広東省梅州の希土類磁石合弁の設立(2013年・TDKの決断)

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TDK:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
原料の市場購入に代わる、中国の資源会社との合弁による磁石製造2013年4月26日、TDKは取締役会で、中国・広東省の資源開発会社である広晟有色金属股份有限公司、東海貿易と3社で、広東省梅州市に希土類磁石を製造する合弁会社を設立すると決議した。名称は広東東電化広晟稀土高新材料有限公司、資本金は33百万USドル、出資比率はTDK59%・広晟有色金属37%・東海貿易4%で、2013年5月の設立を予定した。2006年6月に代表取締役社長に就任した上釜健宏氏のもとでの決断である。

何をなぜ決めたか:原料の市場購入に代わる、中国の資源会社との合弁による磁石製造

概要

2013年4月26日、TDKは取締役会で、中国・広東省の資源開発会社である広晟有色金属股份有限公司、東海貿易と3社で、広東省梅州市に希土類磁石を製造する合弁会社を設立すると決議した。名称は広東東電化広晟稀土高新材料有限公司、資本金は33百万USドル、出資比率はTDK59%・広晟有色金属37%・東海貿易4%で、2013年5月の設立を予定した。2006年6月に代表取締役社長に就任した上釜健宏氏のもとでの決断である。

広晟有色金属は1993年6月に設立された希土類・タングステン製品の製造・販売会社で、TDKとは資本・人的・取引のいずれの関係も無かった。日本と中国の政府から設立・運営に必要な許認可が下りない場合は合弁会社を解散する場合もあると断り、2014年3月期の連結業績への影響は軽微とした。

背景

TDKは1935年12月に、世界最初のフェライトコアの工業化を目的として設立された。1970年6月に静岡工場でマグネットの生産を開始し、1978年10月には成田工場で希土類磁石の生産を開始した。2008年7月31日には、ドイツの電子部品大手EPCOS AGと事業統合契約を締結し、互いに補完する関係にある同社を買収した。同業のヒロセ電機は2010年12月、韓国の合弁会社ヒロセコリアの株式25%を追加取得し、議決権比率を50%から75%へ高めていた。

合弁を決める直前の2013年3月期には、金属磁石の主原料であるレアアースの価格相場の変動が原価を押し上げた。研究開発では、複雑な国際情勢を背景にした希土類元素原料の高騰による販売価格の上昇を避けるため、希土類元素の使用量の削減と、希土類元素を使わない磁石の開発に注力していた。合弁の理由には、省エネ・環境対応で希土類磁石の需要が世界的に急増する見込みと、資源の限られた希土類材料の安定供給の確保を挙げた。

内容

合弁を決めた2014年3月期、電源とマグネットからなるその他磁気応用製品の売上高は107,588百万円で、マグネットの販売は売価下落の影響もあって自動車市場向けで減少した。同区分の売上高は2016年3月期に95,486百万円、2017年3月期に87,563百万円へ減少し、マグネットの販売は自動車市場とHDD向けで減少した。

2019年3月期には、Guangdong TDK Rising Rare Earth High Technology Material Co., Ltd.の普通株式を取得し、資本剰余金が27百万円減少した。2026年10月時点で、TDKの出資は資本金33,000,000USDの100%で、うち37%は間接所有である。

含意

2020年3月期、マグネットはHDD用マグネットの撤退と産業機器・自動車市場の需要低迷で売上が減少し、第4四半期に減損損失約144億円を計上した。同じ期に、マグネットに使うジスプロシウム等の重希土類は生産を中国に依存しているとして、原材料の調達リスクに挙げた。2023年3月期はxEV向けで増収となったものの生産性改善の遅れで減益となり、減損損失22億円を計上した。2025年3月期も自動車市場向けの販売減少で減収減益だった。

2026年10月28日、TDKはこの子会社を解散し清算すると決議した。事業はEV/HEV・風力発電・家庭用電子機器などの希土類磁石で、清算結了は現地の法律に従った手続きの完了を待つ予定であり、まだ済んでいない。解散の理由は示されていない。

いつ何が起きたか12件
筆者考察
考察

考察:原料を握っても収益は戻らない

この決断は、部品会社が希少な原料の確保を市場からの購入に任せるか、産地の資源会社と資本で結ぶかという問いへの答えである。TDKは後者を選び、広晟有色金属が37%を持つ合弁会社を、原料の産地である広東省梅州に置いた。しかし磁石事業の収益は合弁の後も戻らなかった。2020年3月期に約144億円、2023年3月期に22億円の減損損失を計上し、2026年10月には合弁会社の解散・清算を決めた。清算はまだ済んでいないが、原料の確保を収益に結びつけられなかった点で、この合弁は失敗に終わったと言える。

