ジェイ・パワーシステムズへの電力ケーブル譲渡(2001年・住友電工の決断)

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論点祖業の電力ケーブルを単独で持ち続けるか
住友電工:業績の推移
売上高(億円)当期純利益率(%)
創業以来の高圧電力ケーブルを日立電線との折半会社へ移管した祖業の切り出し

何をなぜ決めたか:創業以来の高圧電力ケーブルを日立電線との折半会社へ移管した祖業の切り出し

概要

2001年10月、住友電気工業は高圧電力用電線事業を株式会社ジェイ・パワーシステムズへ営業譲渡した。譲受会社は日立電線との折半出資で、住友電気工業の議決権比率は50%、持分法適用関連会社である。

移したのは高圧・特別高圧電力ケーブルの開発・製造・輸出で、2004年10月には国内電力会社向け販売事業も同社へ譲渡した。1897年の創業以来の本業のうち、電力会社向けの高圧領域を単独では持たない体制へ移した。

背景

1897年に住友伸銅場が銅電線の製造を開始して以来、電線ケーブルは住友電気工業の本業であり、1911年には住友伸銅場から電線製造業を分離してほぼあらゆる電線ケーブルの製造能力を持つに至っている。

1999年6月に社長へ上がった岡山紀男社長のもとで、事業を単位ごとに切り出す再編が続いた。同年7月にブレーキ・ABS事業を住友電工ブレーキシステムズへ営業譲渡し、同じ月に高分子機能製品事業を分社した住友電工ファインポリマーが営業を開始している。高圧電力用電線もその列に並ぶが、移管先が自社の子会社ではなく競合との折半会社だった点が他と違う。

内容

譲渡は2段階で進んだ。2001年10月に開発・製造・輸出を移し、2004年10月に国内電力会社向け販売事業を移して統合を終えている。ジェイ・パワーシステムズが担うのは、送配電用電力ケーブル、架空送電線及びそれらの付属品など関連システムの研究、開発、設計、製造、販売、工事及び輸出である。

同じ相手との組み合わせは電力ケーブルにとどまらない。2003年1月には、建設・電販向け電線事業を営業譲渡した住電日立ケーブル株式会社が営業を開始している。譲渡した事業の売上高と譲渡の対価は、会社の公表資料に記載がない。

含意

折半の形は13年続いた。2014年2月3日の取締役会で、日立電線を吸収合併した日立金属が持つ50%を取得する株式譲渡契約の締結を決議し、同年4月1日に取得原価18,060百万円で完全子会社としている。のれんは11,080百万円で、5年間の均等償却である。

一方、譲渡した高圧・特別高圧電力ケーブルをめぐっては2009年1月以降に海外の競争当局の調査が入り、2014年4月に欧州委員会が欧州競争法に違反する行為があったとする決定を行った。課徴金は住友電気工業が2,630千ユーロ、ジェイ・パワーシステムズが20,741千ユーロである。

いつ何が起きたか10件
考察:祖業を競合と半分ずつ抱えるという形
考察

考察:祖業を競合と半分ずつ抱えるという形

電線という祖業のうち、電力会社向けの高圧・特別高圧という最も古い事業を、自社単独で持つことをやめた判断である。ただし売却でも撤退でもなく、選ばれたのは競合との折半出資だった。国内の送配電投資が伸びなくなった市場で、生産と開発を1社に集約して重複を消しながら、事業そのものは半分持ち続ける。同じ時期にブレーキも高分子も特殊金属線も切り出しているが、それらの移管先はいずれも自社の子会社である。相手と分け合う方式をとったのは電力ケーブルだけで、ここだけは自社の努力では規模が足りないという読みがあったのだとみられる。

もっとも、折半という方式が最終形ではなかったことは、その後の13年が示している。2014年に日立金属の50%を9,030百万円で取得し、のれん11,080百万円を背負って100%に戻した。折半で始めた事業を、結局は単独で抱え直したことになる。同じ2014年4月、欧州委員会は譲渡したその製品分野で競争法違反の決定を下し、住友電気工業とジェイ・パワーシステムズの双方に課徴金を課した。事業を外へ出しても、そこで起きたことの責任までは外へ出ていかない。切り出しの13年は、そのことを含めて回収された期間だったといえるのではないか。

