株主要求と会社対応12件
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株主要求と会社対応
シルチェスターは、京都銀行が保有株式から受け取る配当を株主に分配するよう迫った。2006年から投資を続けた最大株主として、受取配当が純利益を上回り、コアの銀行業務は利益を生んでいないとみて配当政策の修正を要請した。だが京都銀行側に拒まれ、特別配当の株主提案に進んだものの、株主提案は総会で否決された。処分益を特別配当に回すべきとした主張は、京都FGが任天堂株の一部売却を受けて特別配当を上乗せした形と重なったが、その間にシルチェスターは京都FGの株式処分を進め、保有割合は8.50%から4.36%へ低下した。
京都銀行は特別配当の提案を退け、還元の基準を自ら決めた枠組みで実行した。提案の前に総還元性向50%を目安とする方針を公表しており、還元は受取配当ではなく当期純利益を基準に決めるべきだとして、株主提案を地域金融機関の特徴を考慮しない短期的なものと判断して反対した。京都銀行から京都FGへの持株会社化の後、京都FGは政策保有株式の縮減目標を掲げて引き上げ、任天堂株の一部売却で生じた売却益を、自らの判断で特別配当として分配するなど、株主還元を本格化しつつある。
要求と経緯要求3件・出来事12件
株主との対話:株主から会社に対する要求と経緯
| 種別 | 要求区分 | 日付 | 主体 | 対話区分 | やり取りの要旨 | 株主公表 | 会社公表 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 資本政策 | 配当方針 | 2021/12/28 | 意思決定 | 確定総還元性向の目安50% | |||
| 2022/04/27 | 書簡提案 | 要求受取配当100%と純利益50% | — | ||||
| 特別配当 | 2022/04/25 | 株主提案 | 要求特別配当1株132円 | — | |||
| 2022/05/13 | 意思決定 | 確定短期的な視点の提案として反対 | |||||
| 2022/05/23 | 書簡提案 | 要求処分益は特別配当か自社株買い | — | ||||
| 2022/06/29 | 株主総会 | 議案決議 | 否決株主提案の特別配当 | — | |||
| 2026/03/09 | 意思決定 | 確定株式等売却益751億円 | — | ||||
| 2026/03/11 | 意思決定 | 確定特別配当1株100円 | — | ||||
| 資本効率 | 2022/04/27 | 書簡提案 | 要求適切な資本配分制度の導入 | — | |||
| 2024/11/14 | 意思決定 | 確定政策株縮減1,000億円 | — | ||||
| 2024/11/14 | 意思決定 | 確定自社株買い取得上限100億円 | — | ||||
| 政策保有株 | 2026/04/02 | 意思決定 | 確定政策株縮減3,000億円 | — | |||
| 事業戦略 | 経営戦略 | 2023/10/02 | 意思決定 | 確定京都FGの設立・上場 | — |
| 日付 | 主体 | 対話区分 | やり取りの要旨 | 株主公表 | 会社公表 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2021/12/28 | 意思決定 | 確定総還元性向の目安50% | |||
| 2022/04/25 | 株主提案 | 要求特別配当1株132円 | — | ||
| 2022/04/27 | 書簡提案 | 要求受取配当100%と純利益50% | — | ||
| 要求適切な資本配分制度の導入 | |||||
| 2022/05/13 | 意思決定 | 確定短期的な視点の提案として反対 | |||
| 2022/05/23 | 書簡提案 | 要求処分益は特別配当か自社株買い | — | ||
| 2022/06/29 | 株主総会 | 議案決議 | 否決株主提案の特別配当 | — | |
| 2023/10/02 | 意思決定 | 確定京都FGの設立・上場 | — | ||
| 2024/11/14 | 意思決定 | 確定政策株縮減1,000億円 | — | ||
| 意思決定 | 確定自社株買い取得上限100億円 | — | |||
