伊方発電所への株主提案(2024年・四国電力の決断)

論点即時廃炉の株主提案にどう応じるか
四国電力:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
3年続いた即時廃炉の請求と、3号機を最大限活用する取締役会の反対2024年6月26日の第100回定時株主総会に、全取締役13名の即時解任と定款一部変更4件の株主提案が出された。取締役会は全件に反対し、いずれも否決された。同じ形の提案は2025年6月26日の第101回に4件、2026年6月25日の第102回に5件と続き、3年で14件がすべて否決されている。

何をなぜ決めたか:3年続いた即時廃炉の請求と、3号機を最大限活用する取締役会の反対

概要

2024年6月26日の第100回定時株主総会に、全取締役13名の即時解任と定款一部変更4件の株主提案が出された。取締役会は全件に反対し、いずれも否決された。同じ形の提案は2025年6月26日の第101回に4件、2026年6月25日の第102回に5件と続き、3年で14件がすべて否決されている。

提案株主は第101回で110名・議決権988個、第102回で104名・976個。総株主の議決権2,035,756個に対し0.05%にすぎず、定款変更に要る出席議決権の3分の2にはどう組んでも届かない。

背景

伊方発電所は3号機が稼働し、1・2号機は廃止措置に入っている。3号機の運転差止めを求める訴訟は松山・広島・大分・山口・高松の5系統で提起され、松山地裁と広島地裁が2025年3月に原告の請求を棄却したものの、いずれも控訴されて係争が続く。

株主提案はこの係争と並走する。求めたのは、佐田岬半島周辺の活断層を判定する三次元地下探査とデータの全面公開、3号機の即時廃炉、原子力事業からの即時撤退、事故に備えた損害賠償基金の設置だった。

内容

反対の論拠として取締役会が繰り返し置いたのは、原子力を低廉で良質な電気を安定的に届ける重要な電源かつゼロエミッション電源とみる考えと、業務執行に関する事項を定款で縛れば機動的かつ柔軟な業務執行が損なわれるという建て付けである。三次元探査については、文献・地形・地質調査と物理探査を総合して敷地近傍の三次元的な地下構造を把握しており必要ないと評価した。

賛成は議案で大きくは割れない。反対率は95.4〜97.7%の範囲に収まり、最も賛成を集めたのは2026年の株主総会議事録のホームページ公表を求めた議案の62,722個だった。

含意

3年のあいだに議案は原子力そのものから会社の運び方へ広がった。2025年には政党・政治団体のパーティー券購入の禁止が、2026年には議事録の公表と蓄電池事業の主軸化が加わっている。パーティー券については、株主有志の公開質問に対し情報収集等の観点から必要最小限を購入すると答えた経緯が提案の理由に引かれた。

総会の議決では否定され続けているが、同じ論点は訴訟の場でもなお審理されている。

いつ何が起きたか6件
当時の取締役14名

当時の取締役(2024年6月株主総会決議)

考察:総会と法廷、二つの窓口
考察

考察:総会と法廷、二つの窓口

同じ要求が、株主総会と裁判所の二つの窓口に同時に持ち込まれている。伊方発電所3号機の運転を止めよという請求は、松山・広島・大分・山口・高松の5系統で訴訟になり、株主総会では定款の変更として議案に立つ。訴訟では原告の請求が棄却され、総会では反対率97.7%で否決された。それでも二つの窓口が閉じないのは、どちらも会社に応答を義務づける仕組みだからだろう。招集通知に載る取締役会の意見は、三次元探査は必要ないという評価まで含めて活字になり、株主の手元に届く。

もっとも、3年の議案の移り変わりは、要求の主な対象が原子力から会社の運び方へ移ったことを示している。2024年に全取締役の即時解任という最も強い形で出された要求は、翌年にはパーティー券の購入禁止へ、翌々年には議事録の公表へと枝を伸ばした。そして最も賛成を集めたのは、原子力ではなく議事録の公表を求めた62,722個である。原子力政策の是非では動かない株主が、会社の運び方の透明性には票を投じた。反対率という一つの数字の内側で、問われている対象は静かに入れ替わっている。

