この判断の中心にあるのは、提携解消という事故への対処ではなく、その前から社内にあった依存への危機感を、どの時点で解くかという時間の問題であった。ヤフー経由の集客はディップの成長を押し上げていたが、押し上げが強いほど、自社で人を集める力は育たない。通告はその依存を強制的に終わらせたにすぎず、経営として決めたのは、前提が変わった事業計画のまま公開市場へ出ないという一点にあったと推察される。念願の上場を承認取得後に自ら取り下げたことは、その一点を優先した結果を示している。
創業期のIBM提携から数えれば、ディップは他社の設置網やポータルに乗ることで、設備を持たずに事業を伸ばしてきた。借りた集客はいつか返すことになる——2003年12月の通告は、その請求書が予告なしに届いた場面にあたる。以後の同社はテレビCMで自社の媒体名を売り、求職者が直接訪れる媒体を作る方向へ資源を割いた。生成AIによる検索の変化が求人領域にも及ぶなかで、誰の画面を入口として求職者と出会うのかという問いは、形を変えてなお残っていると思われる。