FREMONT BEEF設立(1989年・S Foodsの決断)

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論点 米国に自前の加工拠点を持つか
S Foods:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)
牛肉の輸入自由化を前にした、丸紅との合弁による米国の加工拠点

何をなぜ決めたか:牛肉の輸入自由化を前にした、丸紅との合弁による米国の加工拠点

概要

1989年4月、スタミナ食品(現エスフーズ)は丸紅らとの合弁で、米国ネブラスカ州にFREMONT BEEF COMPANYを子会社として設立した。所在地はフリモント市で、事業は食肉加工販売である。資本金は600万ドルで、スタミナ食品の出資比率は55%だった。

創業者の森島征夫社長が、設立と同時にFREMONT BEEFの取締役会長に就任した。現地の取締役社長には、丸紅に籍を置いたままの永坂峰一氏が就任している。株式の店頭公開は、設立から4か月後の1989年8月である。

背景

スタミナ食品は内臓肉の輸入卸から育った会社である。1972年1月に米国から牛上みのの開発輸入に成功し、1982年7月に内臓肉製品「こてっちゃん」を発売して製造へ事業を拡大した。それでも取扱いの90%以上は輸入肉で、原料の大半を米国に依存していた。

そこへ牛肉の輸入自由化が迫った。日米・日豪の交渉で、牛肉の輸入は1991年4月に自由化されることが決まっていた。1989年2月期の販売数量は牛内臓肉15,800トンに対し牛肉5,919トンで、牛肉を1万トン強へ増やす目標を掲げていた。森島征夫社長は自由化を 『当社の一大発展にとってステップになる』 と位置づけている。

内容

FREMONT BEEFは、スタミナ食品の製品の外注先と商品の仕入先を兼ねる。米国で処理した食肉を加工し、日本のスタミナ食品へ送る役割である。合弁相手の丸紅は、出資とは別に流通にも入った。FREMONT BEEFからの仕入は、丸紅を通す間接仕入の形をとる。

立ち上がりは早かった。設立から4年の間、償却を進めながら黒字を続けた。1994年7月の講演で示した前期の実績は、売上高4,940万ドル、税引き利益206万ドルである。この間、牛肉の取扱量は1990年の約11千トンから1993年の19,500トンへ78%増えた。

含意

合弁は16年続いた。2005年3月31日、エスフーズは丸紅とMarubeni America CorporationからFREMONT BEEFの株式を譲り受け、100%子会社とした。丸紅との資本関係は逆向きに残り、2025年2月期でも丸紅はエスフーズ株式4,841千株、15.30%を持つ大株主である。

米国の拠点はその後も厚みを増した。2014年3月にFREMONT BEEFの生産設備の拡充(予算1,350百万円)に着手し、2015年12月にはイリノイ州のAURORA PACKING COMPANY,INC.の全株式を取得した。2025年2月期の米国の売上高は54,356百万円に達している。

いつ何が起きたか 12件
考察:自由化の前に構えた米国の加工場
考察

考察:自由化の前に構えた米国の加工場

なぜ1989年に米国の加工拠点だったのか。スタミナ食品は取扱いの9割以上が輸入肉で、原料を米国の処理業者から仕入れる立場にあった。そこへ1991年4月の牛肉輸入自由化が決まり、会社は牛肉の販売を一気に増やす計画を立てていた。仕入先に依存したままでは、増やす量も品質も相手の都合で決まる。自由化の前に現地で処理と加工を担う子会社を持てば、扱う量が増えても原料を確保できる。設立の狙いはそこにあったと思われる。

もっとも、スタミナ食品は単独で米国に工場を持てる規模ではなかった。店頭公開はFREMONT BEEFの設立より後で、合弁相手の丸紅が45%を出し、現地の社長も丸紅から来た。この形は、丸紅を供給の経路にも組み込んだ。FREMONT BEEFからの仕入は100%子会社になった後も丸紅を通し、丸紅は今もエスフーズ株式の15.30%を持つ。合弁は資金と人の不足を補った一方で、商社への依存を固定した面もあったとみられる。

現在から振り返れば、この判断は成功である。FREMONT BEEFは設立から4年黒字を続け、1994年の講演時点で前期に税引き利益206万ドルを計上した。1996年に三井物産と設けたSTAMINA FOODS AMERICAが4年で営業を止めたのとは対照的である。エスフーズは2005年に100%子会社とし、2015年には2か所目の米国拠点を買収した。2025年2月期の米国の売上高は54,356百万円に達する。米国に加工拠点を持つという選択が、その後の海外展開の土台になった。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

