ヒロセコリアの完全子会社化(2010年・ヒロセ電機の決断) 更新:2026/09/12 論点 韓国合弁を完全子会社化するか ヒロセ電機:業績の推移 売上高(億円)親会社株主に帰属する当期純利益率(%) 29年続いた韓国合弁の段階的な買い増しと、単独支配への移行 何をなぜ決めたか:29年続いた韓国合弁の段階的な買い増しと、単独支配への移行 概要 2010年12月にヒロセコリアの株式25%を追加取得して出資比率を75%とし連結子会社化、2012年11月に約22%(計約97%)、2015年1月に約3%を買い増して100%子会社とした一連の判断。1985年10月に韓国の大徳産業と設立した合弁は、29年を経て完全子会社となった。 背景 ヒロセコリアは出資比率50%の持分法適用関連会社で、多極コネクタと同軸コネクタの製造と販売の両方を担っていた。携帯電話に次ぐ収益源としてカーエレクトロニクスと産業用機器向けを強めていた同社にとって、韓国は顧客と生産の双方が集まる市場であった。 内容 企業結合日は2010年12月10日で、取得原価は78億2,700万円。うち結合直前に持っていた50%分の時価が52億1,800万円、追加取得した25%分が25億8,500万円であった。のれんは2億2,700万円にとどまり、3年3ヶ月の均等償却とした。2011年1月から3月までの売上と損益が連結損益計算書に加わり、連結従業員は353名増えた。同時に段階取得に係る差損18億9,500万円を特別損失に計上している。2015年1月22日に約3%を18億5,200万円で取得し、持分は100%に達した。 含意 ヒロセコリアの売上高は2013年3月期221億1,600万円から2015年3月期336億4,700万円へ伸び、いずれも連結売上高の10%を超えた。合弁で入った市場から、29年後に相手方の持分を買い切って自前の生産・販売拠点に組み替えた事例にあたる。 いつ何が起きたか 7件 考察:合弁を畳むという後始末 考察 考察:合弁を畳むという後始末 合弁は、知らない市場に参入するための入場券である。1985年のヒロセ電機にとって、韓国で工場を建て顧客を開拓するには大徳産業と組むのが現実的な方法であった。ただ入場券は、入り終えたあとも相手方の持分として残る。2010年に計上した段階取得に係る差損18億9,500万円は、25年前に半額で買った持分と、いま買い足す持分との値段の差にほかならない。入場料の後払いと呼べる性質の損失であった。 注目したいのは、買い切るまでに4年1か月をかけた点である。75%を得て決定権を確保した時点で運営上の目的はほぼ達しており、残りの25%は急ぐ必要がなかった。2012年に約97%、2015年に100%と刻んだ足取りは、相手方の事情にも配慮しながら進めた交渉の跡を思わせる。持分をすべて取得した2015年3月期、ヒロセコリアの当期純利益は50億3,400万円で、ヒロセ電機の連結純利益229億4,800万円の2割を超える水準にあった。 Yutaka Sugiura, 2026年7月 数字で見る 3表 数字で見る 図と表 ヒロセ電機:連結業績の推移 売上高(百万円)経常利益率(%) 表を見る ヒロセ電機:連結業績の推移 × (百万円) 売上高経常利益当期純利益 備考 2006年3月期 104,40738,62722,913 2007年3月期 115,48540,19924,176 2008年3月期 118,04337,97622,597 2009年3月期 89,87220,77613,306 リーマン・ショックで減収 2010年3月期 84,46821,99913,266 2011年3月期 92,44022,73911,714 段階取得に係る差損1,895を特別損失に計上し、当期純利益は前期比11.7%減 2012年3月期 94,79020,91912,824 ヒロセコリアを通期で連結した最初の期 2013年3月期 95,93822,38613,508 2014年3月期 124,98734,74722,439 当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益 2015年3月期 125,72634,96222,948 1月にヒロセコリアを完全子会社化。当期純利益は親会社株主に帰属する分 2016年3月期 120,28430,51621,104 出所:ヒロセ電機 有価証券報告書 第59期〜第69期(主要な経営指標等の推移・連結) 出所:ヒロセ電機 有価証券報告書 第59期〜第69期(主要な経営指標等の推移・連結) ヒロセ電機:買収したヒロセコリアの業績 売上高(百万円)経常利益率(%) 表を見る ヒロセ電機:買収したヒロセコリアの業績 × (百万円) 売上高経常利益当期純利益 備考 2012年3月期 15,1632,0031,568 連結売上高に占める割合が10%を超え、主要な損益情報等の開示が始まった 2013年3月期 22,1164,9173,862 11月に持分を約97%へ引き上げた 2014年3月期 37,6409,7047,478 売上高は連結の3割。