監査等委員会設置会社へ移行(2022年・西日本旅客鉄道の決断)

更新:
論点赤字直後に機関設計を変えるか
西日本旅客鉄道:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)
監査役会の廃止と監査等委員4名の取締役会への参加2022年6月23日、第35回定時株主総会の承認を得て、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行した。取締役会の監督機能を強化してコーポレート・ガバナンスの一層の強化を図るとともに、迅速な意思決定及び機動的な業務執行を図ることが、その理由である。

何をなぜ決めたか:監査役会の廃止と監査等委員4名の取締役会への参加

概要

2022年6月23日、第35回定時株主総会の承認を得て、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行した。取締役会の監督機能を強化してコーポレート・ガバナンスの一層の強化を図るとともに、迅速な意思決定及び機動的な業務執行を図ることが、その理由である。

移行前は取締役13名(うち社外5名)に対し、社外3名を含む監査役5名が取締役の職務の執行を監査していた。移行後は監査等委員である取締役を除く13名(うち社外5名)に、取締役会で議決権を持つ監査等委員である取締役4名(うち社外3名)が加わり、取締役会は17名・うち社外8名となった。

背景

移行を決めたのは、コロナ禍で発足以来初の通期赤字を計上した直後である。2022年3月期の連結営業収益は1兆311億円、営業損失1,191億円、親会社株主に帰属する当期純損失1,132億円で、赤字は2期続いた。同年4月には東京証券取引所の市場第一部からプライム市場へ移り、同じ月に輸送密度2,000人未満の30区間の収支を初めて公表している。

機関設計の手直しはその前から積み重ねられていた。取締役の報酬を諮る報酬諮問委員会は2020年3月期から人事報酬諮問委員会となって人事を所管し、構成も過半数を社外取締役とする取締役3名以上から5名以上へ広がった。2021年2月には取締役の個人別の報酬等の内容に係る決定方針を取締役会で決議している。

内容

移行にあわせて定款の取締役の員数枠は40名以内から20名以内へ半減した。取締役会は意思決定権限を業務執行取締役へ大幅に委任し、その範囲を取締役会規則に定めたうえで、経営上の重点戦略、事業ポートフォリオの方向性、サステナビリティに関する機会・リスクを議論する場となった。監査等委員である取締役の任期は2年で、それ以外の取締役の1年と分かれる。

報酬の枠も同じ総会で組み替えられた。従前の枠は1995年6月27日の第8回定時株主総会で決めた取締役33名につき月額77百万円、監査役4名につき月額7百万円であり、27年ぶりの改定にあたる。新しい枠は金銭報酬が年額690百万円以内(うち社外取締役分120百万円以内)、株式報酬が年額75百万円以内かつ年20千株以内、監査等委員である取締役の金銭報酬が年額135百万円以内である。

含意

2022年度の取締役会は全取締役出席のもと15回、監査等委員会は14回開かれた。その後に取締役は17名から15名へ、社外は8名から7名へ減少し、社外が取締役会の半数に届かない構成が続いている。

選ぶ側の手続は移行の前後で変わっていない。人事報酬諮問委員会は独立社外取締役が過半数を占め、委員長も独立社外取締役が務めるが、その責務は取締役会への答申にとどまる。取締役候補者を株主総会に推薦するのは代表取締役社長で、後継者計画の策定も同じ委員会の審議事項に並ぶ。取締役会の議長は社長が務め、2025年6月から社長を兼ねない会長へ移った。

いつ何が起きたか7件
当時の取締役17名

当時の取締役(2022年6月株主総会決議)

考察:監視を外から中へ移行した
考察

考察:監視を外から中へ移行した

この移行の芯は、監視の置き場所を取締役会の外から中へ移したことにあると思われる。監査役は取締役の職務の執行を監査するが、取締役会で議決権を持たない。移行によって社外3名を含む監査等委員4名が議決権を持つ取締役となり、社外取締役は5名から8名へ増加した。同時に定款の員数枠を40名から20名へ半減し、重要な業務執行の意思決定は業務執行取締役へ大幅に委任している。監督する側を厚くしながら、執行の速さは業務執行取締役への委任で確保するという二段構えであり、コロナ禍で2期続けて赤字を計上した直後という時機を考えれば、決める速さと見張る目の両方が同時に要ると判断されたのだろう。