S Foods:スタミナ食品の売上高と経常利益(単体)

売上高(億円)経常利益率(%)

単体の売上高は1986年2月期の227.6億円から1989年2月期の345.51億円へ、3年で1.5倍に伸びた

S Foods:スタミナ食品の売上高と経常利益(単体)
(億円) 売上高経常利益 備考
1986年2月期 227.6− 売上高は帝国銀行会社年鑑 第67版で照合。経常利益は手元の資料に無い
1988年2月期 277.2− 売上高は帝国銀行会社年鑑 第69版で照合。経常利益は手元の資料に無い
1989年2月期 345.5126.8 牛肉の日米・日豪協定の更新が遅れ、市場価格が高騰した期
1990年2月期 413.84− 1989年4月にFREMONT BEEFを設立し、8月に店頭公開。経常利益は手元の資料に無い
出所:帝国銀行会社年鑑 第67版(1987)別冊 兵庫県の社長ランキング(1986年2月期の売上高22,760百万円) / 帝国銀行会社年鑑 第69版(1989)別冊 兵庫県の売上高ランキング(1988年2月期の売上高27,720百万円) / 帝国銀行会社年鑑 第70版(1990)別冊 兵庫県の売上高ランキング(1989年2月期の売上高34,551百万円) / 帝国銀行会社年鑑 第71版(1991)別冊 兵庫県の売上高ランキング(1990年2月期の売上高41,384百万円) / 証券アナリストジャーナル 27巻10号(1989年10月)「スタミナ食品 森島征夫」講演要旨(1989年2月期の経常利益26億8,000万円)
出所:帝国銀行会社年鑑 第67版(1987)別冊 兵庫県の社長ランキング(1986年2月期の売上高22,760百万円) / 帝国銀行会社年鑑 第69版(1989)別冊 兵庫県の売上高ランキング(1988年2月期の売上高27,720百万円) / 帝国銀行会社年鑑 第70版(1990)別冊 兵庫県の売上高ランキング(1989年2月期の売上高34,551百万円) / 帝国銀行会社年鑑 第71版(1991)別冊 兵庫県の売上高ランキング(1990年2月期の売上高41,384百万円) / 証券アナリストジャーナル 27巻10号(1989年10月)「スタミナ食品 森島征夫」講演要旨(1989年2月期の経常利益26億8,000万円)
参考文献

参考文献

参考
  • エスフーズ 有価証券報告書 第40期(2006年2月期)【沿革】
  • エスフーズ 有価証券報告書 第40期(2006年2月期)【関係会社の状況】
  • 証券アナリストジャーナル 32巻8号(1994年)別冊付録 スタミナ食品 森島征夫(1994年7月19日講演)
  • エスフーズ 有価証券報告書 第40期(2006年2月期)【役員の状況】
  • 証券アナリストジャーナル 27巻10号(1989年10月) 日本証券アナリスト協会企業分析部会 講演要旨(1989年9月19日)
  • エスフーズ 有価証券報告書 第59期(2025年2月期)【大株主の状況】
  • エスフーズ 有価証券報告書 第59期(2025年2月期)【沿革】
  • エスフーズ 有価証券報告書 第59期(2025年2月期)【連結財務諸表】セグメント情報等(関連情報)
  • 帝国銀行会社年鑑 第67版(1987)別冊 兵庫県の社長ランキング(1986年2月期の売上高22,760百万円)
  • 帝国銀行会社年鑑 第69版(1989)別冊 兵庫県の売上高ランキング(1988年2月期の売上高27,720百万円)
  • 帝国銀行会社年鑑 第70版(1990)別冊 兵庫県の売上高ランキング(1989年2月期の売上高34,551百万円)
  • 帝国銀行会社年鑑 第71版(1991)別冊 兵庫県の売上高ランキング(1990年2月期の売上高41,384百万円)
  • 証券アナリストジャーナル 27巻10号(1989年10月) 講演要旨(1989年2月期の経常利益26億8,000万円)
  • エスフーズ 有価証券報告書「第40期(2006年2月期)【沿革】【関係会社の状況】【役員の状況】」
  • エスフーズ 有価証券報告書「第49期(2015年2月期)【設備の新設、除却等の計画】」
  • エスフーズ 有価証券報告書「第59期(2025年2月期)【沿革】【大株主の状況】【連結財務諸表】セグメント情報等(関連情報)」

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