株主要求と会社対応8件
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株主要求と会社対応
シルチェスターは、中国銀行が保有株式から受け取る配当を株主に分配させるため、非公開の要請から株主提案へと手を強めた。配当政策の修正の正式な要請を拒まれ、5円の増配の後も特別配当と自己株式取得の発表を求めて退けられたことが、1株29円の特別配当の株主提案に進む引き金になった。反対意見には、自己資本比率が地方銀行の平均を上回り、特別配当の後も下がらないと反論したが、議案は否決された。
中国銀行は特別配当の株主提案に反対し、資本を地域経済の発展に積極的に活用するとして自己資本の充実を優先した。保有株式の配当の全額の還元は政策保有株式の縮減の方針と相容れないとし、還元は安定的かつ継続的な増配で充実させるとした。反対意見を出した日に10億円の自己株式取得と持株会社体制への移行を決め、議案の否決を経て、中国銀行はちゅうぎんFGの完全子会社となった。
要求と経緯要求3件・出来事8件
株主との対話:株主から会社に対する要求と経緯
| 種別 | 要求区分 | 日付 | 主体 | 対話区分 | やり取りの要旨 | 株主公表 | 会社公表 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 資本政策 | 配当方針 | 2022/03/25 | 意思決定 | 確定年間配当1株28円 | |||
| 2022/04/11 | 書簡提案 | 要求受取配当全額と純利益半分の配当 | — | ||||
| 2022/05/23 | 書簡提案 | 要求受取配当全額と純利益半分の配当 | — | ||||
| 特別配当 | 2022/04/11 | 株主提案 | 要求特別配当1株29円 | — | |||
| 2022/05/13 | 意思決定 | 確定短期的な視点の提案との返答 | — | ||||
| 2022/05/23 | 書簡提案 | 要求処分益の特別配当か自社株買い | — | ||||
| 2022/06/24 | 株主総会 | 議案決議 | 否決株主提案の特別配当 | — | |||
| 資本効率 | 2022/04/11 | 書簡提案 | 要求適切な資本配分制度の採用 | — | |||
| 事業戦略 | 経営戦略 | 2022/05/13 | 意思決定 | 確定ちゅうぎんFGの設立 | — | ||
| 2022/10/03 | 意思決定 | 確定ちゅうぎんFGの設立・上場 | — |
| 日付 | 主体 | 対話区分 | やり取りの要旨 | 株主公表 | 会社公表 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2022/03/25 | 意思決定 | 確定年間配当1株28円 | |||
| 2022/04/11 | 書簡提案 | 要求受取配当全額と純利益半分の配当 | — | ||
| 要求適切な資本配分制度の採用 | |||||
| 株主提案 | 要求特別配当1株29円 | — | |||
| 2022/05/13 | 意思決定 | 確定短期的な視点の提案との返答 | — | ||
| 意思決定 | 確定ちゅうぎんFGの設立 | — | |||
| 2022/05/23 | 書簡提案 | 要求受取配当全額と純利益半分の配当 | — | ||
| 要求処分益の特別配当か自社株買い | |||||
| 2022/06/24 | 株主総会 | 議案決議 | 否決株主提案の特別配当 | — | |
| 2022/10/03 | 意思決定 | 確定ちゅうぎんFGの設立・上場 | — |
年間配当=保有株式の受取配当×100%+コアの銀行業務の純利益×50%
株主側の主張:シルチェスター
当会社の取締役会が適切な資本配分制度の導入を怠ったことについて報告しなければならないのは、弊社にとって残念なことです。これに業務の非効率性が相まった結果として、当会社は10%程度の株主資本利益率(以下「ROE」)を達成できていません。低いROEは、当会社の株主に特に弊害をもたらすものです。当会社の主な株主は日本人で、保険会社、年金基金、企業年金、政府機関、ならびに、個人が含まれます。弊社の顧客と同様、日本の株主は、当会社が配当を向上させ、ROEを高めることを期待しています。
(中略)
2022年2月7日付で、弊社は当会社に対し配当政策を修正するよう正式に要請致しました。当会社と当会社の株主への更なる弊害を最小限に抑えるため、弊社は当会社に対し、以下を組み合わせた普通配当と特別配当の実施をお願いしました。
当会社が保有株式に関わり受け取る年間配当の100%に相当する金額、及び、
当会社のコアの銀行業務からの純利益の50%
弊社が提案する配当政策は、当会社がコアの融資・銀行業務から発生する利益のうち相応な割合を確実に保持することを可能にします。これはまた、当会社が銀行事業を拡大させる上で十分な財務的弾力性を持つことを可能にするものです。また、この配当政策においては、当会社が保有株式に関わり受け取るすべての年間配当の恩恵を、株主が受けられるようになるのです。
(中略)
現在の当会社の配当政策は不十分であり、是正されなければ、日本の株主を含む当会社の株主に更なる弊害をもたらすこととなるでしょう。
当会社が発表した意見は、弊社の特別配当実施に関する提案を誤って解釈し不正確に伝えるものです。当会社と当会社の取締役会は、株主が当会社の保有者であり、株主が当会社の株主還元政策について最終的な決定をすることができることを理解されていないようです。弊社が当会社の長年の株主であるにもかかわらず、短期的利益のみを追及しているという当会社の主張は、間違っています。当会社と当会社の取締役会は、資産を留保しようとしています。これは、当会社、当会社の株主、規制当局、顧客、株主のいずれにも利益をもたらすことを目的としておらず、経営陣の安心材料としての資産の留保でしかありません。