TDKは1935年12月にフェライトコアの工業化を目的として設立され、1978年10月には成田工場で希土類磁石の生産を開始した。素材の技術から部品へ事業を広げてきた会社である。2008年7月31日にEPCOS AGと事業統合契約を締結した買収は、互いに補完する関係にある部品会社を取り込む決断だった。2013年の合弁は、製品ではなく原料の調達へ投資を広げた決断にあたる。2019年3月期には合弁会社の普通株式を取得し、2026年10月時点では間接所有の37%を含めて100%を持っていた。37%は合弁時の広晟有色金属の出資比率と同じであり、資源会社の持分をグループ内で引き取った形とみられる。

同業のヒロセ電機は2010年12月、韓国の合弁会社ヒロセコリアの株式25%を追加取得し、議決権比率を50%から75%へ高めた。合弁相手の持分を引き取り、自社の運営に寄せる点は梅州の合弁と同じである。違いは、合弁が何のためにあったかにある。ヒロセ電機の狙いは韓国のコネクタ市場での拡販という需要の拡大だった。TDKの狙いは希土類材料の安定供給という原料の確保で、資源会社との合弁そのものが投資の理由だった。資源会社の持分がグループ内に移ったのであれば、産地の工場は原料の確保という当初の役目を失っていた可能性がある。

Yutaka Sugiura, 2026年10月

数字で見る

TDK:その他磁気応用製品(電源及びマグネット)の売上高

TDK:その他磁気応用製品(電源及びマグネット)の売上高

その他磁気応用製品の売上高(百万円)

売上高は2017年3月期に87,563百万円まで減少した

TDK:その他磁気応用製品(電源及びマグネット)の売上高
(百万円)その他磁気応用製品の売上高備考
2011年3月期98,951翌期有報の前期欄。記録メディアを除く組替後
2012年3月期107,674
2013年3月期104,413レアアース価格相場の変動で原価が上昇
2014年3月期107,5882013年4月に梅州の合弁設立を決議
2015年3月期108,715翌期有報では組替後102,841
2016年3月期95,486
2017年3月期87,563
2018年3月期95,370
出所:TDK 有価証券報告書 第116〜122期(2011年3月期〜2018年3月期)【業績等の概要】
出所:TDK 有価証券報告書 第116〜122期(2011年3月期〜2018年3月期)【業績等の概要】
参考文献

参考文献

参考

  • TDK プレスリリース「中国における合弁会社の設立に関するお知らせ」(2013年4月26日)
  • TDK 有価証券報告書 第118期(2014年3月期)【役員の状況】
  • TDK 有価証券報告書 第117期(2013年3月期)【沿革】
  • TDK 有価証券報告書 第117期(2013年3月期)【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
  • TDK 有価証券報告書 第117期(2013年3月期)【研究開発活動】
  • TDK 有価証券報告書 第113期(2009年3月期)【経営上の重要な契約等】連結財務諸表注記(注23)買収・第114期(2010年3月期)(注22)買収
  • ヒロセ電機 有価証券報告書 第64期(2011年3月期)・第68期(2015年3月期)【企業結合等関係】
  • TDK 有価証券報告書 第118期(2014年3月期)【業績等の概要】
  • TDK 有価証券報告書 第120期(2016年3月期)【業績等の概要】
  • TDK 有価証券報告書 第121期(2017年3月期)【業績等の概要】
  • TDK 有価証券報告書 第124期(2020年3月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
  • TDK 有価証券報告書 第124期(2020年3月期)【事業等のリスク】
  • TDK 有価証券報告書 第127期(2023年3月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
  • TDK 有価証券報告書 第129期(2025年3月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
  • TDK 有価証券報告書 第123期(2019年3月期)【連結財務諸表注記】
  • TDK 有価証券報告書 第128期(2024年3月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
  • TDK 有価証券報告書 第116〜122期(2011年3月期〜2018年3月期)【業績等の概要】
  • TDK 臨時報告書「臨時報告書(特定子会社の異動)」
  • TDK 適時開示「中国における合弁会社の設立に関するお知らせ」
  • TDK 有価証券報告書「第117〜129期【沿革】【業績等の概要】【研究開発活動】【事業等のリスク】」
  • TDK 有価証券報告書「第123期(2019年3月期)【連結財務諸表注記】(注10)純資産」

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