1950年代の日本で半導体に進出しない選択は、成長機会を自ら狭める判断に映ったはずである。しかし佐藤彦八はセラミックスの可能性に確信を持ち、「深く掘ること」を「広く手がけること」に優先した。この判断は研究者としての技術的バックグラウンドに根差している。結果として75年後の太陽誘電…
MLCCの内部電極をパラジウムからニッケルに置き換えるには、誘電体セラミックスの組成を根本から設計し直す必要があった。これは材料を外部調達するメーカーには容易に追随できない領域であり、太陽誘電の「素材から作る」という方針が具体的な競争障壁として機能した局面である。この技術は業界標…
CD-Rは太陽誘電の材料技術がもたらした市場創造の典型例である。しかしこの技術は、技術の寿命と市場の寿命が一致しないという課題を同社に突きつけた。CD-Rから追記型ブルーレイまで3世代にわたり技術を進化させたが、HDDとクラウドが光記録メディア市場そのものを縮小させた。技術の深化…
太陽誘電がビデオテープで採用した2段階スクリーニングは、不確実な市場への参入コストを制御する仕組みであった。年10万巻・売上1億円未満という規模で判断を下し、15億円の損失で撤退を完了させた。本格参入に必要とされた月産100万巻の生産ライン(推定投資100億円以上)との対比で見れ…
太陽誘電が光記録メディアから撤退したのは、技術が陳腐化したからではなく、技術が載る市場プラットフォーム自体が消滅したためである。CD-R商品化から撤退までの27年間、3世代の光記録メディアを商品化したが、HDDとクラウドという代替技術の前に光ディスク自体が役割を終えた。技術の進化…