富士電機メタウォーター発足:水環境事業を日本碍子の同事業と合併させ、連結子会社から持分法適用会社へ切り替えた選択

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時期 2007年11月
当時の社長 伊藤晴夫
論点 水環境事業の体制
概要

2007年11月9日、連結子会社の富士電機水環境システムズは、権利義務の全てを日本碍子の100%子会社であるNGK水環境システムズへ合併により承継させることを決議した。同月26日に合併契約を締結し、2008年4月1日、NGK水環境システムズを存続会社とする吸収合併でメタウォーターが発足した。

合併比率は1対1。富士電機の議決権所有割合は50.0%で、全額が富士電機システムズを通じた間接所有となった。水環境事業は連結子会社から持分法適用関連会社へ移り、連結の売上から外れた。

背景

水環境事業は2007年4月に富士電機システムズから吸収分割で富士電機水環境システムズへ移されたばかりだった。国内の上下水分野では富士電機が電気設備、日本碍子が機械設備にそれぞれ強みを持ち、どちらも単独では施設の一括受注に届かない。

合併新会社は電気と機械を揃えた「機電統合会社」として事業規模を拡大し、新製品や新技術の開発を強化するとした。世界的な水不足を背景に需要が高まる再生水・海水淡水化など、民需と海外への拡大も掲げている。

内容

新会社の資本金は7,500百万円、純資産は20,178百万円、総資産は65,962百万円(いずれも2008年3月末の両社単純合計)。合併比率はみずほ証券と野村證券がそれぞれディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法と類似会社比較法で算定し、両社の交渉で決めた。

富士電機ホールディングス・富士電機システムズ・日本碍子の三者がメタウォーターを共同で支配する基本協定書を締結し、その他に支配関係を示す一定の事実は存在しない。このため共同支配企業の形成と判断され、連結財務諸表上は持分法に準じた処理が適用された。

含意

持分法適用関連会社は富士物流・日本AEパワーシステムズと合わせ3社になり、共同支配企業に対する投資の金額は2008年3月期末の10,923百万円から翌期末には17,842百万円へ増えた。メタウォーターのファクタリング債務には、日本碍子との連帯保証9,503百万円が付いている。

2014年12月にメタウォーターは東京証券取引所市場第1部へ上場し、議決権所有割合は28.9%へ下がった。2015年3月期には上場に伴う持分変動利益4,843百万円を計上し、当期純利益279億78百万円は当時の過去最高益となっている。

筆者の見解

支配を対価に規模を買う

合併の相手は競合ではなく、隣の工程を持つ会社であった。上下水の施設は電気設備と機械設備を揃えて初めて一括で受注できるが、富士電機が持っていたのは電気の側だけで、2007年4月に分割したばかりの富士電機水環境システムズは単独では半分の会社にすぎない。1対1の合併比率と50.0%という持分は、どちらも相手を支配しないことを先に決めた形である。連結売上から水環境事業が消える代わりに、電気と機械を揃えた会社の半分を持つ。手放したのは支配で、買ったのは規模だったとみられる。

もっとも、折半は永くは続かなかった。2014年12月の上場で議決権所有割合は28.9%へ落ち、共同支配企業に対する投資の注記からもメタウォーターは外れる。2019年度には自己株式の公開買付けに応じて24.4%へ、2023年3月期以降は20.9%へと薄まった。上場に伴って計上した持分変動利益4,843百万円は、持分が減ったことによって生じた利益である。共同で支配するという入口の設計は、持分を現金に換えていく出口にもそのまま使われた、という読み方が成り立つだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年9月

合併の条件

科目 概要 備考
結合当事企業(存続会社) NGK水環境システムズ 日本碍子の100%子会社。合併と同時に商号をメタウォーターへ変更
結合当事企業(消滅会社) 富士電機水環境システムズ 富士電機システムズの100%子会社で、富士電機ホールディングスの連結子会社
対象となった事業 水環境事業 水処理分野の装置類・施設用電気設備の製造販売と、各種プラントの設計・施工・請負
企業結合の法的形式 吸収合併 決議したのは消滅会社となる富士電機水環境システムズの取締役会
合併の決議日 2007年11月9日
合併契約の締結日 2007年11月26日
効力発生日 2008年4月1日
合併比率 1対1 富士電機水環境システムズの普通株式1株にNGK水環境システムズの普通株式1株を割当て
合併比率の算定方法 ディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法と類似会社比較法 富士電機水環境システムズはみずほ証券を、NGK水環境システムズは野村證券を起用
新会社の商号 メタウォーター 本店は東京都港区虎ノ門四丁目3番1号。英文名はMETAWATER CO.,LTD.
新会社の資本金 7,500百万円
新会社の純資産の額 20,178百万円 2008年3月末現在の両社単純合計
新会社の総資産の額 65,962百万円 2008年3月末現在の両社単純合計
富士電機の議決権所有割合 50.0% 全額が富士電機システムズを通じた間接所有
会計上の取扱い 共同支配企業の形成 三者が共同支配の基本協定書を締結し、その他に支配関係を示す事実は存在しない
適用した会計処理 持分プーリング法に準じた処理 富士電機の連結財務諸表上は持分法に準じた処理を適用
連結の範囲の変動 連結子会社から持分法適用関連会社へ 持分法適用関連会社は富士物流・日本AEパワーシステムズと合わせ2社から3社へ
債務保証 9,503百万円 メタウォーターのファクタリング債務に対する日本碍子との連帯保証。2009年3月末

