Hofseth Internationalとの資本業務提携(2015年・横浜冷凍の決断)

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横浜冷凍:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)
取引先への出資を足場にしたノルウェーのサーモン養殖への参入2015年11月、横浜冷凍と100%子会社のアライアンスシーフーズは、ノルウェーの水産加工大手Hofseth International AS(HI社)への資本参加を含む包括的な業務提携を締結したと公表した。公表時の社長は吉川俊雄氏である。提携の中身は、HI社が生産するノルウェー産アトランティックサーモンの加工品を北米・欧州の大手量販店へ輸出し、サーモンオイルを使ったサプリメントを中国へ、鮭ハラス製品を日本国内へ独占販売する3本立てだった。

何をなぜ決めたか:取引先への出資を足場にしたノルウェーのサーモン養殖への参入

概要

2015年11月、横浜冷凍と100%子会社のアライアンスシーフーズは、ノルウェーの水産加工大手Hofseth International AS(HI社)への資本参加を含む包括的な業務提携を締結したと公表した。公表時の社長は吉川俊雄氏である。提携の中身は、HI社が生産するノルウェー産アトランティックサーモンの加工品を北米・欧州の大手量販店へ輸出し、サーモンオイルを使ったサプリメントを中国へ、鮭ハラス製品を日本国内へ独占販売する3本立てだった。

出資の規模は小さく、提携による連結業績への影響は軽微と見込んでいた。2016年6月時点でアライアンスシーフーズが保有するHI社株式は3.9%にとどまる。冷蔵倉庫を本業とする会社が、調達先の水産加工会社への少額出資を通じて、ノルウェーの生産と欧米への販売に参入した決断である。

背景

アライアンスシーフーズは2009年6月に設立した、水産品の輸出入と卸売を担う子会社である。食品販売事業は売上高の大半を占めながら利益が薄く、2012年9月期は外部顧客への売上高90,632百万円に対してセグメント損失1,346百万円を計上した。提携直前の2015年9月期も、売上高130,595百万円に対してセグメント利益は1,189百万円にとどまる。同じ期の冷蔵倉庫事業は売上高24,139百万円でセグメント利益4,748百万円をあげていた。

相場で仕入れて相場で売る取引では、利益は魚価に左右される。のちに会社は、相場に左右されにくく安定した利益が見込める養殖事業に参入し、地理的リスクが低く水産物のブランド化が進んだノルウェーで生産する方針を掲げた。

内容

提携の翌年、HI社の周辺から現地の資産を続けて取得した。2016年3月にHI社が保有していた加工設備の保有会社Syvde Eiendom ASを1,333百万円で取得し、6月にはアライアンスシーフーズへ30億円を増資して、HI社と普通株を折半で持つ合弁会社HIYR ASを設立した。7月にはHIYRを通じて養殖会社Fjordlaks Aqua ASの全株式を13,884百万円で取得し、のれん11,455百万円を暫定計上した。

Fjordlaks Aqua買収の理由は、提携とSyvde取得で買付から販売までの商流を確保したうえで、魚価の変動リスクを抑えるには生産段階への関与が必要だというものだった。生産から加工・販売までの垂直統合モデルの確立を掲げ、2017年12月にはHI社株式123百万NOKを追加で取得している。

含意

養殖は見込んだ安定した利益を生まなかった。低海水温やシーライス(寄生虫)対策で生産コストが増加し、食品販売事業は2020年9月期にセグメント損失336百万円、2021年9月期に302百万円を計上した。2021年9月、外国企業として養殖ライセンスの新規発給や優遇策を受けられないことを理由に、HIYRの株式をHI社へ譲渡し、対価に金銭とHI社株式を受け取った。売却益は2,646百万円で、投資有価証券は13,615百万円から37,014百万円へ増加した。

子会社を譲渡した結果、ノルウェーへの関与はHI社への出資と融資に集まった。HI社は2024年12月期から赤字が続き、2025年11月に発行した上場グリーン債の価格は約30%下落した。2026年10月、HI社と関係会社への投融資残高を実質全額、特別損失に計上した。投資有価証券評価損236億円と貸倒引当金繰入額5億円である。別の海外取引先向けの債権でも、2025年1月の決算訂正で2023年9月期に遡り13,514百万円の特別損失を計上した。同業の三井倉庫ホールディングスは、買収した子会社の事業計画を見直し、2017年3月期に減損損失25,478百万円を計上している。

いつ何が起きたか12件
筆者考察
考察

考察:川上へ進み、出資だけが残った

この提携は、相場で仕入れて相場で売る食品販売の利益の薄さに、調達先へ出資して生産まで手元に置く垂直統合で答えようとした決断である。少額の資本参加は加工設備と養殖会社の取得へ進み、2016年には養殖会社の買収に13,884百万円を投じた。結果から言えば、この決断は失敗に終わった。2021年に養殖子会社を譲渡して得た売却益は2,646百万円にとどまり、2026年には残ったHI社向けの投融資で投資有価証券評価損236億円と貸倒引当金繰入額5億円を計上した。

年を追うと、2009年に設けたアライアンスシーフーズが海外の水産品を扱う子会社となり、2015年の提携がこの子会社をノルウェーの生産者と結んだ。2021年の譲渡は撤退に見えるが、実際には子会社の持分をHI社株式に置き換え、関与を1社への出資に集める再編だった。連結から外れたことで、HI社の業績は横浜冷凍の損益に毎期は表れなくなり、損失は2026年に一度に表面化した。海外の取引先への与信が後から損失になる構図は、2025年1月の決算訂正で2023年9月期に遡り13,514百万円の特別損失を計上した件とも重なる。

