株主要求と会社対応11件
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株主要求と会社対応
シルチェスターは、滋賀銀行が保有株式から受け取る配当を株主に流すよう求め、非公開の要請が拒まれると株主提案に進んだ。2022年2月の正式な要請では、受取配当の全額とコアの銀行業務の純利益の半分を配当に充てる案を示したが、取締役会に拒否された。そこで1株110円の特別配当を総会に諮り、自己資本比率の高さを根拠に融資の余力は損なわれないと株主に訴えた。しかし賛成は23.09%にとどまり、否決の後は保有を売り進めた。
滋賀銀行は特別配当の株主提案に反対した一方、特別配当という手段は受け入れ、額を自ら決めた。基幹系システムの更改に伴う投資と、地域経済の悪化時にリスクを引き受ける資本の充実を理由に、110円の配当は適切でないと判断した。ただ反対を表明した同じ日に、45円の特別配当の付議と株主還元率の目安の引き上げを決め、還元の水準を自らの枠組みで高めた。その後も政策保有株式は地域経済との関係から持ち続け、2026年には配当性向を目安とする方針に改めた。
要求と経緯要求2件・出来事11件
株主との対話:株主から会社に対する要求と経緯
| 種別 | 要求区分 | 日付 | 主体 | 対話区分 | やり取りの要旨 | 株主公表 | 会社公表 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 資本政策 | 政策保有株 | 2019/04 | 意思決定 | 確定政策株縮減簿価136億円 | — | ||
| 配当方針 | 2022/01/28 | 意思決定 | 確定年間配当1株60円 | — | |||
| 2022/04/11 | 書簡提案 | 要求受取配当と純利益連動の配当 | — | ||||
| 2022/05/13 | 意思決定 | 確定株主還元率の目安の引き上げ | — | ||||
| 2022/05/23 | 書簡提案 | 要求受取配当と純利益連動の配当 | — | ||||
| 2026/05 | 意思決定 | 確定配当性向を目安に変更 | — | ||||
| 特別配当 | 2022/04/11 | 株主提案 | 要求特別配当1株110円 | ||||
| 2022/05/13 | 意思決定 | 確定年間配当1株80円 | — | ||||
| 2022/05/13 | 意思決定 | 確定成長投資と資本充実を理由に反対 | — | ||||
| 2022/06/24 | 株主総会 | 議案決議 | 否決株主提案の配当賛成23.09% | — | |||
| 自社株買い | 2022/05/13 | 意思決定 | 確定自社株買い20億円 | — |
| 日付 | 主体 | 対話区分 | やり取りの要旨 | 株主公表 | 会社公表 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2019/04 | 意思決定 | 確定政策株縮減簿価136億円 | — | ||
| 2022/01/28 | 意思決定 | 確定年間配当1株60円 | — | ||
| 2022/04/11 | 書簡提案 | 要求受取配当と純利益連動の配当 | — | ||
| 株主提案 | 要求特別配当1株110円 | ||||
| 2022/05/13 | 意思決定 | 確定株主還元率の目安の引き上げ | — | ||
| 確定年間配当1株80円 | |||||
| 確定自社株買い20億円 | |||||
| 意思決定 | 確定成長投資と資本充実を理由に反対 | — | |||
| 2022/05/23 | 書簡提案 | 要求受取配当と純利益連動の配当 | — | ||
| 2022/06/24 | 株主総会 | 議案決議 | 否決株主提案の配当賛成23.09% | — | |
| 2026/05 | 意思決定 | 確定配当性向を目安に変更 | — |
年間配当=保有株式の受取配当×100%+コアの銀行業務の純利益×50%
株主側の主張:シルチェスター
また、当会社の取締役会が適切な資本配分制度の導入を怠ったことについても報告しなければならないのは、残念であります。これに業務の非効率性が相まった結果として、当会社は10%程度の株主資本利益率(以下「ROE」)を達成できていません。低いROEは、当会社の株主に特に弊害をもたらすものです。当会社の主な株主は日本人で、保険会社、年金基金、企業年金、政府機関、ならびに、個人が含まれます。弊社の顧客と同様、日本の株主は、当会社が配当を向上させ、ROEを高めることを期待しています。
(中略)
2022年2月7日付で、弊社は当会社に対し配当政策を修正するよう正式に要請致しました。当会社と当会社の株主への更なる弊害を最小限に抑えるため、弊社は当会社に対し、以下を組み合わせた普通配当と特別配当の実施をお願いしました。
(中略)
• 当会社が保有株式に関わり受け取る年間配当の100%に相当する金額、及び、
• 当会社のコアの銀行業務からの純利益の50%
(中略)
当会社と当会社の取締役会は、弊社からの提案を拒否しました。
当会社が発表した意見は、弊社の特別配当実施に関する提案を誤って解釈し不正確に伝えるものです。当会社と当会社の取締役会は、株主が当会社の保有者であり、株主が当会社の株主還元政策について最終的な決定をすることができることを理解されていないようです。当会社が、弊社について、弊社が当会社の長年の株主であるにもかかわらず、短期的利益のみを追及しているという考えを持っていることが示唆されます。当会社と当会社の取締役会は、資産を留保しようとしているようです。これは、当会社、当会社の株主、規制当局、顧客、株主のいずれにも利益をもたらすことを目的としておらず、経営陣の安心材料としての資産の留保でしかありません。
(中略)
弊社の考え方は、当会社の支払能力を改善し、地域金融機関としての責任を果たす能力を損ねるものではありません。