| 2026/03/09 | 意思決定 | 確定株式等売却益751億円 | — | ||
| 2026/03/11 | 意思決定 | 確定特別配当1株100円 | — | ||
| 2026/04/02 | 意思決定 | 確定政策株縮減3,000億円 | — |
年間配当=保有株式の受取配当×100%+コアの銀行業務の純利益×50%
株主側の主張:シルチェスター
当会社の取締役会が適切な資本配分制度の導入を怠ったことについて報告しなければならないのは、弊社にとって残念なことです。これに業務の非効率性が相まった結果として、当会社は10%程度の株主資本利益率(以下「ROE」)を達成できていません。低いROEは、当会社の株主に特に弊害をもたらすものです。当会社の主な株主は日本人で、保険会社、年金基金、企業年金、政府機関、ならびに、個人が含まれます。弊社の顧客と同様、日本の株主は、当会社が配当を向上させ、ROEを高めることを期待しています。
(中略)
2021年3月期の当会社の純利益は169億円でした。これにより、ROEは2%未満となりました。当会社は弊社に対し、当会社が保有株式に関わり約173億円の配当金を受け取ったと伝えました。これは、当会社のコアの銀行業務の損失が約4億円であったことを意味します。
(中略)
2022年2月14日付で、弊社は当会社に対し配当政策を修正するよう正式に要請致しました。弊社は当会社に対し、以下を組み合わせた普通配当と特別配当の実施をお願いしました。
•当会社が保有株式に関わり受け取る年間配当の100%に相当する金額、及び、
•当会社のコアの銀行業務からの純利益の50%
(中略)
当会社と当会社の取締役会は弊社からの提案を拒否しました。過去15年間にわたり当会社が採用してきた価値の損失につながる手法を、取締役頭取の土井氏と当会社の取締役会は継続しようとしているのです。
2022年5月13日付で当会社は、弊社の特別配当の提案に関し、反対意見を表明しました。その中で、当会社は弊社の提案は、「地域金融機関である当行の特徴を考慮しない、短期的な視点に立脚したものと考えざるを得ず、中長期的な企業価値の向上に繋がらない」と述べています。
弊社は、このような記述は、認識の甘さと財務的洞察力の欠如を示すものだと考えます。当会社が発表した意見は、弊社の特別配当実施に関する提案を誤って解釈し不正確に伝えるものです。当会社と当会社の取締役会は、資産を留保しようとしています。これは、当会社、当会社の株主、規制当局、顧客、株主のいずれにも利益をもたらすことを目的としておらず、経営陣の安心材料としての資産の留保でしかありません。
(中略)
弊社の考え方は、保有株式に関わる受取配当金を盾にごまかしをする代わりに、当会社をコアの銀行業務の収益性改善に確実に注力させるものです。
(中略)
弊社の考え方は、当会社に対し保有株式の処分を求めるものではありません。弊社は、当会社に対し、単に保有株式に関わるすべての配当金を株主に分配することを求めているのです。当会社が独自に、保有銘柄のひとつ、または、それ以上を処分する判断をした場合には、処分益は特別配当として株主へ分配する、もしくは、機に乗じた自己株買戻しの実施に充てるべきです。
会社側の主張:京都FG
当行は、株主のみなさまに対する利益還元を経営の最重要課題の一つとして認識しており、株主還元の充実を進めてまいりました。具体的には、株主還元の更なる強化の観点で、2021年3月期までの「安定配当を基本としつつ配当性向30%を目安とする」方針を見直し、2021年12月28日に「親会社株主に帰属する当期純利益」を基準として総還元性向50%を目安とする新たな株主還元方針を公表しております。
当行は、地域金融機関が中長期持続的に企業価値を向上していくためには、「成長投資」、「健全性の確保」、「株主還元の充実」をバランスよく実現することが重要だとかねてから考えております。地域企業への積極的な創業・成長支援という「成長投資」と、今般のコロナ禍のように、企業の経営環境が突如として悪化し、長期化した場合であっても企業の資金繰りを支え続けることが可能となる「健全性の確保」の観点を踏まえますと、現在の当行の株主還元方針に基づく還元施策が、現状では最適であると考えております。
