タマホーム 玉木康裕氏の社長退任と玉木伸弥氏への継承 創業者による経営から、生え抜き第二世代への世代交代

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時期 2018年8月
当時の社長 玉木康裕
論点 事業承継と第二世代体制の確立
何をなぜ決めたか
概要

2018年8月、創業者・玉木康裕氏が2015年11月から兼ねてきた社長職を譲って代表取締役会長の専任となり、長男で生え抜き入社の玉木伸弥氏が代表取締役副社長兼COOから代表取締役社長へ昇格した。玉木康裕氏は会長として代表権を残し、代表取締役が会長と社長の2名という体制は変わっていない。創業20年、上場5年の節目での同族第二世代への交代だった。

背景

2013年の東証一部上場直後、2014年4月の消費増税による住宅市場の反動減でタマホームはFY14(2015年5月期)・FY15(2016年5月期)の2期連続で純損失を計上した。低価格訴求モデルの弱さと出店ピーク期の固定費が収益を圧迫し、体制刷新が課題になった。

内容

玉木伸弥氏は2001年6月入社の生え抜きで、広告宣伝部長、わくわくドキドキ本部長、関連事業本部長を経て、2014年7月に代表取締役副社長兼COOとなり経営改革委員会を担当していた。2018年8月、39歳で代表取締役社長に就任し、2015年8月から兼ねる営業本部長も引き続き担っている。任意の指名委員会は設置されておらず、社外取締役2名を含む11名の取締役会と定時株主総会の決議による交代で、取締役の任期は2年である。前任のCEO、後任のCOOという呼称はこの交代でいずれも消えた。

含意

創業者個人の問題意識を出発点とした第一期から、生え抜き第二世代が経営する第二期への切り替えとなった。商品単価引き上げと店舗整理、環境性能対応の商品標準化が進み、コロナ巣ごもり需要のFY22(2023年5月期)に売上ピーク2,560億円を記録した。

いつ何が起きたか 6件
筆者の見解
筆者の見解

好調に戻してから渡す——創業者が選んだ承継のタイミング

この承継判断の特徴は、危機のただ中ではなく、回復の軌道が見えた段階で創業者が第一線を退いた点にある。玉木康裕氏は上場直後の2期連続赤字に対し、外部から経営者を招くのではなく、生え抜きの長男・玉木伸弥氏を副社長兼COOに据えて4年間の経営改革を任せた。商品単価引き上げと店舗整理で2018年5月期の黒字回復が固まったところで社長を譲り、みずからは代表権を持つ会長に専念した。赤字を第二世代に押し付けて交代させるのではなく、回復の道筋を自らの体制で付けてから渡すという順序をとったと推察される。

広告宣伝畑で育った玉木伸弥氏へ経営を託したことは、低価格の量販というモデルの延長線上で、ブランドと商品ラインの立て直しを担わせる選択でもあった。承継後にコロナ需要も重なって売上は過去最高へ伸びたが、2025年5月期の急減が示すように、住宅需要の変動を受けやすい事業の性格は第二世代でも変わっていない。創業者の一人称の問題意識で立ち上げた会社を、その価値観を共有する生え抜き第二世代へどう引き継ぐか——タマホームの2018年の交代は、同族企業の承継を、業績回復のタイミングと組み合わせて設計した事例として読める。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
経緯と対応

経緯と対応

科目 概要 備考
社長交代の時期 2018年8月 第20期定時株主総会は2018年8月30日開催。取締役の新しい任期はその終結の時から
前任の役職の変化 代表取締役会長兼社長兼CEO → 代表取締役会長 玉木康裕氏。2015年11月から会長と社長とCEOを兼ね、この交代で会長専任となった
後任の役職の変化 代表取締役副社長兼COO → 代表取締役社長 玉木伸弥氏。2015年8月から兼ねる営業本部長は交代後も継続している
CEO職の扱い 交代後は置いていない 前任のCEO、後任のCOOの呼称はいずれも2018年8月で終わっている
前任の代表権 会長として保持 玉木康裕氏は代表取締役会長。代表取締役は交代後も会長と社長の2名体制
後任の入社 2001年6月 広告宣伝部長、わくわくドキドキ本部長、関連事業本部長などを経た生え抜き
後任の就任時の年齢 39歳 1978年10月13日生まれ。2014年7月の代表取締役副社長兼COO就任時は35歳
前任の退任時の年齢 68歳 1950年1月4日生まれ。1998年6月の設立から20年にわたり社長を務めた
血縁関係 玉木伸弥氏は玉木康裕氏の長男 次男の玉木克弥氏は取締役副社長兼経営統括本部長として在任している
後任の議決権保有割合 直接2.9%・間接22.7% 2018年5月期の関連当事者情報。玉木康裕氏の直接保有も2.9%で変動はない
指名委員会の関与 任意の指名委員会は設置していない 監査役会設置会社。取締役会は社外取締役2名を含む11名で構成されている
取締役の任期 2年 2018年5月期に係る定時株主総会終結の時から2020年5月期の同総会終結の時まで
交代の理由 会社の公表資料に記載なし 【役員の状況】【沿革】はいずれも役職の異動を記すにとどまっている

出所:タマホーム 有価証券報告書 第20期(2018年5月期)【役員の状況】【関連当事者情報】・第21期(2019年5月期)【役員の状況】

連結業績の推移

タマホーム:連結業績の推移

(百万円) 売上高営業利益親会社株主に帰属する当期純利益 備考
2013年5月期 152,3235,2862,648 2013年3月に東証一部・福岡証券取引所本則市場へ上場した期
2014年5月期 169,5284,5801,717
2015年5月期 149,5702,284△641 消費税率引き上げ後の反動減。上場後初の純損失
2016年5月期 138,3791,803△446 2期連続の純損失。売上高は2期で310億円減った
2017年5月期 157,0013,901901 純損益が黒字化した期
2018年5月期 167,9154,6532,047 この期の有価証券報告書に玉木伸弥氏が代表取締役社長として記載されている
2019年5月期 186,8747,3663,934 承継後はじめての通期
2020年5月期 209,2079,8735,109
2021年5月期 218,09210,9997,168
2022年5月期 240,76011,8938,283
2023年5月期 256,06513,2648,715 売上高・営業利益・純利益がいずれも過去最高
連結売上高と純利益率
売上高(百万円)親会社株主に帰属する当期純利益率(%)

出所:タマホーム 有価証券報告書 第15〜25期(主要な経営指標等の推移・連結損益計算書)

従業員数の推移

タマホーム:従業員数の推移

(人) 連結従業員数提出会社の従業員数 備考
2013年5月期 2,8982,739
2014年5月期 3,1662,984
2015年5月期 3,0152,852
2016年5月期 2,9662,730 純損失が続いた2期で連結は200名減った
2017年5月期 3,1962,948
2018年5月期 3,4083,172 販売増に向けた採用強化で増加。住宅事業が2,694名を占める
2019年5月期 3,5383,348
2020年5月期 3,6103,443 承継後の最多
2021年5月期 3,4913,319
2022年5月期 3,3693,198
2023年5月期 3,3293,153
提出会社と連結子会社の従業員数
提出会社の従業員数(人)連結子会社の従業員数(人)

出所:タマホーム 有価証券報告書 第15〜25期【従業員の状況】

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参考文献
出典・参考

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