もっとも、誰を取締役にするかを決める道筋は移行の前後で変わっていない。人事報酬諮問委員会は独立社外取締役が過半数を占め委員長も社外だが、責務は取締役会への答申までで、候補者を株主総会に推薦するのは代表取締役社長である。取締役は17名から15名へ、社外は8名から7名へ戻り、社外が半数を超える構成には至っていない。1995年に決めた報酬枠を27年ぶりに改め、譲渡制限付株式を報酬へ組み入れたことのほうが、実際には経営陣の動機に触れる変更だったかもしれない。

Yutaka Sugiura, 2026年9月
数字で見る2表

数字で見る

図と表

西日本旅客鉄道:取締役会の構成の推移

取締役(名)うち社外取締役率(%)
西日本旅客鉄道:取締役会の構成の推移
(名)取締役うち社外取締役監査役備考
2018年3月期1554
2019年3月期1554社外監査役は2名。他の期は3名
2020年3月期1555
2021年3月期1355
2022年3月期178−2022年6月23日に移行。員数は提出日現在で、監査等委員4名を含む
2023年3月期178−移行後初の通年。取締役会は15回、監査等委員会は14回開催
2024年3月期157−監査等委員を除く取締役が13名から11名へ減少した
2025年3月期157−
2026年3月期157−
出所:西日本旅客鉄道 有価証券報告書 第31期(2018年3月期)〜第39期(2026年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】。員数は各期の提出日現在
出所:西日本旅客鉄道 有価証券報告書 第31期(2018年3月期)〜第39期(2026年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】。員数は各期の提出日現在

経緯と対応

経緯と対応
科目概要備考
移行の承認2022年6月23日第35回定時株主総会の承認を得て、監査役会設置会社から移行した
移行の理由取締役会の監督機能の強化コーポレート・ガバナンスの一層の強化と、迅速な意思決定及び機動的な業務執行を図るため
移行前の監査社外3名を含む監査役5名取締役会で議決権を持たない監査役が、取締役の職務の執行を監査していた
移行前の取締役会取締役13名(うち社外5名)社外取締役は監視・監督に特化する取締役として明確化されていた
移行後の取締役会取締役17名(うち社外8名)監査等委員を除く13名(社外5名)と、議決権を持つ監査等委員4名(社外3名)
定款の員数枠40名以内から20名以内取締役の員数を定めた定款の上限を、移行にあわせて半減した
取締役の任期1年(監査等委員は2年)監査等委員は2022年3月期に係る総会から2024年3月期に係る総会までの2年
意思決定権限の委任業務執行取締役へ大幅に委任範囲は取締役会規則に定める。執行役員等への権限委任とあわせて迅速・果断な経営を図る
取締役会の付議事項経営上の重点戦略事業ポートフォリオの方向性、サステナビリティに関する機会・リスクも議論する
人事報酬諮問委員会独立社外取締役が過半数委員長も独立社外取締役。役員等の人事及び報酬等を審議し、取締役会へ答申する
委員会の審議事項後継者計画の策定等取締役会の構成と多様性、期待されるスキル、選定・解任の方針・基準、報酬の方針
取締役候補者の提案代表取締役社長委員会の審議を経て、代表取締役社長が株主総会に推薦する候補者を提案する
従前の報酬枠1995年6月27日の総会決議取締役33名につき月額77百万円、監査役4名につき月額7百万円の範囲で決めていた
金銭報酬の新しい枠年額690百万円以内監査等委員である取締役を除く。うち社外取締役分は120百万円以内
株式報酬の枠年額75百万円以内株式数は年20千株以内。譲渡制限付株式を交付する
監査等委員の報酬枠年額135百万円以内金銭報酬のみで構成する。同総会の終結時点での員数は4名
決定方針の改正2022年6月23日移行と譲渡制限付株式報酬の導入を踏まえ、同じ日の取締役会で決議した
移行後の会議体監査等委員会を14回開催2022年度。移行前の監査役会は3回、取締役会は全取締役出席のもと15回
出所:西日本旅客鉄道 有価証券報告書 第34期(2021年3月期)〜第39期(2026年3月期)【沿革】【コーポレート・ガバナンスの状況等】、コーポレート・ガバナンスに関する報告書(2022年7月11日)
当時の取締役17名

当時の取締役(2022年6月株主総会決議)

参考文献

参考文献

参考

次に読む決断

同業他社の状況(運輸)

免責事項およびポリシー