オアシスの定款変更提案を否決(2025年・DICの決断)

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論点取引監視を定款に書く提案にどう応じるか
DIC:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
関連当事者取引の監視を定款へ書き込ませる要求と、22.45%で退けた総会2025年3月27日の第127期定時株主総会で、オアシス系の2ファンドが、関連当事者取引の報告及び監視に関する規定を定款に新設する第4号議案を提案した。取締役会は2月12日に反対を決議し、議案は賛成22.45%で否決された。定款変更の可決には、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要だった。

何をなぜ決めたか:関連当事者取引の監視を定款へ書き込ませる要求と、22.45%で退けた総会

概要

2025年3月27日の第127期定時株主総会で、オアシス系の2ファンドが、関連当事者取引の報告及び監視に関する規定を定款に新設する第4号議案を提案した。取締役会は2月12日に反対を決議し、議案は賛成22.45%で否決された。定款変更の可決には、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要だった。

背景

提案が名指ししたのは、取締役の川村喜久氏とその近親者が議決権の過半数を実質的に所有する日誠不動産と、その100%子会社である大日製罐・日辰貿易との取引である。2024年12月期の取引額は、日辰貿易からの原材料等の購入が7,728百万円、日誠不動産へのビル等の賃借料等の支払いが1,944百万円、大日製罐からの金属容器等の購入が548百万円。提案株主は、この取引の議論に関する取締役会議事録の閲覧謄写を裁判所へ申し立てていた。

内容

議案は、取引開始時と四半期ごとに、独立第三者との取引条件と比較する所定の手続を経た報告を取締役会が受け、その妥当性を取締役会決議で確認する条文を求めた。あわせて関連当事者の範囲に、取締役を退任した者やその近親者、これらの者が実質的に支配する法人を含めるよう定めている。

取締役会は、担当部署が近隣相場の調査や競合他社との取引条件との比較を行い、内部監査部門及び監査役の監査を経て年1回その概要を取締役会へ報告していることを挙げ、根本規則である定款に規定する必要はないとした。関連当事者の範囲も会社計算規則で明確に定められており、拡張する必要は認められないとしている。

含意

第4号議案は22.45%で否決された。一方、会社提案の取締役候補9名のうち、取締役会長の猪野薫氏の賛成率は67.51%で、他の8名の80.58〜84.72%から大きく離れた。川村喜久氏は総会の終結をもって任期満了で退任したが、重要な子会社の役員に該当するとして関連当事者の開示は続いている。2026年3月の第128期定時株主総会に株主提案はなく、猪野氏は取締役候補から外れて取締役は7名になった。

いつ何が起きたか7件
当時の取締役9名

当時の取締役(2025年3月株主総会決議)

考察:定款に書かせるという要求
考察

考察:定款に書かせるという要求

この提案が求めたのは、事業でも還元でもなく、監視の手続を会社の根本規則へ書き込ませることだった。関連当事者取引を監視するとはコーポレートガバナンス報告書に既に書かれており、会社はそれで足りると答えている。提案株主が突いたのは、そう書きながら裁判手続では該当する議事録は存在しないと答えた、その落差である。定款は取締役会の裁量では変えられない。運用の言明を規則へ移せば、監視が会社の自己申告から外れる。賛成22.45%という数字は、その移し替えまでは要らないと株主の多数が判じた結果なのだろう。

もっとも、議案の否決はこの論点が退けられたことを意味しない。取締役会長である猪野薫氏の賛成率67.51%は、同じ議案の他の8名より13ポイント以上低く、翌年の総会では候補から外れて取締役は7名になった。関連当事者取引の相手方を支配する川村喜久氏も、この総会の終結をもって退任している。提案が範囲へ含めよと求めた「取締役を退任した者」は、その退任によってまさに現実の論点となり、会社は重要な子会社の役員に当たるとして開示を続けた。定款には一行も加わらないまま、提案が指した対象のほうが動いたことになる。

Yutaka Sugiura, 2026年9月
数字で見る4表

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図と表

DIC:オアシス系ファンドの所有株式数

  • 昌栄13%
  • 日本マスタートラスト信託銀行(信託口)11%
  • 日本カストディ銀行(信託口)6%
  • OASIS JAPAN STRATEGIC FUND6%
  • 第一生命保険4%
  • OASIS INVESTMENTS II MASTER FUND3%
  • OASIS JAPAN STRATEGIC FUND Y3%
  • その他54%
DIC:オアシス系ファンドの所有株式数
(千株)所有株式数備考
2023年12月期4,768OASIS JAPAN STRATEGIC FUND LTD.が所有比率5.02%で第4位に載る
2024年12月期11,0193ファンドの合計で所有比率11.60%。うち提案株主2社は9.03%
2025年12月期11,0193ファンドの株式数は前期から変わっていない
出所:DIC 有価証券報告書 第122〜128期【大株主の状況】 / DIC 有価証券報告書 第127期(2024年12月期)【発行済株式総数、資本金等の推移】(発行済株式総数95,156,904株)
出所:DIC 有価証券報告書 第122〜128期【大株主の状況】 / DIC 有価証券報告書 第127期(2024年12月期)【発行済株式総数、資本金等の推移】(発行済株式総数95,156,904株)

