株主要求と会社対応10件
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株主要求と会社対応
シルチェスターは、大林組の利益を本業と保有株式の配当に分け、それぞれに見合う還元を株主提案で迫った。名義の持株は2%に満たず、業績と資本配分について取締役会・経営陣と協議を重ねたうえで、特別配当の議案に進んだ。提案の理由に掲げた配当方針は、受取配当の全額とコア事業の純利益の半分を分配する式で、京都銀行の株主に向けた書簡と同種であった。ISSも賛成を推奨したが、議案は定時株主総会で否決された。
大林組は特別配当の提案を退けた一方、還元の拡大は自ら決めたDOEの枠組みで進めた。提案は他企業への提案とほぼ同じ計算方法で、会社ごとの事業計画や成長戦略を考慮していないと反論し、自己資本を基準とする判断軸を優先した。総会の後はPBRが1倍を下回ることを現状認識に挙げてDOEの目安を引き上げ、自己株式取得も重ねたが、開示は株主提案に触れず、特別配当を組み合わせる議論は行っていないとした。
要求と経緯要求2件・出来事10件
株主との対話:株主から会社に対する要求と経緯
| 種別 | 要求区分 | 日付 | 主体 | 対話区分 | やり取りの要旨 | 株主公表 | 会社公表 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 資本政策 | 配当方針 | 2022/03 | 意思決定 | 確定DOEの目安3% | — | ||
| 2023/04/25 | 書簡提案 | 要求受取配当100%と純利益50% | — | ||||
| 2024/03/04 | 意思決定 | 確定DOEの目安5% | — | ||||
| 特別配当 | 2023/04/25 | 株主提案 | 要求特別配当1株12円 | — | |||
| 2023/05/11 | 意思決定 | 確定事業計画を考慮しない提案 | — | ||||
| 2023/06/08 | 意思決定 | 確定ISSの賛成推奨に大林組は反対 | — | ||||
| 2023/06/28 | 株主総会 | 議案決議 | 否決株主提案の特別配当 | — | |||
| 2025/05/14 | 意思決定 | 確定DOEと特別配当の併用は議論せず | — | ||||
| 資本効率 | 2024/03/04 | 意思決定 | 確定ROEの目標10% | — | |||
| 自社株買い | 2025/02/10 | 意思決定 | 確定自社株買い取得上限300億円 | — | |||
| 2025/08/08 | 意思決定 | 確定自社株買い取得上限400億円 | — |
| 日付 | 主体 | 対話区分 | やり取りの要旨 | 株主公表 | 会社公表 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2022/03 | 意思決定 | 確定DOEの目安3% | — | ||
| 2023/04/25 | 書簡提案 | 要求受取配当100%と純利益50% | — | ||
| 株主提案 | 要求特別配当1株12円 | — | |||
| 2023/05/11 | 意思決定 | 確定事業計画を考慮しない提案 | — | ||
| 2023/06/08 | 意思決定 | 確定ISSの賛成推奨に大林組は反対 | — | ||
| 2023/06/28 | 株主総会 | 議案決議 | 否決株主提案の特別配当 | — | |
| 2024/03/04 | 意思決定 | 確定DOEの目安5% | — | ||
| 意思決定 | 確定ROEの目標10% | — | |||
| 2025/02/10 | 意思決定 | 確定自社株買い取得上限300億円 | — | ||
| 2025/05/14 | 意思決定 | 確定DOEと特別配当の併用は議論せず | — | ||
| 2025/08/08 | 意思決定 | 確定自社株買い取得上限400億円 | — |
年間配当=保有株式の受取配当×100%+コア事業の純利益×50%
会社側の主張:大林組
このDOE3%を目安とした配当方針は、「大林グループ中期経営計画2022」による向こう5年間の事業計画や企業価値向上のための成長投資戦略を勘案し、長期安定配当の維持を第一に、利益の蓄積による自己資本の充実を株主様に中長期的に還元する方針で策定したものです。
(中略)
一方、本株主提案は提案者が他企業に対して行った株主提案の理由・計算方法とほぼ同じ内容で配当の増額を要求するものであり、会社ごとに異なる事業計画や成長戦略が全く考慮されておらず、計画していた成長投資や人的資本投資枠をも配当原資にするものであり、当社企業価値向上のための中期経営計画の成長戦略を阻害するものと考えます。
