空事業の拡大は、航空業界が不可避的に抱える市況変動リスクへの構造的な対応策である。2010年の破綻で学んだ単一事業への過度な依存のリスクを、事業ポートフォリオの多様化で和らげる取り組みが進んでいる。航空事業で稼ぎながら、非航空で稼ぐ仕組みを同時に育てる二正面作戦であり、航空単体ではカバーしきれない需要変動の振れ幅を、別の収益源で吸収する設計に向かっている。次の10年のJALが、航空会社のままでいるのか、移動産業の企業へ姿を変えるのかが焦点となる。

参考文献
  • 有価証券報告書
  • 日本経済新聞 2023/4/1
  • 日経ビジネス 2024/9/13
  • 日経ESG 2022/2/18

SAFと次世代航空機 ── 脱炭素への対応

航空業界の脱炭素化は、全世界の航空会社に共通する長期的な課題である。JALは持続可能な航空燃料(SAF)の導入を進めており、赤坂前社長は「燃料をSAFに代替、業界連携で推進」という方針を示した(日経ESG 2022/2/18)。SAFは従来のジェット燃料と比べてCO2排出量を最大80%削減できるとされるが、供給量が限られ、価格は従来燃料の数倍に達する。国内外の航空会社はSAFの安定調達と価格低減に向けた取り組みを進めており、JALも業界全体での連携を模索している。機材面ではエアバスA350の導入で燃費効率を高めている。2024年にはボーイング767型・A321型の貨物専用機の運航も開始し、旅客機の貨物室に加えて専用機による輸送能力を広げた。貨物事業の強化は、コロナ禍で旅客が消失した際に貨物収入が下支えとなった経験を踏まえている。

参考文献
  • 有価証券報告書
  • 日本経済新聞 2023/4/1
  • 日経ビジネス 2024/9/13
  • 日経ESG 2022/2/18

参考文献・出所

有価証券報告書
読売新聞 1966/06/16
読売新聞 1966/08/09
日経済新聞 1991/05/20
日経新聞 1997/07/21
日本経済新聞 2023/4/1
日経ビジネス 2024/9/13
日経ESG 2022/2/18
日本経済新聞
日経ビジネス
日経ESG