純資産額は26,092 2015年3月期 33,6476,3985,034 1月に完全子会社化。当期純利益は連結の2割を超える 2016年3月期 29,7445,2083,999 出所:ヒロセ電機 有価証券報告書 第65期〜第69期【関係会社の状況】(主要な損益情報等) 出所:ヒロセ電機 有価証券報告書 第65期〜第69期【関係会社の状況】(主要な損益情報等) 買収の条件 被取得企業の名称 ヒロセコリア株式会社 企業結合を行った主な理由 韓国コネクタ市場での更なる拡販並びに深耕の強化 企業結合日 2010年12月10日 企業結合の法的形式 現金を対価とする株式の取得 取得した議決権比率 75%(当日25%を追加取得) 取得企業を決定するに至った主な根拠 現金を対価とする株式取得で議決権の過半数を取得したこと 取得原価 7,827百万円 段階取得に係る差損 1,895百万円 表を見る 買収の条件 × 科目 概要 備考 被取得企業の名称 ヒロセコリア株式会社 事業の内容はコネクタならびにその他の電子部品等の製造・販売 企業結合を行った主な理由 韓国コネクタ市場での更なる拡販並びに深耕の強化 グローバル事業展開拡大の一翼を担う重要拠点として、より円滑な企業運営を行なうため 企業結合日 2010年12月10日 沿革では2010年12月に株式25%を追加取得して子会社化と記載している 企業結合の法的形式 現金を対価とする株式の取得 結合後企業の名称はヒロセコリア株式会社のまま変えていない 取得した議決権比率 75%(当日25%を追加取得) 企業結合直前に所有していた議決権比率は50% 取得企業を決定するに至った主な根拠 現金を対価とする株式取得で議決権の過半数を取得したこと 取得原価 7,827百万円 結合直前保有分の時価5,218、追加取得分の時価2,585、取得に直接要した費用23 段階取得に係る差損 1,895百万円 取得原価と、取得に至った取引ごとの取得原価の合計額との差額。特別損失に計上した のれんの金額 227百万円 韓国市場で期待される超過収益力から発生。3年3ヶ月にわたる均等償却 受け入れた資産・引き受けた負債 資産12,302百万円/負債2,152百万円 流動資産5,079・固定資産7,223/流動負債1,817・固定負債335 業績に与える影響の概算額 売上高8,039百万円/営業利益813百万円 期首に完了したと仮定した場合の差額。経常利益624、当期純利益588。監査証明の対象外 連結に取り込んだ業績の期間 2011年1月1日から3月31日まで 2010年4月1日から12月31日までは持分法による投資利益に計上している 追加取得(約22%) 2012年11月 計約97%。第66期の企業結合等関係は該当なしで、取得額は開示されていない 完全子会社化 2015年1月22日 約3%を現金1,852百万円で取得。少数株主との取引として資本剰余金を891百万円減らした 出所:ヒロセ電機 有価証券報告書 第64期(2011年3月期)・第68期(2015年3月期)【企業結合等関係】 出所:ヒロセ電機 有価証券報告書 第64期(2011年3月期)・第68期(2015年3月期)【企業結合等関係】 参考文献 参考文献 参考ヒロセ電機 有価証券報告書 第64期(2011年3月期・連結)ヒロセ電機 有価証券報告書(2013年3月期)ヒロセ電機 有価証券報告書(2015年3月期・連結)ヒロセ電機 有価証券報告書【沿革】ヒロセ電機 公式サイト「会社沿革」(https://www.hirose.com/corporate/ja/about/history/) 次に読む決断 ヒロセ電機の意思決定1972年ヒロセ電機ヒロセ電機創業35年での株式上場外資と組まない純国産コネクタ専業のまま東証二部へ上場1972年1980年ヒロセ電機ヒロセ電機米国現地法人設立北米を第一歩とする海外拠点網の構築による、国内中心の事業体制からの転換1980年同じ問い:買収・合併後の統合2011年日清紡HD日清紡HDTMD Frictionの買収欧州のブレーキ摩擦材大手の全株式取得と、その完全な傘下入り2011年2009年スクウェア・エニックスHDスクウェア・エニックスHD英Eidosの完全子会社化13年後のEmbracerへの売却2009年2012年セブン銀行セブン銀行米FCTIの買収米国のATM運営会社の取り込みによる、初めての海外市場への進出2012年2008年住友重機械工業住友重機械工業独デマーグなど5社買収欧州機械メーカーを続けて取り込む5社連続取得2008年2008年TDKTDK独EPCOSの買収受動部品・センサー領域への事業補完2008年 × 出所