ドリームキャスト製造中止(2001年・セガサミーHDの決断)

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論点 自社のゲーム機を持ち続けるか
セガサミーHD:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)
家庭用ハード事業からの撤退と、他社ゲーム機向けソフトへの転換

何をなぜ決めたか:家庭用ハード事業からの撤退と、他社ゲーム機向けソフトへの転換

概要

2001年1月31日、セガの取締役会はドリームキャストの製造中止を決め、経営資源をコンテンツ事業とアミューズメント事業に集中する方針を定めた。セガが家庭用ゲーム機の市場に参入したのは1983年で、18年続けたハード事業からの撤退となる。同じ取締役会では、代表取締役会長兼社長の大川功氏が申し出た私財の贈与も受け入れた。

撤退の目的は、会社を「ハードの製造・販売業」から「ソフトとサービス業」へ変えることにあった。ソフトは、ソニー・コンピュータエンタテインメントのプレイステーション2、マイクロソフトのXbox、任天堂のゲームキューブといった他社のゲーム機へ供給する。

背景

不振はドリームキャストの前から続いていた。家庭用ゲーム機を扱うコンシューマ部門は、1998年3月期に営業損失32,128百万円、1999年3月期に10,480百万円を計上している。1998年に国内で発売したドリームキャストは、1999年9月に米国、10月に欧州でも発売した。2000年3月期のコンシューマ部門の売上高は186,189百万円と前期の2倍を超えたが、営業損失も43,032百万円へ膨らんだ。

2000年11月、セガは社名を株式会社セガ・エンタープライゼスから株式会社セガへ改め、新しい経営方針を示した。大川功氏がCEO、佐藤秀樹副社長がCOOを務める体制を構築し、「プロダクト・プロバイダー」から「フォーマット・プロバイダー」への転換を掲げた。この時点の計画は、ドリームキャストの設計をライセンスで他の機器へ広げ、ハードの規格そのものは残すものだった。

内容

撤退の費用は2001年3月期に一度に計上した。ドリームキャスト本体と周辺機器を中心とするたな卸資産等処分損52,364百万円を含め、特別損失は81,137百万円に上った。同じ期の特別利益78,380百万円の大半は、大川功氏からの個人財産受贈益77,913百万円である。贈与された資産は自己株式33,573百万円、投資有価証券57,524百万円などの計108,564百万円で、短期借入金など30,651百万円の負債も引き継いだ。

事業の組み替えには数値目標を付けた。2002年3月期に連結営業損益とフリーキャッシュフローを黒字にし、2004年3月期までにROE15%以上、株主資本比率50%以上、有利子負債650億円の削減を達成する計画である。セガ本体の人員は1,081名から700名体制へ縮小し、2001年9月には806名になった。欧米のネットワーク事業では、海外のISP事業から撤退した。

含意

撤退の翌期、損益は早く戻った。2001年9月中間期に連結営業利益5,779百万円を計上し、前年同期の営業損失28,153百万円から黒字に転じた。2002年3月期は連結営業利益14,201百万円、コンシューマ事業も営業利益5,578百万円となった。ドリームキャスト本体の在庫は値下げとソフトとの連動販売で売り切り、プレイステーション2向けには14タイトル計350万本を販売した。ただし当期純損益は17,829百万円の赤字で、中間期に受贈資産を中心とする投資有価証券の評価損24,934百万円を計上していた。

ソフトメーカーとしての採算は安定しなかった。マルチプラットフォームへ本格的に移行した2003年3月期、他社との時間差を埋められず、市場に合うソフトも適時に供給できなかったため、コンシューマ事業は営業損失8,570百万円を計上した。2004年3月期も同事業は28億円の営業損失だった。2004年10月、セガはサミーとの株式移転でセガサミーホールディングスの子会社となった。

いつ何が起きたか 12件
考察:損失は止めたが、ソフトへの転身は未完
考察

考察:損失は止めたが、ソフトへの転身は未完

なぜ2001年1月だったのか。コンシューマ部門の営業損失は1998年3月期から続いており、採算だけを見れば、撤退はもっと早く決められたはずである。それでも踏み切れなかったのは、ハード事業から撤退すれば、自社のソフトの販売を他社のゲーム機に依存することになるからだろう。2000年11月の方針でも、セガはドリームキャストの規格を他の機器へ広げて残そうとしていた。2000年3月期に部門の営業損失が430億円まで膨らみ、規格を残す計画の前提が崩れたとみられる。

もっとも、撤退を一度に決められたのは、損失を埋める資金が同じ日に用意されたからでもある。特別損失81,137百万円に対し、大川功氏の私財贈与による受贈益は77,913百万円あった。会長兼社長の個人資産が、撤退の判断を支える条件になっていたことになる。ただし、贈与の中身は自己株式と投資有価証券が中心で、株価が下がれば価値も減る。実際に翌期の中間期には、受贈資産を中心に投資有価証券の評価損を計上した。支えそのものが相場に左右される構造だった。

結果からみると、この撤退は部分的な成功だった。赤字を止める効果ははっきり出た。連結営業損益は2002年3月期に142億円の黒字へ転じ、2004年3月期まで黒字を保った。一方、ソフトで収益を上げる会社への転身は計画を下回った。コンシューマ事業は2003年3月期に86億円、2004年3月期に28億円の営業損失を計上している。ハード撤退は損失の源を断った。しかし、他社のゲーム機向けソフトで競争優位を確立する前に、セガは2004年10月にサミーとの統合へ進んだ。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

