米Central Conveyorの買収(2018年・椿本チエインの決断)

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椿本チエイン:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)
自動車業界向け搬送設備の取り込みによる米国マテハンの拡大2018年4月24日、椿本チエインは米国の持株会社U.S. Tsubaki Holdingsを通じ、搬送設備のインテグレーターCentral Conveyor Company(CCC)と同社子会社5社の全持分を取得する契約を締結した。6月15日に持分100%を取得し、取得原価は現金で154億8,600万円、のれんは56億4,200万円で12年の均等償却とした。

何をなぜ決めたか:自動車業界向け搬送設備の取り込みによる米国マテハンの拡大

概要

2018年4月24日、椿本チエインは米国の持株会社U.S. Tsubaki Holdingsを通じ、搬送設備のインテグレーターCentral Conveyor Company(CCC)と同社子会社5社の全持分を取得する契約を締結した。6月15日に持分100%を取得し、取得原価は現金で154億8,600万円、のれんは56億4,200万円で12年の均等償却とした。

その後、2019年3月期・2023年3月期・2026年3月期の3度にわたり、CCCの取得時に計上したのれん・商標権・顧客関連資産で計91億200万円の減損を計上した。2026年10月30日の取締役会でCCCの解散・清算を決議し、清算結了は2027年度中の予定で、清算はまだ終わっていない。

背景

米国では1983年7月にTSUBAKI CONVEYOR OF AMERICAを設立し、マテハン事業の拠点を開設していた。椿本チエインは2017年4月から4か年の「中期経営計画2020」を進めていた。米国では、チェーン事業と自動車部品事業に加えてマテハン事業を拡大し、米国における総合機械メーカーを目指すと掲げていた。マテハンでは2012年8月に、米Mayfran International他2社の全出資持分を取得して連結子会社としていた。

ただし、買収直前の2018年3月期のマテハン事業は売上高437億2,400万円に対し、営業利益は4億1,600万円にとどまり、米国や欧州の売上減少で採算が悪化していた。CCCの2017年12月期の連結売上高は2億4,226万9,000米ドル、連結営業利益は1,995万米ドルで、同期の数値には2017年3月に買収した会社が含まれる。同業のTHKは2015年4月21日にTRW AutomotiveのL&S事業の譲受を決議し、8月31日に現金を対価とする株式取得と事業譲受で、米ミシガン州などの4社を取得していた。

内容

CCCは1993年設立で、米国ミシガン州Wixomに本社を置き、米国自動車業界などに優良な顧客基盤を持つ搬送設備のインテグレーターである。買収のねらいとして、米国でのマテハンビジネスの強化、マテハンのネットワークを生かしたビジネスの拡大、つばきのパワトラ商品の販売拡大の三つを挙げた。

受け入れた資産は158億4,900万円、負債は59億9,500万円で、のれんとは別に、顧客関連資産56億6,100万円と商標権14億7,600万円を含む無形固定資産77億7,000万円を配分した。持分取得のための支出は154億5,700万円で、資金は借入で調達した。

含意

連結初年度の2019年3月期、マテハン事業の売上高は前期比40.3%増の613億5,400万円となったが、米国子会社の費用増で営業利益は4億200万円にとどまった。2021年3月期には米州の自動車業界向けシステムの工事費用増で22億200万円、2024年3月期には米国南部の猛暑影響などによる工事の遅れも重なって11億6,500万円の営業損失を計上した。

損失の原因は、米国自動車メーカー向けの超大型案件で、コロナ禍による人件費の高騰と工期の長期化が重なったことにある。木村隆利社長は2023年の統合報告書で『減損処理に伴う企業価値毀損があり、当社の株主の皆さまにご心配をおかけし、深くお詫び申し上げます』と詫び、問題案件の納品は完了したと述べた。2026年3月期にも商標権と顧客関連資産42億1,400万円を減損し、同年10月に解散・清算を決めた。

いつ何が起きたか12件
筆者考察
考察

考察:製品の系譜に継いだ工事の事業

この決断は、自社製品の周辺にある事業を海外で買収するとき、製品をつくる会社を取得するか、設備を組み上げて納める会社を取得するかという問いへの答えである。椿本チエインは、米国自動車業界に顧客基盤を持つ搬送設備のインテグレーターCCCを選び、取得原価154億8,600万円を現金で支払った。減損は3度で計91億200万円に達し、2026年10月30日には解散・清算を決議している。清算結了は2027年度中の予定だが、米国で総合機械メーカーを目指す足場としては、この買収は失敗に終わったと判じてよい。

米国のマテハンには、1983年7月にTSUBAKI CONVEYOR OF AMERICAを設立して以来の拠点があった。2012年8月にはMayfran International他2社の全出資持分を取得している。CCCの買収は、この製品の系譜に、設計から工事までを請け負うインテグレーターを継ぎ足す決断だった。2024年3月期のマテハン事業では、米州の金属切屑搬送・クーラント処理装置の販売が伸びる一方、米国子会社では工事進行の遅れが損失を生んだ。製品の系譜は残り、継ぎ足した工事の事業だけが清算に向かったとみられる。