(中略)
当会社の自己資本比率は、13.8%です。これに対し、日本の地方銀行の平均自己資本比率は9.6%、規制要件の最低基準は4%です。2022年5月13日付の当会社の発表の内容とは対称的に、特別配当実施後、当会社の自己資本比率は低下しません。
(中略)
弊社の考え方は、当会社に対し保有株式の処分を求めるものではありません。弊社は、当会社に対し、単に保有株式に関わるすべての配当金を株主に分配することを求めているのです。当会社が独自に、保有銘柄のひとつ、または、それ以上を処分する判断をした場合には、処分益は特別配当として株主へ分配する、もしくは、機に乗じた自己株買戻しの実施に充てるべきです。
(中略)
当会社がROEを改善する可能性が高まり、資本コストをカバーできるようになります。過去10年間における当会社のROEは、約4.1%です。当会社のROEは、他の地方銀行を含む日本企業のROEを下回るものです。当会社の低いROEは、低い利益、過度に高い費用収益比率、及び、過剰な資本の留保が原因となっています。低いROEは、当会社の株主、ステークホルダー、そして、広い範囲では地域社会に弊害をもたらすものです。低いROEは、時間とともに企業価値の損失につながるものです。
会社側の主張:ちゅうぎんFG
しかし、本株主提案は将来における経営環境の変化や継続的な事業投資の必要性を考慮しない、短期的な視点に立脚したものです。
当行は今後、地域経済の発展に向けた取組みに対してこれまで以上に資本を積極的に活用していく方針であり、そのためには内部留保の充実による下支えが不可欠と考えています。そして収益力を強化し、中長期的な企業価値を向上させることによって、安定的かつ継続的な増配という形で株主様への還元を充実させていく方針です。
これに対して本株主提案は、当行が目指す中長期的な企業価値向上ならびに株主の皆様の利益を毀損するおそれがあるものであり、反対いたします。
上記のとおり、政策保有株式に関して受け取る配当金は、政策保有株式の保有の合理性を検証するにあたっての重要な要素であり、その全額を還元するべきとの提案株主の主張は、当行の政策保有株式の縮減に関する基本方針と相容れないものです。さらに本株主提案は純投資株式に関して受け取る配当金の全額も還元するべきという提案内容であり、合理的な根拠を欠くものであると考えております。
以上より、当行のこのような経営方針のもとで、一時的な多額の特別配当を実施することは、企業価値および株主価値の双方にとって、中長期的な観点から好ましいものではない、と当行取締役会は考えます。
筆者見解(歴史的文脈から見た視点)
要求区分の一覧19種類
シルチェスターの要求区分:公開資料からの推定
ちゅうぎんFGに対し、シルチェスターがどの要求区分(投資ファンドが要求する項目を独自に一般化したもの)を、どの手段で伝えたかを、公開資料で確かめられる範囲で○を付けて示す。
| 種別 | 要求区分 | 定義 | 株主提案 | 招集請求 | 書簡提案 | 面談提案 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 資本政策 | 特別配当 | 通常の配当に上乗せした、一度きりの配当 | ○ | ○ | ||
| 配当方針 | 1株配当の引き上げ、配当性向・DOEの目標の変更 | ○ | ||||
| 自社株買い | 自己株式の取得と、取得した株式の消却 | |||||
| 資本効率 | ROE・資本コストの目標、余剰資本の水準と使い道の方針。個別の還元策は特別配当・配当方針・自社株買い | ○ | ||||
| 政策保有株 | 取引先などと持ち合う政策保有株式の売却・縮減 | |||||
| 保有資産 | 現預金・不動産など事業に使っていない資産の売却・活用。政策保有株式は除く | |||||
| 事業戦略 | 上場子会社 | 上場子会社の完全子会社化・売却・持分の扱い | ||||
| 非中核事業 | 本業から外れた事業・子会社・資産の売却。上場子会社は除く | |||||
| 経営戦略 | 経営戦略・中期経営計画・事業ポートフォリオの見直し | |||||
| M&A・提携 | 会社が進める買収・統合・資本提携への反対、条件の見直し | |||||
| 非公開化 | 株式の非公開化・MBOの実施、その条件の見直し | |||||
| 買収提案 | 株主自らが買い手となる株式の買付けの提案と、取締役会への賛同の要請。会社が進める買収はM&A・提携、非公開化の実施は非公開化 | |||||
| ガバナンス | 取締役解任 | 特定の取締役の解任、再任への反対 | ||||
| 取締役選任 | 株主が推す候補を含む取締役の選任 | |||||
| 取締役会構成 | 独立社外取締役の比率、議長と社長の分離など取締役会の構成 | |||||
| 定款変更 | 株主総会で決められる事項を増やすなどの定款の変更 | |||||
| 役員報酬 | 役員報酬の水準・仕組み・業績との連動の見直し | |||||
| 買収防衛策 | 買収防衛策の廃止、導入への反対 | |||||
| 非公開 | 非公開面談 | 面談など公表されない場で伝えた要求。中身は非公開 |
参考文献5件
参考文献
| 日付 | 公表 | 種類 | 要旨 |
|---|---|---|---|
| 2022/04/11 | 株主公表 | 書簡 | 特別配当の議案の提出を知らせる書簡の公表 |
| 2022/05/13 | 会社公表 | 適時開示 | 中国銀行の特別配当の株主提案への反対意見 |
| 2022/05/23 | 株主公表 | 書簡 | 特別配当の議案への賛成を求める書簡の公表 |
| 2022/06/17 | 会社公表 | 有価証券報告書 | 期末配当予想の 5 円の増配(年 28 円) |
| 2023/06/16 | 会社公表 | 有価証券報告書 | 中国銀行の定時総会での特別配当の議案の否決 |