Yutaka Sugiura, 2026年9月
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図と表

住友電工:連結業績の推移

売上高(億円)当期純利益率(%)
住友電工:連結業績の推移
(億円)売上高経常利益当期純利益備考
1997年3月期12,629−3221997年3月期から2001年3月期は会社年鑑による。経常利益の記載がない
1998年3月期12,970−331
1999年3月期12,810−203岡山紀男氏が社長に就任する直前の期。前期から売上高・利益とも減少した
2000年3月期13,085−235
2001年3月期14,787−402
2002年3月期14,85038883高圧電力用電線事業を譲渡した期。ここから有価証券報告書の逐語で照合した
2003年3月期14,889206△199当期純損失198億9,200万円。退職給付会計の影響で自己資本利益率も△3.1%
2004年3月期15,424607256
2005年3月期17,402925365第2次譲渡の直後の期。自動車関連の伸びで売上高が1兆7,402億円へ
2006年3月期20,0711,132583
2007年3月期23,8441,454760
出所:住友電気工業 有価証券報告書 第136期(2006年3月期)・第137期(2007年3月期)【主要な経営指標等の推移】。百万円表示を億円未満四捨五入で換算した / 会社年鑑(1997年3月期〜2001年3月期の連結売上高と当期純利益)
出所:住友電気工業 有価証券報告書 第136期(2006年3月期)・第137期(2007年3月期)【主要な経営指標等の推移】。百万円表示を億円未満四捨五入で換算した / 会社年鑑(1997年3月期〜2001年3月期の連結売上高と当期純利益)

営業譲渡の条件

営業譲渡の条件
科目概要備考
譲受会社株式会社ジェイ・パワーシステムズ送配電用電力ケーブル、架空送電線と付属品など関連システムの研究から工事・輸出まで
譲渡の法的形式営業譲渡事業を新会社へ譲渡・統合する方式。会社分割による他事業の分社とは形式が異なる
出資の形日立電線との折半出資住友電気工業の議決権比率は50%。持分法適用関連会社として13年続いた
第1次譲渡2001年10月高圧・特別高圧電力ケーブルの開発・製造・輸出事業を譲渡・統合した
第2次譲渡2004年10月国内電力会社向け販売事業を譲渡し、この分野の統合を終えた
譲渡した事業の売上高記載なし譲渡当時の有価証券報告書は手元になく、後年の開示にも規模の記載がない
譲渡の対価・譲渡損益記載なし会社の公表資料に金額の記載がない
譲受会社の資本金8,000百万円2015年3月期の関係会社の状況。本店は東京都港区
追加取得の決議2014年2月3日取締役会が日立金属の持つ50%を取得する株式譲渡契約の締結を決議した
企業結合日2014年4月1日現金を対価とする株式取得。連結した業績は同日から2015年3月31日まで
取得した議決権比率50%→100%企業結合日前に所有していた50%に、同日取得した50%を加えた
取得原価18,060百万円結合日前に保有していた株式の時価9,030百万円と、同日取得した株式の時価9,030百万円
段階取得に係る差額5,797百万円取得原価と、取得するに至った取引ごとの取得原価の合計額との差額
のれん11,080百万円5年間の均等償却。取得原価が資産と負債に配分された純額を上回った超過額
受け入れた資産合計57,368百万円流動資産49,099百万円、固定資産8,269百万円
引き受けた負債合計50,388百万円流動負債46,960百万円、固定負債3,428百万円
同じ相手との別の再編住電日立ケーブル株式会社建設・電販向け電線事業を営業譲渡して2003年1月に営業開始。2014年11月に連結子会社化
出所:住友電気工業 有価証券報告書 第136期(2006年3月期)【沿革】 / 第144期(2014年3月期)【事業等のリスク】【経営上の重要な契約等】 / 第145期(2015年3月期)【企業結合等関係】【関係会社の状況】
出所:住友電気工業 有価証券報告書 第136期(2006年3月期)【沿革】 / 第144期(2014年3月期)【事業等のリスク】【経営上の重要な契約等】 / 第145期(2015年3月期)【企業結合等関係】【関係会社の状況】
参考文献

参考文献

参考
  • 住友電気工業 有価証券報告書「第136期(2006年3月期)【沿革】【主要な経営指標等の推移】」
  • 住友電気工業 有価証券報告書「第137期(2007年3月期)【主要な経営指標等の推移】」
  • 住友電気工業 有価証券報告書「第144期(2014年3月期)【事業等のリスク】【経営上の重要な契約等】」
  • 住友電気工業 有価証券報告書「第145期(2015年3月期)【企業結合等関係】【関係会社の状況】」
  • 住友電気工業 有価証券報告書「第136期(2006年3月期)【役員の状況】」

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