筆者の見解
単品トップが背負った、需要変動という宿命
この転換の核心は、単品で高いシェアを取り切った会社が、次の成長をどこに置くのかという問いにあった。衛生陶器と水栓金具で国内の3分の2を握れば、市場そのものが伸びない限り売上高は頭打ちになる。東陶機器が選んだのは、浴室・洗面・給湯へと"水まわり"で事業を広げ、住宅一軒の水回り全体から取り分を増やす道であった。守りに徹した石油ショック後の投資抑制を解き、攻めへ切り替えた判断は、成長の限界を先取りした動きであったと推察される。
ただし、住宅設備という事業が新設住宅着工の増減に強く縛られる構造は、総合化を進めてもなお残った。攻めへ転じた1980年、着工戸数はすでに前年割れへ向かっていた。外部需要の波に売上げを委ねる限り、多角化は振れ幅を薄める工夫ではあっても、需要そのものを生む力にはならない。この後の東陶機器が、増改築(リモデル)需要の開拓やウォシュレットのような別カテゴリーの創出へ向かったのは、単品トップが背負った需要変動という宿命への、長い応答であったと思われる。
Yutaka Sugiura, 2026年7月