同業のTHKは2015年4月21日に、TRW AutomotiveのL&S事業の譲受を決議し、8月31日に現金を対価とする株式取得と事業譲受で米ミシガン州などの4社を取得した。椿本チエインは3年後の2018年4月24日に契約し、6月15日に現金でCCCの全持分を取得している。どちらも米国の自動車産業に向けた現金による買収だが、取得したものが違う。THKが取得したのはL&S事業で、椿本チエインが取得したのは搬送・マテハンシステムの設計・製造・工事・販売を担う会社だった。工事を請け負う事業では、人件費の高騰と工期の長期化がそのまま損失になる。両社の違いの理由は、この受注の形にあると思われる。

Yutaka Sugiura, 2026年10月

数字で見る

椿本チエイン:マテハン事業セグメントの推移

椿本チエイン:マテハン事業セグメントの推移

売上高(百万円)営業利益率(%)

連結後の11期で、マテハン事業は3期の営業損失を計上した

椿本チエイン:マテハン事業セグメントの推移
(百万円)売上高営業利益備考
2014年3月期39,5031,192
2015年3月期45,1171,940
2016年3月期44,115659
2017年3月期40,697706
2018年3月期43,724416米国や欧州の売上減少で採算が悪化
2019年3月期61,354402CCCを第1四半期から連結。米国子会社の費用が増加
2020年3月期63,860647
2021年3月期53,279△2,202米州の自動車業界向けシステムの工事費用が増加
2022年3月期55,704799
2023年3月期60,940△888
2024年3月期65,240△1,165米国子会社で猛暑影響等による工事進行の遅れ
出所:椿本チエイン 有価証券報告書 第104期〜第114期(経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析)
出所:椿本チエイン 有価証券報告書 第104期〜第114期(経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析)
椿本チエイン:のれんと無形固定資産の推移

椿本チエイン:のれんと無形固定資産の推移

のれん(百万円)のれん以外の無形固定資産(百万円)
椿本チエイン:のれんと無形固定資産の推移
(百万円)のれん無形固定資産総資産備考
2014年3月期−5,807228,840のれんは連結貸借対照表に区分掲記がない
2015年3月期−5,132258,742
2016年3月期−4,352254,106
2017年3月期−3,841267,215
2018年3月期1532,968285,952のれんは第109期の前期欄
2019年3月期3,38712,787305,916CCCののれん5,642を計上し、1,924を減損
2020年3月期2,77311,361294,098
2021年3月期2,53310,695307,332
2022年3月期2,49610,700332,620
2023年3月期1,2439,081345,878CCCののれん2,426と商標権338を減損
2024年3月期1,2168,904391,298
出所:椿本チエイン 有価証券報告書 第104期〜第114期(連結貸借対照表)
出所:椿本チエイン 有価証券報告書 第104期〜第114期(連結貸借対照表)
参考文献

参考文献

参考

  • 椿本チエイン 有価証券報告書 第109期(2019年3月期)【企業結合等関係】
  • 椿本チエイン 有価証券報告書 第107期(2017年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
  • 椿本チエイン 有価証券報告書 第108期(2018年3月期)【重要な後発事象】
  • 椿本チエイン 有価証券報告書 第116期(2026年3月期)【沿革】
  • 椿本チエイン 有価証券報告書 第108期(2018年3月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
  • 椿本チエイン 有価証券報告書 第104期(2014年3月期)【沿革】
  • THK 有価証券報告書 第46期(2016年3月期)【経営上の重要な契約等】【企業結合等関係】
  • 椿本チエイン 2019年3月期 第2四半期決算説明会資料
  • 椿本チエイン 有価証券報告書 第109期(2019年3月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
  • 椿本チエイン 2019年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)
  • 椿本チエイン 有価証券報告書 第111期(2021年3月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
  • 椿本チエイン 有価証券報告書 第114期(2024年3月期)【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
  • 椿本チエイン TSUBAKI REPORT 2023(統合報告書)COOインタビュー
  • 椿本チエイン 有価証券報告書 第116期(2026年3月期)【連結損益計算書関係】 / 臨時報告書(2026年10月30日)
  • 椿本チエイン TSUBAKI REPORT 2023 COOインタビュー
  • 椿本チエイン 有価証券報告書 第109期(2019年3月期)【連結損益計算書関係】
  • 椿本チエイン 有価証券報告書 第114期(2024年3月期)【連結損益計算書関係】
  • 椿本チエイン 有価証券報告書 第116期(2026年3月期)【連結損益計算書関係】
  • 椿本チエイン 有価証券報告書 第104期〜第114期(経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析)
  • 椿本チエイン 有価証券報告書 第104期〜第114期(連結貸借対照表)
  • 椿本チエイン 適時開示「子会社の異動を伴う持分取得に関する契約締結のお知らせ」
  • 椿本チエイン 決算説明会資料「2019年3月期 第2四半期決算説明会」
  • 椿本チエイン 統合報告書「TSUBAKI REPORT 2023 COOインタビュー」
  • 椿本チエイン 臨時報告書「臨時報告書(特定子会社の異動)」
  • 椿本チエイン 有価証券報告書「第109期(2019年3月期)【企業結合等関係】【連結損益計算書関係】」
  • 椿本チエイン 有価証券報告書「第114期(2024年3月期)・第116期(2026年3月期)【連結損益計算書関係】」
  • 椿本チエイン 有価証券報告書「第104期〜第114期(連結貸借対照表、経営者による分析)」

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