DIC:第127期定時株主総会の議案別賛成率

DIC:第127期定時株主総会の議案別賛成率
(%)賛成率備考
第1号 剰余金の処分99.09会社提案。1株につき50円の期末配当
第2号 猪野薫67.51会社提案。取締役会長。ISS社が唯一反対を推奨した候補者
第2号 池田尚志83.14会社提案。代表取締役社長執行役員
第2号 古田修司80.72
第2号 浅井健80.58
第2号 中藤正哉83.22
第2号 藤田正美82.1
第2号 齊藤史郎84.09
第2号 Donna Costa84.12
第2号 ランドバーグ史枝84.72
第3号 名倉啓太84.65会社提案の監査役選任
第4号 定款一部変更22.45株主提案。3分の2以上の賛成が必要で否決された
出所:DIC 臨時報告書(2025年3月28日提出)第127期定時株主総会の議決権行使結果
出所:DIC 臨時報告書(2025年3月28日提出)第127期定時株主総会の議決権行使結果

DIC:関連当事者3社との取引金額の推移

DIC:関連当事者3社との取引金額の推移
(百万円)日誠不動産(賃借料等)大日製罐(購入)日辰貿易(購入)備考
2019年12月期2,2324596,936
2020年12月期2,2174136,300
2021年12月期2,2104796,971
2022年12月期2,2254588,851
2023年12月期2,5014907,516
2024年12月期1,9445487,728株主提案が付議された総会の対象期。日辰貿易へは別に4,355の販売がある
2025年12月期1,9525606,245川村喜久氏の退任後も重要な子会社の役員として開示が続く
出所:DIC 有価証券報告書 第122〜128期【関連当事者情報】提出会社と関連当事者との取引
出所:DIC 有価証券報告書 第122〜128期【関連当事者情報】提出会社と関連当事者との取引

株主提案の条件

株主提案の条件
科目概要備考
提案株主OASIS INVESTMENTS II MASTER FUND LTD.2社の連名による提案。招集通知には提案株主が提出した書面の内容が引用されている
提案株主(2社目)OASIS JAPAN STRATEGIC FUND LTD.会社が加えたのは議案番号の削除・追加と表記の統一のみ
提案株主の所有比率9.03%(2024年12月31日現在)2社の合計。OASIS JAPAN STRATEGIC FUND Y LTD.を加えた3社では11.60%
対象の株主総会第127期定時株主総会(2025年3月27日)会社提案は第1号から第3号議案、株主提案は第4号議案の1件
株主提案の議案第4号議案 定款一部変更の件第8章「関連当事者取引の報告及び監視」と第42条を新設する
議案の要領四半期ごとの報告と取締役会決議による確認独立第三者との取引条件と比較するなど所定の手続を経た報告を、取引開始時と四半期ごとに受ける
関連当事者の範囲取締役を退任した者とその近親者を含めるこれらの者が実質的に支配する法人も含む。会社計算規則第112条第4項の定義を広げる要求
提案の理由大日製罐・日辰貿易との取引に係る議事録の不存在取締役会議事録の閲覧謄写を裁判所へ申し立てたところ、該当する議事録は存在しないとの回答を受けた
会社提案と重なる議案なし取締役9名と監査役1名の選任はいずれも会社提案のみで、対抗する候補者の擁立はなかった
取締役会の意見反対(2025年2月12日)担当部署の検証と内部監査部門・監査役の監査、年1回の取締役会報告で監視済みとした
議決の結果否決(賛成22.45%)賛成173,676個・反対594,190個・棄権7個。会社提案の第1号から第3号議案はすべて可決
可決の要件出席した株主の議決権の3分の2以上議決権の3分の1以上を有する株主の出席が前提。会社提案の選任議案は過半数
出所:DIC 第127期定時株主総会 招集ご通知(2025年3月11日)・臨時報告書(2025年3月28日提出)
当時の取締役9名

当時の取締役(2025年3月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考
  • DIC 適時開示「株主提案に対する当社取締役会意見に関するお知らせ」
  • DIC 招集通知「第127期定時株主総会 招集ご通知」
  • DIC 適時開示「株主の質問状に対する当社見解について」
  • DIC 適時開示「ISS社レポートに対する当社の見解について」
  • DIC 適時開示「株主の追加質問状に対する当社見解について」
  • DIC 臨時報告書「第127期定時株主総会における議決権行使結果」
  • DIC 有価証券報告書「第128期(2025年12月期)【関連当事者情報】」

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