当社のDOEに基づく配当計算は、会社が得られる事業収入や事業外収入のすべてを含めた「親会社株主に帰属する当期純利益」により蓄積された自己資本を基準としています。これに対し、本株主提案に係る配当計算方法は、「建設事業“以外”の事業収入」や「政策保有株式からの配当収入“以外”の営業外・特別利益等の収入」を配当原資に充てないものであり、株主様にとって不合理な計算方法と考えます。
以上の理由により、当社取締役会としては本株主提案に反対いたします。
大林組の取締役(2022年6月可決・当時)
筆者見解(歴史的文脈から見た視点)
要求区分の一覧19種類
シルチェスターの要求区分:公開資料からの推定
大林組に対し、シルチェスターがどの要求区分(投資ファンドが要求する項目を独自に一般化したもの)を、どの手段で伝えたかを、公開資料で確かめられる範囲で○を付けて示す。
| 種別 | 要求区分 | 定義 | 株主提案 | 招集請求 | 書簡提案 | 面談提案 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 資本政策 | 特別配当 | 通常の配当に上乗せした、一度きりの配当 | ○ | |||
| 配当方針 | 1株配当の引き上げ、配当性向・DOEの目標の変更 | ○ | ||||
| 自社株買い | 自己株式の取得と、取得した株式の消却 | |||||
| 資本効率 | ROE・資本コストの目標、余剰資本の水準と使い道の方針。個別の還元策は特別配当・配当方針・自社株買い | |||||
| 政策保有株 | 取引先などと持ち合う政策保有株式の売却・縮減 | |||||
| 保有資産 | 現預金・不動産など事業に使っていない資産の売却・活用。政策保有株式は除く | |||||
| 事業戦略 | 上場子会社 | 上場子会社の完全子会社化・売却・持分の扱い | ||||
| 非中核事業 | 本業から外れた事業・子会社・資産の売却。上場子会社は除く | |||||
| 経営戦略 | 経営戦略・中期経営計画・事業ポートフォリオの見直し | |||||
| M&A・提携 | 会社が進める買収・統合・資本提携への反対、条件の見直し | |||||
| 非公開化 | 株式の非公開化・MBOの実施、その条件の見直し | |||||
| 買収提案 | 株主自らが買い手となる株式の買付けの提案と、取締役会への賛同の要請。会社が進める買収はM&A・提携、非公開化の実施は非公開化 | |||||
| ガバナンス | 取締役解任 | 特定の取締役の解任、再任への反対 | ||||
| 取締役選任 | 株主が推す候補を含む取締役の選任 | |||||
| 取締役会構成 | 独立社外取締役の比率、議長と社長の分離など取締役会の構成 | |||||
| 定款変更 | 株主総会で決められる事項を増やすなどの定款の変更 | |||||
| 役員報酬 | 役員報酬の水準・仕組み・業績との連動の見直し | |||||
| 買収防衛策 | 買収防衛策の廃止、導入への反対 | |||||
| 非公開 | 非公開面談 | 面談など公表されない場で伝えた要求。中身は非公開 |
参考文献11件
参考文献
| 日付 | 公表 | 種類 | 要旨 |
|---|---|---|---|
| 1993/01/01 | 第三者 | 刊行社史 | 大林組百年史(大林組) |
| 2023/04/26 | 会社公表 | 適時開示 | 1株12円の特別配当の株主提案 |
| 2023/05/11 | 会社公表 | 適時開示 | 大林組の取締役会による株主提案への反対決議 |
| 2023/06/08 | 会社公表 | 適時開示 | ISSの賛成推奨に対する大林組の見解 |
| 2023/06/28 | 会社公表 | 決議通知 | 第119回定時株主総会での特別配当の議案の否決 |
| 2023/06/29 | 第三者 | 有価証券報告書 | 第119期(2023年3月期)【株式の保有状況】(大林組) |
| 2024/03/04 | 会社公表 | 適時開示 | DOEの目安の3%程度から5%程度への引き上げ |
| 2024/03/04 | 会社公表 | 適時開示 | 必要自己資本1兆円とROE10%以上の目標の設定 |
| 2025/02/10 | 会社公表 | 適時開示 | 上限300億円の自己株式取得 |
| 2025/05/14 | 会社公表 | 決算説明会 | 決算説明会での特別配当の併用についての回答 |
| 2025/08/08 | 会社公表 | 適時開示 | 上限400億円の自己株式取得 |