同業の倉庫会社にも、本業の外へ買収で事業を広げた例がある。三井倉庫ホールディングスはメーカー系物流子会社の取得を重ね、2017年3月期に減損損失25,478百万円を計上した。損失の規模はほぼ同じだが、違いは広げた先にある。三井倉庫が取り込んだのは本業に近い物流の機能だった。横浜冷凍が入ったのは魚価と海の環境に左右される養殖で、外国企業として養殖ライセンスを増やせない制度の制約もあった。本業から遠い領域へ現地の提携先に依存して参入したことが、損失の行方を出資先の業績に委ねる構造を生んだと思われる。

Yutaka Sugiura, 2026年10月

数字で見る

横浜冷凍:投資有価証券と総資産の推移

横浜冷凍:投資有価証券と総資産の推移

投資有価証券(百万円)

投資有価証券はHIYRを譲渡した2021年9月期に37,014百万円へ増加

横浜冷凍:投資有価証券と総資産の推移
(百万円)投資有価証券総資産備考
2011年9月期3,77593,065
2012年9月期3,61690,937
2013年9月期4,99397,593
2014年9月期5,513114,210
2015年9月期6,859118,901
2016年9月期7,120143,5542015年11月にHI社と資本業務提携。養殖会社の買収で総資産が増加
2017年9月期9,399173,699
2018年9月期12,839186,7912017年12月にHI社株式123百万NOKを追加取得
2019年9月期12,790179,247
2020年9月期13,615179,935
2021年9月期37,014178,203HIYRを譲渡し、対価に金銭とHI社株式を受け取った期
出所:横浜冷凍 有価証券報告書 第64〜74期(連結貸借対照表)
出所:横浜冷凍 有価証券報告書 第64〜74期(連結貸借対照表)
横浜冷凍:食品販売事業の売上高とセグメント利益

横浜冷凍:食品販売事業の売上高とセグメント利益

売上高(百万円)セグメント利益率(%)
横浜冷凍:食品販売事業の売上高とセグメント利益
(百万円)売上高セグメント利益備考
2011年9月期105,2462,023
2012年9月期90,632△1,346
2013年9月期97,262721
2014年9月期119,3301,285
2015年9月期130,5951,189
2016年9月期123,7931,618HI社との共同事業で鮭鱒類がセグメント業績に貢献
2017年9月期133,6551,904ノルウェーの養殖会社を連結。のれん償却の増加541百万円を吸収
2018年9月期145,3701,202
2019年9月期111,6171,023ノルウェーから欧米への鮭鱒輸出の取引形態を見直し減収
2020年9月期86,490△336低海水温とシーライス対策で養殖の生産コストが増加
2021年9月期82,445△302収益認識の会計基準を適用。9月にHIYRを譲渡し非連結化
出所:横浜冷凍 有価証券報告書 第65〜74期【セグメント情報】(外部顧客への売上高)
出所:横浜冷凍 有価証券報告書 第65〜74期【セグメント情報】(外部顧客への売上高)
参考文献

参考文献

参考

  • 横浜冷凍 有価証券報告書 第65期(2012年9月期)【セグメント情報】
  • 横浜冷凍 有価証券報告書 第68期(2015年9月期)【セグメント情報】
  • 横浜冷凍 有価証券報告書 第69期(2016年9月期)【企業結合等関係】
  • 横浜冷凍 有価証券報告書 第73期(2020年9月期)・第74期(2021年9月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】【セグメント情報】
  • 横浜冷凍 有価証券報告書 第74期(2021年9月期)【企業結合等関係】
  • 横浜冷凍 有価証券報告書 第74期(2021年9月期)【連結貸借対照表】
  • 横浜冷凍 有価証券報告書 第77期(2024年9月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
  • 三井倉庫ホールディングス 有価証券報告書 第169期(2017年3月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】【連結損益計算書関係】
  • 横浜冷凍 有価証券報告書 第73期(2020年9月期)【関係会社の状況】
  • 横浜冷凍 有価証券報告書 第74期(2021年9月期)【関係会社の状況】
  • 横浜冷凍 有価証券報告書 第64〜74期(連結貸借対照表)
  • 横浜冷凍 ニュースリリース「ノルウェー水産加工会社Hofseth International AS社との業務提携のお知らせ」
  • 横浜冷凍 ニュースリリース「当社グループ会社によるSyvde Eiendom ASの株式取得のお知らせ」
  • 横浜冷凍 ニュースリリース「子会社(株)アライアンスシーフーズの増資及び合弁会社設立によるFjordlaks Aqua ASの全株式取得のお知らせ」
  • 横浜冷凍 ニュースリリース「ノルウェー王国Fjordlaks Aqua ASの全株式取得完了のお知らせ」
  • 横浜冷凍 臨時報告書「臨時報告書(財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に著しい影響を与える事象)」
  • 横浜冷凍 有価証券報告書「第69期(2016年9月期)【企業結合等関係】【経営上の重要な契約等】」
  • 横浜冷凍 有価証券報告書「第70期(2017年9月期)【重要な後発事象】」
  • 横浜冷凍 有価証券報告書「第72期(2019年9月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】」
  • 横浜冷凍 有価証券報告書「第74期(2021年9月期)【企業結合等関係】【連結貸借対照表】」
  • 横浜冷凍 有価証券報告書「第65〜74期【セグメント情報】」

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