出所:富士電機ホールディングス 有価証券報告書 第132期(2008年3月期)【重要な後発事象】・第133期(2009年3月期)【企業結合等関係】【関係会社の状況】

富士電機:共同支配企業への投資と持分法による投資利益

(百万円) 共同支配企業に対する投資の金額持分法による投資利益 備考
2004年3月期 有価証券報告書を照合できていない
2005年3月期 △2,600 共同支配企業に対する投資の注記はまだ置かれていない
2006年3月期 △557 共同支配企業に対する投資の注記はまだ置かれていない
2007年3月期 10,62053 水環境事業は富士電機システムズの一部門で、まだ分割されていない
2008年3月期 10,923344 合併を決議した期。水環境事業は連結子会社のまま
2009年3月期 17,8421,905 メタウォーターが共同支配企業に加わった期。投資額は他社との合計
2010年3月期 19,1602,066
2011年3月期 20,9272,144
2012年3月期 22,6242,382
2013年3月期 13,0872,562 投資額が減ったが、合計額の内訳は開示されていない
2014年3月期 5,1102,348
共同支配企業への投資と持分法による投資利益
共同支配企業に対する投資の金額(百万円)持分法による投資利益(百万円)

出所:富士電機ホールディングス・富士電機 有価証券報告書 第130〜139期(連結貸借対照表関係・連結損益計算書)

富士電機:メタウォーターに対する議決権所有割合

(%) 議決権所有割合 備考
2009年3月期 50 発足初年度。全額が富士電機システムズを通じた間接所有
2010年3月期 50
2011年3月期 50
2012年3月期 50
2013年3月期 50
2014年3月期 50
2015年3月期 28.9 2014年12月に上場。メタウォーターの資本金は7,500から11,946百万円へ
2016年3月期 28.9
2017年3月期 28.9
2018年3月期 28.9
2019年3月期 28.9
2020年3月期 24.4 自己株式の公開買付けに応じ一部売却。売却代金7,484・売却益1,772百万円
2021年3月期 24.4
2022年3月期 24.3
2023年3月期 20.9
2024年3月期 20.9
2025年3月期 20.9

出所:富士電機ホールディングス・富士電機 有価証券報告書 第133〜149期【関係会社の状況】

同じ問いに直面した会社

資本提携と政策保有2005年住友ファーマ社名を変更し、化学系グループの一員へと位置づけを変える再編研究開発投資の原資確保と、単独経営の継続可否
2005年新日本石油国際石油開発との経営統合案への反対と、20%超まで持分を高めた対抗上流部門の戦略パートナーと、株主としての影響力
2001年フジクラ電力ケーブル事業の古河電工との合弁への移管と、15年後の国内事業の振り分け成熟事業の共同運営と再自前化
1999年横河電機36年続いた合弁の清算と、持分売却による単独経営への移行事業の選択と集中、投資財源の確保
2010年NSユナイテッド海運郵船系と新日鉄系の2社の統合による、NSユナイテッド海運の発足業界再編と資本系列
事業の売却と撤退2013年古河電工軽金属部門を担う連結子会社を統合新会社へ預け、支配ではなく持分で持ち続けた選択軽金属を自前で抱え続けるか、規模を取って持分へ退くか
2013年IHI造船子会社をユニバーサル造船と合併させ、祖業を持分法適用会社へ移した選択分社した造船事業の規模と、連結に抱え続けるかどうか
2024年三菱電機自動車機器事業を会社分割で切り出した三菱電機モビリティの設立と、外部資本への開放事業ポートフォリオと車載事業の体制
2008年三菱樹脂グループ3社との合併を通じた機能材料への事業構成の寄せグループに分散した機能材料事業の集約と、その受け皿をどの会社に置くか
2007年HOYA買収による事業ポートフォリオの入れ替えと収益源の組み替え事業ポートフォリオの入れ替え
出典・参考
  • 富士電機ホールディングス 有価証券報告書「第132期(2008年3月期)【重要な後発事象】」
  • 富士電機ホールディングス 有価証券報告書「第133期(2009年3月期)【企業結合等関係】」
  • 富士電機ホールディングス 有価証券報告書「第133期(2009年3月期)【関係会社の状況】【連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項】」
  • 富士電機 有価証券報告書「第139期(2015年3月期)【沿革】【連結損益計算書】」
  • 富士電機 有価証券報告書「第144期(2020年3月期)【関連当事者情報】」

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