• 当会社の自己資本比率は、15.1%です。これに対し、日本の地方銀行の平均自己資本比率は9.6%、規制要件の最低基準は4%です。2022年5月13日付の当会社の発表の内容とは対称的に、特別配当実施後、当会社の自己資本比率は低下しません。
(中略)
• 弊社の考え方は、当会社に対し保有株式の処分を求めるものではありません。弊社は、当会社に対し、単に保有株式に関わるすべての配当金を株主に分配することを求めているのです。当会社が独自に、保有銘柄のひとつ、または、それ以上を処分する判断をした場合には、処分益は特別配当として株主へ分配する、もしくは、機に乗じた自己株買戻しの実施に充てるべきです。
会社側の主張:滋賀銀行
さらに、今後の業績見通しをふまえ、本日、配当と自己株式取得合計の株主還元率について、2023年3月期より40%を目安に取り組むことに変更しております。
当行は滋賀県に本拠を置く唯一の地方銀行として、地域の持続的な発展を支える金融仲介機能を担っており、成長戦略への投資を行うなど自らが改革を進めて経営基盤を強化し、地域に貢献していくことが重要な使命であると考えております。特に、直近では地域社会のサステナビリティ確保に向けた将来的なデジタルサービスの拡充とシステムコストの抑制を目的として、2024年1月に基幹系システムの更改等を予定しており、安定稼動するまでは多額の投資が必要な状況にあります。また新型コロナウイルス感染拡大に伴うお取引先の資金繰り支援等、国内・国際情勢における予期せぬ事象発生により地域経済が悪化した際には、リスクを引き受け、地域を支えることが求められています。そのためには適切な利益を確保しながら資本の充実を図り、盤石な財務基盤を築くことが必要であると判断しております。
一方で、当行第135期定時株主総会において当行が提案する剰余金配当に係る議案に基づく普通株式1株当たり配当金額に加えて110円の特別配当を行うことを内容とする本株主提案については、当行の社会インフラとしての地域の金融仲介機能の持続可能性確保に向けた、成長戦略への投資や資本の充実の必要性を顧慮しておらず、当行の株主還元の基本方針や地域社会との共存共栄の考え方にも合致せず、結果として、当行の企業価値ひいては株主の皆さまの共同利益を毀損するおそれもあるものと考えております。
株主還元の水準については今後も継続的に検討してまいりますが、当行といたしましては、中長期的な企業価値を向上させ、株主の皆さまの共同利益を確保・向上させる観点から、本株主提案に係る特別配当を行うことは適切ではないと判断いたします。
滋賀銀行の取締役(2021年6月可決・当時)
筆者見解(歴史的文脈から見た視点)
要求区分の一覧19種類
シルチェスターの要求区分:公開資料からの推定
滋賀銀行に対し、シルチェスターがどの要求区分(投資ファンドが要求する項目を独自に一般化したもの)を、どの手段で伝えたかを、公開資料で確かめられる範囲で○を付けて示す。
| 種別 | 要求区分 | 定義 | 株主提案 | 招集請求 | 書簡提案 | 面談提案 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 資本政策 | 特別配当 | 通常の配当に上乗せした、一度きりの配当 | ○ | |||
| 配当方針 | 1株配当の引き上げ、配当性向・DOEの目標の変更 | ○ | ||||
| 自社株買い | 自己株式の取得と、取得した株式の消却 | |||||
| 資本効率 | ROE・資本コストの目標、余剰資本の水準と使い道の方針。個別の還元策は特別配当・配当方針・自社株買い | |||||
| 政策保有株 | 取引先などと持ち合う政策保有株式の売却・縮減 | |||||
| 保有資産 | 現預金・不動産など事業に使っていない資産の売却・活用。政策保有株式は除く | |||||
| 事業戦略 | 上場子会社 | 上場子会社の完全子会社化・売却・持分の扱い | ||||
| 非中核事業 | 本業から外れた事業・子会社・資産の売却。上場子会社は除く | |||||
| 経営戦略 | 経営戦略・中期経営計画・事業ポートフォリオの見直し | |||||
| M&A・提携 | 会社が進める買収・統合・資本提携への反対、条件の見直し | |||||
| 非公開化 | 株式の非公開化・MBOの実施、その条件の見直し | |||||
| 買収提案 | 株主自らが買い手となる株式の買付けの提案と、取締役会への賛同の要請。会社が進める買収はM&A・提携、非公開化の実施は非公開化 | |||||
| ガバナンス | 取締役解任 | 特定の取締役の解任、再任への反対 | ||||
| 取締役選任 | 株主が推す候補を含む取締役の選任 | |||||
| 取締役会構成 | 独立社外取締役の比率、議長と社長の分離など取締役会の構成 | |||||
| 定款変更 | 株主総会で決められる事項を増やすなどの定款の変更 | |||||
| 役員報酬 | 役員報酬の水準・仕組み・業績との連動の見直し | |||||
| 買収防衛策 | 買収防衛策の廃止、導入への反対 | |||||
| 非公開 | 非公開面談 | 面談など公表されない場で伝えた要求。中身は非公開 |
参考文献6件
参考文献
| 日付 | 公表 | 種類 | 要旨 |
|---|---|---|---|
| 2022/05/13 | 会社公表 | 適時開示 | 株主提案への取締役会の反対意見 |
| 2022/05/23 | 株主公表 | 書簡 | 提案への賛成を株主に呼びかける書簡の公表 |
| 2022/06/01 | 会社公表 | 決算説明会資料 | 特別配当45円を含む年間配当80円 |
| 2022/06/28 | 会社公表 | 臨時報告書 | 1株110円の特別配当の株主提案 |
| 2025/05/28 | 会社公表 | 招集通知 | 第7次中期経営計画の期間の政策保有株式の縮減 |
| 2026/05/27 | 会社公表 | 招集通知 | 配当性向 40% を目安とする配当方針への変更 |