ハウス食品の子会社化(2015年・壱番屋の決断)

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論点創業家の持ち株を誰に引き継ぐか
壱番屋:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)
ルウの供給元を親会社に迎え、上場を残して創業家の株を託す決断

何をなぜ決めたか:ルウの供給元を親会社に迎え、上場を残して創業家の株を託す決断

概要

2015年10月30日、壱番屋の取締役会は、ハウス食品グループ本社による株式の公開買付け(TOB)に賛同すると決議した。買付価格は1株6,000円で、ハウス食品の所有割合を19.55%から51.00%へ引き上げ、壱番屋を連結子会社にする内容である。TOBは12月に成立し、壱番屋は12月8日にハウス食品グループ本社の連結子会社となった。

上場は残した。ハウス食品は上場の維持を前提に買付予定数の上限を5,021,100株とし、壱番屋はその後も上場を続けて2022年4月に東証プライム市場へ移った。創業家の資産管理会社ベストライフと宗次德二氏・宗次直美氏は、持ち株23.17%すべてを応募する契約をハウス食品と結んだ。

背景

ハウス食品と壱番屋は、TOBの前から取引と資本で結ばれていた。ハウス食品は1998年10月に壱番屋株5,000株を取得し、2002年1月には310万株を買い増して、所有割合19.50%の持分法適用関連会社とした。壱番屋にとってハウス食品は、主力の店舗事業に欠かせないカレースパイスの供給元であり、工場の生産技術や食材の安全性の分析でも協力を受けていた。

TOBの直前、筆頭株主は創業家の資産管理会社ベストライフ(19.97%)で、ハウス食品(19.55%)を上回っていた。業績は伸びており、2015年5月期の連結売上高は44,014百万円、経常利益は4,717百万円だった。両社が連携のあり方を協議し始めたのは、同年7月である。

内容

買付価格の6,000円は、公表前営業日の終値5,370円に11.7%を上乗せした水準である。応募は6,017,932株と上限の5,021,100株を超え、ハウス食品はあん分比例で買い付けた。このため創業家は持ち株の全部を売れず、ベストライフは2016年5月末時点でも3.31%を持つ第2位の株主として残った。

両社が掲げた協業は、メニュー開発と販促、品質保証、原材料の調達と生産、海外事業、新規事業の5つである。子会社となった2016年5月期、壱番屋は親会社株式売却益399百万円を特別利益に計上し、経常利益5,084百万円・親会社株主に帰属する当期純利益3,431百万円と、ともに過去最高を更新した。

含意

子会社化の後、壱番屋は体制を組み替えた。2016年8月の定時株主総会で決算期を5月末から2月末へ改め、2017年3月にはハウス食品グループが持っていた中国と台湾の店舗運営会社を取得して連結子会社とした。一方、子会社化から約1か月後の2016年1月には、廃棄を委託したビーフカツを産業廃棄物処理業者が不正に転売していたことが判明した。

2026年2月期の連結売上高は65,518百万円と、子会社化の直前の2015年5月期の約1.5倍になった。一方、経常利益は4,985百万円にとどまった。国内のCoCo壱番屋は1,205店、海外は218店で、海外は2016年5月末の162店から増加した。2026年8月、ハウス食品グループ本社は壱番屋の非公開化を含む選択肢を検討していると開示した。

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考察:事情を最も知る会社に預けた株
考察

考察:事情を最も知る会社に預けた株

なぜ壱番屋は、ハウス食品の子会社になることを受け入れたのか。業績は伸びており、資金に困っていたわけではない。理由は、筆頭株主である創業家の持ち株の行き先を、先に決めておく必要があったからだと考えられる。19.97%の株が市場や見知らぬ買い手に渡れば、経営の方針が揺らぐおそれがある。その点、ハウス食品は1998年から株主として関わり、カレースパイスの供給元でもあった。株を引き受ける相手として、壱番屋の事情をこれほど知る会社はほかになかった。