数字で見る3表

数字で見る

図と表

四国電力:株主提案の議案別の反対率

四国電力:株主提案の議案別の反対率
(%)反対率備考
2024年 第4号議案96.1全取締役13名の即時解任。反対率96.1〜96.7%で、賛成が最多は長井啓介氏の39,463個
2024年 第5号議案96事業目的の電気事業から原子力発電を除く。賛成は40,561個
2024年 第6号議案96伊方原子力発電所の廃炉事業を事業目的に加える。賛成は40,990個
2024年 第7号議案96.2事故発生時の避難計画の策定と安定ヨウ素剤の備蓄。賛成は37,472個
2024年 第8号議案95.4電源別の発電単価や寄付先の公表など情報開示の徹底。賛成は45,452個
2025年 第4号議案97.4佐田岬半島周辺の三次元地下探査とデータの全面公開。賛成は32,345個
2025年 第5号議案97.7伊方原子力発電所3号機の即時廃炉。賛成は28,954個
2025年 第6号議案97.7原子力発電事業からの即時撤退。賛成は28,892個
2025年 第7号議案97政党・政治団体および政治家個人のパーティー券購入の禁止。賛成は38,373個
2026年 第5号議案97.2事業目的に蓄電池事業の開発と拡大を加える。賛成は35,078個
2026年 第6号議案97.2事故発生時の責任当事者としての避難計画の策定と実行。賛成は35,039個
2026年 第7号議案97.5最善の安全対策として原子力事業から即時撤退する。賛成は29,921個
2026年 第8号議案95.4株主総会議事録の速やかなホームページ公表。賛成は62,722個で3年14議案の最多
2026年 第9号議案97.323兆円を目標とする事故に備えた損害賠償基金の設置。賛成は33,116個
出所:四国電力 臨時報告書(2024年7月1日・2025年7月1日・2026年6月29日提出)議決権行使の結果
出所:四国電力 臨時報告書(2024年7月1日・2025年7月1日・2026年6月29日提出)議決権行使の結果

四国電力:所有者別の議決権比率の推移

四国電力:所有者別の議決権比率の推移
(%)金融機関外国法人等(法人)個人その他備考
2019年3月期34.5113.7139.51
2020年3月期36.429.8441.67
2021年3月期34.2310.6642.77
2022年3月期33.6810.9642.43
2023年3月期33.5614.3138.65
2024年3月期33.3316.0635.84第100回総会の基準日を含む期。個人その他が3年で6.59ポイント下がった
2025年3月期31.2214.5334.72
2026年3月期29.0715.9833.92
出所:四国電力 有価証券報告書 第95期〜第101期【所有者別状況】
出所:四国電力 有価証券報告書 第95期〜第101期【所有者別状況】

株主提案の条件

株主提案の条件
科目概要備考
提案株主個人株主110名の共同提案(第101回)第102回は104名。第100回の招集通知は会社の株主総会ページに掲載されていない
提案株主の議決権の数988個(第101回)第102回は976個。総株主の議決権2,035,756個に対し0.05%
対象の株主総会第100回から第102回までの3回2024年6月26日、2025年6月26日、2026年6月25日
株主提案の議案取締役解任1件と定款一部変更4件(第100回)第101回は定款一部変更4件、第102回は5件。3年で14件
提案の理由伊方発電所3号機の即時廃炉と原子力事業からの撤退南海トラフ巨大地震の発生確率と、事故が起きた場合に農水産業が受ける打撃を論拠とした
取締役会の意見全14議案に反対原子力は重要な電源であり、業務執行に関する事項を定款に規定することは適切でないとした
議決の結果14議案すべて否決反対率は95.4〜97.7%。会社提案の議案はいずれも88.9%以上の賛成で可決
可決の要件出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成定款変更は特別決議。取締役解任のうち監査等委員である取締役も3分の2以上が要る
出所:四国電力 第101回・第102回定時株主総会招集ご通知、臨時報告書(2024年7月1日・2025年7月1日・2026年6月29日提出)
当時の取締役14名

当時の取締役(2024年6月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考

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