ヤマダデンキ分社と持株会社化(2020年・ヤマダHDの決断)

更新:
論点管理監督と業務執行を分離するか
ヤマダHD:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
家電販売を事業会社へ切り出し、暮らしまるごと戦略を統括するグループ経営会社へ2020年3月16日、ヤマダ電機は会社分割によって持株会社体制へ移行することを決議した。同年10月1日、家電・情報家電等の販売及び住まいに関する商品販売事業を完全子会社のヤマダデンキへ承継し、自らは商号をヤマダホールディングスへ改めてグループ統括に特化した。分社型吸収分割で、承継会社へ交付する金銭等はなく、資本金の増減も生じていない。

何をなぜ決めたか:家電販売を事業会社へ切り出し、暮らしまるごと戦略を統括するグループ経営会社へ

概要

2020年3月16日、ヤマダ電機は会社分割によって持株会社体制へ移行することを決議した。同年10月1日、家電・情報家電等の販売及び住まいに関する商品販売事業を完全子会社のヤマダデンキへ承継し、自らは商号をヤマダホールディングスへ改めてグループ統括に特化した。分社型吸収分割で、承継会社へ交付する金銭等はなく、資本金の増減も生じていない。

背景

2011年のエス・バイ・エル子会社化以降、住宅・家具・金融・環境資源開発と事業が広がり、家電販売の会社が多様な子会社を抱える体制になっていた。家電をコアに生活インフラとしての「暮らしまるごと」を掲げながら、報告セグメントはデンキ以外に重要な区分がないとして省略されており、事業ごとの責任と成績が外からも内からも見えにくかった。

内容

分割会社をヤマダ電機、承継会社を完全子会社のヤマダ電機分割準備会社とする分社型吸収分割で、2020年4月1日に準備会社を設立、4月13日に契約を締結し、6月26日の第43回定時株主総会で承認を得た。10月1日の効力発生とともに承継会社はヤマダデンキへ、分割会社はヤマダホールディングスへ商号を変更した。会計上は共通支配下の取引として処理している。

含意

持株会社は経営の管理・監督と経営戦略の企画・立案に特化し、業務提携・資本提携・M&Aといった事業再編を迅速に行うことを目的に据えた。移行を機に報告セグメントはデンキと住建の2区分へ改められ、翌期には環境・金融が加わる。提出会社の従業員は10,539人から761人へ9,778人減少し、家電量販の本体が統括会社へ姿を変えたことが人員の上にも表れた。

いつ何が起きたか9件
当時の取締役14名

当時の取締役(2019年6月株主総会決議)

考察:会社の形を替えて、はじめて事業が見えた
考察

考察:会社の形を替えて、はじめて事業が見えた

この再編でいちばん大きく変わったのは、資本の形ではなく見え方だったと思われる。分社型吸収分割は完全子会社への事業移転で、対価も資本金の増減もなく、外形上は法人の付け替えにすぎない。だが移行を機に、それまで「デンキ以外に重要なセグメントがない」として省略されていた報告セグメントが、デンキと住建の2区分で開示されるようになった。2011年から積み上げてきた住宅・家具・金融・環境は、家電量販という一つの法人の内側にある限り、成績を持たない付属物のままだった。事業ごとに会社を割ったことで、はじめてそれぞれが数字で語られる対象になった。

もっとも、会社を分けることと、事業が育つことは別である。移行から5年で住建は1,756億円から3,308億円へ伸びたが、デンキは1兆5,032億円から1兆3,211億円へ落ち、連結売上高は移行期の水準を回復していない。持株会社に与えられた役目は業務提携・資本提携・M&Aを迅速に行うことであり、2021年の11分社制、2024年の監査等委員会設置会社への移行、そして2026年のエディオンとの統合合意まで、再編の速度そのものは確かに上がった。家電の縮小を住まいで埋めきれるかどうかは、なお開いたままの問いなのだろう。

