TOTO監査等委員会設置会社への移行:監査等委員である取締役に議決権を与え、社外取締役を3名から5名へ広げた機関設計の切り替え

更新:

時期 2022年6月
当時の社長 清田徳明
論点 取締役会の監査・監督機能と意思決定の速さ
概要

2022年6月24日の第156期定時株主総会で、監査等委員会設置会社への移行を内容とする定款の変更が決議され、同日付で監査役会設置会社から移行した。狙いに置いたのは、取締役会の監査・監督機能を一層強化すると共に、業務執行の意思決定をより迅速かつ効率的に行うことである。

同じ総会で定款上の取締役の員数を14名から19名へ広げ、取締役は15名、うち社外取締役5名、監査等委員である取締役4名(常勤1名・社外3名)の構成となった。

背景

移行前は監査役会設置会社で、取締役12名のうち社外取締役は3名、監査役会は常勤2名と社外2名の4名だった。社外役員は取締役会による監督と監査役による監査という二重のチェック機能を担っていたが、監査役には取締役会の議決権がない。

指名諮問委員会と報酬諮問委員会は移行前から置かれ、委員の過半数を社外委員としていた。監査役会設置会社の枠組みを基に、指名委員会等設置会社の優れた機能を統合した体制であった。

内容

移行の核は、監査等委員である取締役に取締役会における議決権を付与することにある。社外取締役は3名から5名へ増え、うち3名が監査等委員を兼ねる。監査等委員である取締役の任期は2年、それ以外の取締役は1年とした。

監査等委員会の職務を補助するため、業務執行組織から独立した監査等委員会直属の監査等委員会本部を開設し、2022年度は専任の補助者6名を配置している。補助者の異動と評価は、監査等委員会の同意を得たうえで決める。

含意

清田徳明社長は 『ガバナンスの強化の一環として、取締役会の「監査・監督機能の強化」「業務執行の迅速化かつ効率化」を目的に、今回監査等委員会設置会社への移行を行いました』 と、移行を「守り」と「攻め」の両面での強化に位置づけている。社外取締役にはリスクテイクの部分で執行部門を後押しする役割まで求めており、監査の強化だけを狙ったものではない。

移行後の取締役会は15名から漸減し、2026年3月期は13名(社内8名・社外5名)となった。社外取締役5名と監査等委員である取締役4名(常勤1名・社外3名)の枠は、移行以来変わっていない。

筆者の見解

動いたのは人数ではなく票の配り方

この移行が動かしたのは、社外役員の人数ではなく票の配り方だったとみられる。移行前のTOTOには社外取締役3名と社外監査役2名がいて、社外の目は合わせて5つあった。だが取締役会で票を投じられるのは前者の3名だけで、残る2名は議決の外から監査するにとどまる。移行後は社外取締役5名がいずれも議決権を持ち、うち3名は監査等委員として監査の責任も負う。社外の頭数は5名のまま変わらないのに、取締役会での議決権を持つ社外の数は3名から5名へ増えた。定款の員数枠を14名から19名へ広げたのも、監査役だった人々を取締役の側へ収めるための器の拡張であった。

もっとも、票を配り直したことが監督の実効にそのまま結びつくとは限らない。監査等委員である取締役は取締役会の議決に加わる以上、自らが賛成した業務執行を後から監査する立場にも立つ。この緊張に対して置かれたのが、業務執行組織から独立した監査等委員会本部と、そこに配された専任の補助者6名という実務の裏づけだろう。移行後の取締役会が15名から13名へ絞られていくなかで社外5名の枠が動いていないことは、この体制を一時の看板ではなく続ける形として扱っていることの表れだとみられる。

Yutaka Sugiura, 2026年9月

経緯と対応

科目 概要 備考
決議 2022年6月24日 第156期定時株主総会で、監査等委員会設置会社への移行を内容とする定款の変更を決議
移行日 2022年6月24日 決議と同日付で監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行した
移行の目的 取締役会の監査・監督機能の強化 監査等委員である取締役に取締役会における議決権を付与することによる
あわせて掲げた目的 業務執行の意思決定の迅速化・効率化
定款上の取締役の員数 14名から19名へ 監査等委員である取締役を含む枠として広げた
取締役の構成 15名(うち社外取締役5名) 社内10名。移行前は12名で、社内9名・社外3名だった
監査機関の構成 監査等委員である取締役4名 常勤1名・社外3名。移行前の監査役会は常勤2名・社外2名の4名
取締役の任期 1年 監査等委員である取締役は2024年3月期に係る定時株主総会終結の時までの2年
監査等委員会の補助組織 監査等委員会本部 業務執行組織から独立した監査等委員会直属。2022年度は専任の補助者6名を配置
補助者の独立性 監査等委員会の同意を得て決定 補助者の異動、評価などが対象
報酬枠(監査等委員を除く取締役) 年額5億円以内 うち社外取締役分は5,000万円以内。移行と同じ総会で決議し直した
賞与(同上) 前事業年度の連結営業利益の0.8%以内
譲渡制限付株式報酬(同上) 年額3億円以内かつ100,000株以内
報酬枠(監査等委員である取締役) 年額1億5,000万円以内 基本報酬のみ。各人の額は監査等委員である取締役の協議で決める
任意の委員会 指名諮問委員会・報酬諮問委員会 移行前から設置し、移行後も継続。委員は過半数を社外委員とする

出所:TOTO 有価証券報告書 第156期(2022年3月期)・第157期(2023年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】、コーポレート・ガバナンスに関する報告書(2022年6月27日)

TOTO:取締役会と監査機関の員数

(名) 取締役うち社外取締役うち監査等委員である取締役監査役 備考
2017年3月期 1334
2018年3月期 1334
2019年3月期 1334
2020年3月期 1234
2021年3月期 1234
2022年3月期 1234 2022年6月24日に移行。員数は移行前の2021年度の取締役会・監査役会の構成
2023年3月期 1554 移行後初の期。社外取締役が3名から5名へ増え、うち3名が監査等委員を兼ねる
2024年3月期 1454
2025年3月期 1454
2026年3月期 1354 社内取締役は8名。社外5名と監査等委員4名の枠は移行以来変わっていない
2027年3月期 第161期は未到来
取締役の員数と社外取締役の比率
取締役(名)うち社外取締役率(%)

出所:TOTO 有価証券報告書 第151〜160期(コーポレート・ガバナンスの概要)

同じ問いに直面した会社

取締役会改革2022年三井住友フィナンシャルグループ傘下証券会社の不正を受けた親会社・三井住友FGの引責とガバナンス対応子会社の不正と親会社の監督責任
2022年西日本旅客鉄道監査役会の廃止と監査等委員4名の取締役会への参加、執行の権限の業務執行取締役への委譲機関設計と取締役会の監督機能
2023年メルカリ創業CEOが退いたあとの後継の選び方を、先に制度へ預ける機関設計の転換創業者がCEOを退いたあとに後継を選べる仕組みと、海外展開に耐える執行体制
2023年サイバーエージェント創業者からの世代交代に向けた後継者の選抜と育成の枠組み事業承継
2023年横浜ゴム監査を担う者を議決権のある取締役として取締役会に迎えた機関設計の転換取締役会の監督機能と意思決定の速さ
出典・参考
  • TOTO 有価証券報告書「第156期(2022年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】」
  • TOTO 有価証券報告書「第157期(2023年3月期)【コーポレート・ガバナンスの状況等】」
  • TOTO 統合報告書「統合報告書2022」

免責事項およびポリシー