もっとも、相手が取引先であることは、経営の独立を譲ることでもあった。親会社が51%を持てば、壱番屋の重要な判断には親会社の意向が加わる。実際、子会社化の後には決算期を改め、親会社のグループが持っていた中国と台湾の店も引き受けた。上場を残したことで少数株主は残ったが、経営の主導権は創業家から親会社へ移った。上場を続けながら過半を親会社が持つ体制は、独立と統合の間に置かれた中間の姿だったのだろう。創業家の株の行き先は決まったが、その代わりに、親会社の方針が壱番屋の方針に重なる関係を受け入れたことになる。

子会社化から10年がたち、答えは数字に出ている。2026年2月期の売上高は2015年5月期の約1.5倍に増加し、海外の店は162店から218店に広がった。創業家の株の行き先を決めるという目的も果たした。ただし経常利益は4,985百万円で、子会社となった期の5,084百万円を下回る。売上は伸びても、利益は10年前の水準にとどまった。さらに2026年8月には、親会社が非公開化を含む選択肢の検討を開示した。上場を残した中間の体制も、長くは続かない可能性がある。この子会社化は、株の承継と規模の拡大では成功し、利益の伸びでは成果を出せなかった、部分的な成功である。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
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図と表

壱番屋:売上高と経常利益の推移

売上高(百万円)経常利益率(%)
壱番屋:売上高と経常利益の推移
(百万円)売上高経常利益備考
2012年5月期39,7964,321
2013年5月期39,9894,168
2014年5月期42,5664,453
2015年5月期44,0144,717
2016年5月期44,9095,0842015年12月8日にハウス食品グループ本社の連結子会社となった
2017年2月期33,6123,819決算期変更で9か月の変則決算
2018年2月期49,4724,8642017年3月に中国・台湾の店舗運営会社を連結した
2019年2月期50,2144,659
2020年2月期51,4955,424
2021年2月期44,2463,104
出所:壱番屋 有価証券報告書 第34期(2016年5月期)【主要な経営指標等の推移】 / 壱番屋 有価証券報告書 第39期(2021年2月期)【主要な経営指標等の推移】
出所:壱番屋 有価証券報告書 第34期(2016年5月期)【主要な経営指標等の推移】 / 壱番屋 有価証券報告書 第39期(2021年2月期)【主要な経営指標等の推移】
参考文献

参考文献

参考
  • 壱番屋 有価証券報告書 第34期(2016年5月期)【事業の内容】
  • 壱番屋 有価証券報告書 第44期(2026年2月期)【沿革】
  • 壱番屋 有価証券報告書 第34期(2016年5月期)【主要な経営指標等の推移】
  • 壱番屋 有価証券報告書 第34期(2016年5月期)【大株主の状況】
  • 壱番屋 有価証券報告書 第34期(2016年5月期)【業績等の概要】
  • 壱番屋 有価証券報告書 第35期(2017年2月期)【経理の状況】
  • 壱番屋 有価証券報告書 第44期(2026年2月期)【主要な経営指標等の推移】
  • 壱番屋 有価証券報告書 第44期(2026年2月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
  • 壱番屋 有価証券報告書 第35期(2017年2月期)【主要な経営指標等の推移】
  • ハウス食品グループ本社 適時開示「株式会社壱番屋株式に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」
  • ハウス食品グループ本社 適時開示「株式会社壱番屋株式(証券コード7630)に対する公開買付けの結果に関するお知らせ及び子会社の異動に関するお知らせ」
  • 壱番屋 ニュースリリース「産業廃棄物処理業者による、当社製品(ビーフカツ)不正転売のお知らせ」
  • ハウス食品グループ本社 適時開示「当社に関する一部報道について」
  • 壱番屋 有価証券報告書「第34期(2016年5月期)【事業の内容】【大株主の状況】【業績等の概要】【主要な経営指標等の推移】」
  • 壱番屋 有価証券報告書「第35期(2017年2月期)【経理の状況】【主要な経営指標等の推移】」
  • 壱番屋 有価証券報告書「第36期(2018年2月期)【事業の内容】」
  • 壱番屋 有価証券報告書「第39期(2021年2月期)【主要な経営指標等の推移】」
  • 壱番屋 有価証券報告書「第44期(2026年2月期)【沿革】【主要な経営指標等の推移】【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】」

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