筆者の見解
独自商品を突破口にした、長い賭け
この決断の核心は、内需で完結してきた衛生陶器メーカーが、何を武器に海外の大市場へ出るのかという問いにあった。東陶が選んだ突破口は、価格でも量でもなく、ウォシュレットに象徴される独自のハイテク商品と、電子制御まで抱える技術陣であった。重くて単価が低い旧来型の衛生陶器では輸送費に負けても、他国に例のない"究極のトイレ"であれば、文化の壁を越えて認知を得られるかもしれない——単品トップの技術力を海外の成長へ振り向ける発想は、内需依存の限界を先取りした選択であったのだろう。
もっとも、トイレへの考え方の違い、州ごとの規格、代理店依存の流通という非関税の壁は根深く、初年度の販売目標さえ届かなかった。米国での商売が"まだ始まったばかり"であったように、この進出は短期の収益ではなく、認知が積み上がるのを待つ長い時間軸の賭けであった。2001年グループ売上高1兆円という構想も、既存事業で7割、残り3割を新市場でという古賀社長の見立てのうえに置かれていた。海外の新市場をどこまで自らの成長に取り込めるかは、この後の東陶機器が数十年をかけて答えを出していく課題として残っただろう。
Yutaka Sugiura, 2026年7月