また、株主還元の基準については、当行の事業戦略に着目して投資している株主のみなさまへの利益配分と位置付けるべきであり、保有株式に関して当行が受け取る配当だけでなく、当年度の事業活動の結果生じた「親会社株主に帰属する当期純利益」を基準に決定するべきと考えております。
本株主提案にかかる剰余金の配当(特別配当)を行うことは、地域金融機関である当行の特徴を考慮しない、短期的な視点に立脚したものと考えざるを得ず、中長期的な企業価値の向上に繋がらないと判断いたします。
したがいまして、当行取締役会としては、本議案に反対いたします。
筆者見解(歴史的文脈から見た視点)
要求区分の一覧19種類
シルチェスターの要求区分:公開資料からの推定
京都FGに対し、シルチェスターがどの要求区分(投資ファンドが要求する項目を独自に一般化したもの)を、どの手段で伝えたかを、公開資料で確かめられる範囲で○を付けて示す。
| 種別 | 要求区分 | 定義 | 株主提案 | 招集請求 | 書簡提案 | 面談提案 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 資本政策 | 特別配当 | 通常の配当に上乗せした、一度きりの配当 | ○ | ○ | ||
| 配当方針 | 1株配当の引き上げ、配当性向・DOEの目標の変更 | ○ | ||||
| 自社株買い | 自己株式の取得と、取得した株式の消却 | |||||
| 資本効率 | ROE・資本コストの目標、余剰資本の水準と使い道の方針。個別の還元策は特別配当・配当方針・自社株買い | ○ | ||||
| 政策保有株 | 取引先などと持ち合う政策保有株式の売却・縮減 | |||||
| 保有資産 | 現預金・不動産など事業に使っていない資産の売却・活用。政策保有株式は除く | |||||
| 事業戦略 | 上場子会社 | 上場子会社の完全子会社化・売却・持分の扱い | ||||
| 非中核事業 | 本業から外れた事業・子会社・資産の売却。上場子会社は除く | |||||
| 経営戦略 | 経営戦略・中期経営計画・事業ポートフォリオの見直し | |||||
| M&A・提携 | 会社が進める買収・統合・資本提携への反対、条件の見直し | |||||
| 非公開化 | 株式の非公開化・MBOの実施、その条件の見直し | |||||
| 買収提案 | 株主自らが買い手となる株式の買付けの提案と、取締役会への賛同の要請。会社が進める買収はM&A・提携、非公開化の実施は非公開化 | |||||
| ガバナンス | 取締役解任 | 特定の取締役の解任、再任への反対 | ||||
| 取締役選任 | 株主が推す候補を含む取締役の選任 | |||||
| 取締役会構成 | 独立社外取締役の比率、議長と社長の分離など取締役会の構成 | |||||
| 定款変更 | 株主総会で決められる事項を増やすなどの定款の変更 | |||||
| 役員報酬 | 役員報酬の水準・仕組み・業績との連動の見直し | |||||
| 買収防衛策 | 買収防衛策の廃止、導入への反対 | |||||
| 非公開 | 非公開面談 | 面談など公表されない場で伝えた要求。中身は非公開 |
参考文献10件
参考文献
| 日付 | 公表 | 種類 | 要旨 |
|---|---|---|---|
| 2022/04/27 | 株主公表 | 書簡 | 株主提案を知らせる書簡の公表 |
| 2022/05/13 | 会社公表 | 適時開示 | 京都銀行の特別配当の株主提案への反対意見 |
| 2022/05/23 | 株主公表 | 書簡 | 特別配当の議案への賛成を求める書簡の公表 |
| 2022/06/30 | 会社公表 | 有価証券報告書 | 京都銀行の総還元性向50%の目安の設定 |
| 2023/10/02 | 会社公表 | 適時開示 | 単独株式移転による京都FGの設立 |
| 2024/11/14 | 会社公表 | 適時開示 | 政策保有株式の縮減とROE5%の新たな戦略目標 |
| 2024/11/14 | 会社公表 | 適時開示 | 上限100億円の自己株式取得 |
| 2026/03/11 | 会社公表 | 臨時報告書 | 京都銀行による任天堂株の一部売却 |
| 2026/03/11 | 会社公表 | 適時開示 | 期末配当予想の特別配当 100 円の上乗せ(年 180 円) |
| 2026/04/02 | 会社公表 | 適時開示 | 政策保有株式の縮減目標の 3,000 億円以上への引き上げ |