セガサミーHD:連結業績の推移

売上高(億円)営業利益率(%)

営業損益は撤退の翌期に142億円の黒字へ転じた

セガサミーHD:連結業績の推移
(億円) 売上高営業利益当期純利益 備考
1998年3月期 3,316△140△356
1999年3月期 2,66221△429
2000年3月期 3,391△404△429 1999年9月に米国、10月に欧州でドリームキャストを発売
2001年3月期 2,429△520△517 2001年1月に製造中止を決定。たな卸資産等処分損523億円を計上
2002年3月期 2,063142△178 受贈資産を中心に投資有価証券の評価損を計上
2003年3月期 1,9729331
2004年3月期 1,91314588
出所:セガ ANNUAL REPORT 2000・2001【連結財務ハイライト】(百万円を億円に四捨五入) / セガ 平成14年3月期・平成15年3月期 決算短信(連結)【連結経営成績】 / セガ 第46期連結決算説明用補足資料(2004年5月19日)
出所:セガ ANNUAL REPORT 2000・2001【連結財務ハイライト】(百万円を億円に四捨五入) / セガ 平成14年3月期・平成15年3月期 決算短信(連結)【連結経営成績】 / セガ 第46期連結決算説明用補足資料(2004年5月19日)

セガサミーHD:コンシューマ事業の売上高と営業損益

コンシューマ事業の売上高(億円)コンシューマ事業の営業利益率(%)

撤退前の4期で営業損失は累計1,548億円に達した

セガサミーHD:コンシューマ事業の売上高と営業損益
(億円) コンシューマ事業の売上高コンシューマ事業の営業利益 備考
1998年3月期 1,145△321 2001年3月期までの区分名はコンシューマ機器販売
1999年3月期 847△105
2000年3月期 1,862△430
2001年3月期 1,158△692 ドリームキャストのハード販売は339万台。累計は820万台
2002年3月期 85156 ドリームキャスト本体の在庫を売り切り、PS2向けに350万本を販売
2003年3月期 665△86 マルチプラットフォームへ本格的に移行した1年目
2004年3月期 610△28
出所:セガ ANNUAL REPORT 2000・2001【セグメント情報】(百万円を億円に四捨五入) / セガ 平成14年3月期・平成15年3月期 決算短信(連結)【セグメント情報】 / セガ 第46期連結決算説明用補足資料(2004年5月19日)【事業別売上高・営業利益の内訳】
出所:セガ ANNUAL REPORT 2000・2001【セグメント情報】(百万円を億円に四捨五入) / セガ 平成14年3月期・平成15年3月期 決算短信(連結)【セグメント情報】 / セガ 第46期連結決算説明用補足資料(2004年5月19日)【事業別売上高・営業利益の内訳】
参考文献

参考文献

参考
  • セガ ANNUAL REPORT 2001(2001年3月期)【連結財務諸表注記 22 事業構成の再編と資産の贈与】
  • セガ ANNUAL REPORT 2001(2001年3月期)【事業の概況】
  • セガ 平成14年3月期 中間決算短信(連結)(2001年11月20日)【経営成績】
  • セガ ANNUAL REPORT 2001(2001年3月期)【コンテンツ戦略】
  • セガ ANNUAL REPORT 2000(2000年3月期)【セグメント情報】
  • セガ ANNUAL REPORT 2000(2000年3月期)【業績の概況】
  • セガ 事業計画説明会資料「今後の経営方針と経営体制について」(2000年11月1日)
  • セガ 平成14年3月期 中間決算短信(連結)(2001年11月20日)【中間連結損益計算書】
  • セガ 平成14年3月期 中間決算短信(連結)(2001年11月20日)【中間連結損益計算書関係】
  • セガ ANNUAL REPORT 2001(2001年3月期)【構造改革】
  • セガ 決算説明会資料「再生から成長へ〜構造改革の現状とこれから〜」(2001年11月20日)【構造改革の進捗状況】
  • セガ 平成14年3月期 決算短信(連結)(2002年5月17日)【経営成績】
  • セガ 平成15年3月期 決算短信(連結)(2003年5月19日)【経営成績】
  • セガ 第46期連結決算説明用補足資料(2004年5月19日)【事業別売上高・営業利益の内訳】
  • セガ ANNUAL REPORT 2000・2001【連結財務ハイライト】(百万円を億円に四捨五入)
  • セガ 平成14年3月期・平成15年3月期 決算短信(連結)【連結経営成績】
  • セガ 第46期連結決算説明用補足資料(2004年5月19日)
  • セガ ANNUAL REPORT 2000・2001【セグメント情報】(百万円を億円に四捨五入)
  • セガ 平成14年3月期・平成15年3月期 決算短信(連結)【セグメント情報】
  • セガ 説明会資料「今後の経営方針と経営体制について(事業計画説明会)」
  • セガ 決算短信「平成14年3月期 中間決算短信(連結)」
  • セガ 説明会資料「再生から成長へ〜構造改革の現状とこれから〜」
  • セガ 決算短信「平成14年3月期 決算短信(連結)」
  • セガ 決算短信「平成15年3月期 決算短信(連結)」
  • セガ 決算説明会資料「第46期連結決算説明用補足資料」
  • セガ アニュアルレポート「ANNUAL REPORT 2000」
  • セガ アニュアルレポート「ANNUAL REPORT 2001」
  • セガサミーホールディングス アニュアルレポート「アニュアルレポート2009」
  • セガサミーホールディングス 有価証券報告書「第1期(2005年3月期)【沿革】」

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