Yutaka Sugiura, 2026年9月
数字で見る3表

数字で見る

図と表

ヤマダHD:報告セグメント別の売上高と連結売上高

デンキセグメント売上高(百万円)デンキ以外(百万円)
ヤマダHD:報告セグメント別の売上高と連結売上高
(百万円)デンキセグメント売上高住建セグメント売上高連結売上高備考
2016年3月期−−1,612,735デンキ以外に重要なセグメントがなく、セグメント情報の記載を省略していた期
2017年3月期−−1,563,056セグメント情報の記載を省略
2018年3月期−−1,573,873セグメント情報の記載を省略
2019年3月期−−1,600,583セグメント情報の記載を省略
2020年3月期1,450,114121,5771,611,538翌期の報告セグメント区分に基づいて遡って作成された前連結会計年度の数値
2021年3月期1,503,271175,6821,752,50610月に持株会社体制へ移行。開示の充実を図りデンキ・住建の2区分で報告を開始
2022年3月期1,312,929263,0841,619,3797月にヤマダデンキが子会社を吸収合併し、11の地域区分による社内分社制を導入
2023年3月期1,297,648266,9211,600,586
2024年3月期1,280,906274,6831,592,009
2025年3月期1,298,667292,4601,629,069
2026年3月期1,321,135330,8491,691,808住建は移行期の1,756億円から3,308億円へ。環境257億円、金融39億円が別に立つ
出所:ヤマダホールディングス 有価証券報告書 第40〜49期(セグメント情報・連結損益計算書)
出所:ヤマダホールディングス 有価証券報告書 第40〜49期(セグメント情報・連結損益計算書)

ヤマダHD:連結と提出会社の従業員数

提出会社従業員数(人)子会社の従業員(人)
ヤマダHD:連結と提出会社の従業員数
(人)連結従業員数提出会社従業員数備考
2016年3月期19,18310,725
2017年3月期19,23810,568
2018年3月期19,75210,161
2019年3月期18,85310,432
2020年3月期19,98510,539
2021年3月期24,300761提出会社は前連結会計年度末比9,778名減。持株会社体制への移行によるもの
2022年3月期22,951892
2023年3月期25,284600
2024年3月期25,526608
2025年3月期25,676573
2026年3月期26,747561
出所:ヤマダホールディングス 有価証券報告書 第40〜49期【従業員の状況】
出所:ヤマダホールディングス 有価証券報告書 第40〜49期【従業員の状況】

会社分割の条件

会社分割の条件
科目概要備考
分割の法的形式分社型吸収分割分割会社が承継会社の全株式を保有するため、承継会社側は会社法第796条の略式分割に当たる
分割会社株式会社ヤマダ電機効力発生日に株式会社ヤマダホールディングスへ商号変更。所在地は群馬県高崎市栄町1番1号
承継会社株式会社ヤマダ電機分割準備会社効力発生日に株式会社ヤマダデンキへ商号変更。代表取締役社長は三嶋恒夫氏
吸収分割契約書承認取締役会2020年3月16日同じ取締役会で分割準備会社の設立も決議した
分割準備会社の設立2020年4月1日
吸収分割契約の締結2020年4月13日
承認株主総会2020年6月26日第43回定時株主総会。承継会社側は株主総会の承認決議を要していない
効力発生日2020年10月1日
承継した事業家電・情報家電等の販売及び住まいに関する商品販売事業各事業に係る一部の固定資産は持株会社が管理し、承継する債務は分割会社が重畳的に引き受けた
割当ての内容金銭等の交付なし分割会社が承継会社の発行済株式の全部を所有しているため
資本金の増減なし持株会社の資本金は71,058百万円、承継会社の資本金は100百万円
新株予約権の取扱い変更なし新株予約権付社債は発行していない
会計処理共通支配下の取引企業結合に関する会計基準および企業結合会計基準等に関する適用指針に基づく処理
出所:ヤマダ電機 有価証券報告書 第43期(2020年3月期)【経営上の重要な契約等】【重要な後発事象】・ヤマダホールディングス 第44期(2021年3月期)【企業結合等関係】
出所:ヤマダ電機 有価証券報告書 第43期(2020年3月期)【経営上の重要な契約等】【重要な後発事象】・ヤマダホールディングス 第44期(2021年3月期)【企業結合等関係】
当時の取締役14名

当時の取締役(2019年6月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考
  • ヤマダホールディングス 統合報告書2021(持株会社化後の「つながる経営」と11分社制)
  • ヤマダ電機 有価証券報告書「第43期(2020年3月期)【経営上の重要な契約等】【重要な後発事象】」
  • ヤマダホールディングス 有価証券報告書「第44期(2021年3月期)【企業結合等関係】」
  • ヤマダホールディングス 有価証券報告書「第45期(2022年3月期)【企業結合等関係】」
  • ヤマダホールディングス 決算説明会資料「2021年3月期 決算説明資料」

次に読む決断

同業他社の状況(小売・日用品)

免責事項およびポリシー