ゆうちょ銀行との資本業務提携(2026年・松井証券の決断)

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松井証券:業績の推移
売上高(億円)営業利益率(%)

何をなぜ決めたか:創業家の持株売却を機にした、独立経営を保つ筆頭株主の受け入れ

概要
概要

2026年11月4日、松井証券は取締役会でゆうちょ銀行との資本業務提携を決議し、同日に契約を締結した。ゆうちょ銀行は筆頭株主の有限会社丸六から市場外の相対取引で普通株式51,489,700株を取得し、議決権の19.99%を持つ筆頭株主となる予定である。株式譲渡の実行は2026年12月28日の予定で、2026年11月の決議の時点では実行されていない。

発端は創業家の売却相談であり、松井証券は上場の維持と独立した経営の尊重を契約に盛り込んで相手を受け入れた。決議は和里田聰社長のもとで行われた。譲渡が実行されると丸六の議決権比率は37.55%から17.56%へ下がって第2位となり、松井証券はゆうちょ銀行の持分法適用関連会社となる予定である。

背景
背景

2026年初頭、創業家は資産管理会社の丸六が保有する松井証券株の一部、発行済株式総数の約20%の売却を会社に相談した。松井証券は複数の売却手法を比べ、この売却を中長期の支援者を確保する機会と位置付けた。相手を選ぶ基準には、企業文化と独自のブランディングに基づく経営方針の維持、事業戦略の継続性と発展性を置いた。

2026年3月期の営業収益は52,660百万円、ROEは19.6%であった。ただ、2023年にSBI証券と楽天証券が株式売買委託手数料を無料化し、松井証券以外の大手オンライン4社は1,000万人以上の顧客基盤を持つ企業集団の傘下にある。松井証券は1996年4月の保護預かり料の無料化、1999年10月のボックスレート導入、2013年1月の一日信用取引の導入で価格体系を組み替えてきた。

内容
内容

ゆうちょ銀行は松井証券の上場維持と独立した経営を最大限尊重し、契約に明示した事項を除いて経営に制限を設けない。一方で、議決権比率が15%以上の間は非業務執行取締役1名を指名でき、希薄化につながる株式等の発行・処分にはゆうちょ銀行の事前の書面承諾が要る。ゆうちょ銀行による株式の譲渡と追加取得にも原則として松井証券の事前承諾が要るが、議決権比率が20%を下回った場合は20%に至るまで追加取得できる。

業務提携は4項目からなる。相互の顧客の送客、共同のキャンペーン、ゆうちょアセットマネジメントが組成する資産運用商品の販売、同社がGPを務めるファンドの投資先への引受証券会社としての紹介である。具体的な内容と提供時期は今後の協議に委ねた。譲渡価額は一連の開示に記載がない。契約前の両社に資本関係・人的関係・取引関係はなかった。

沿革:意思決定前後の出来事12件
考察:支配を渡さずに顧客の入口を得る提携
考察

考察:支配を渡さずに顧客の入口を得る提携

この決断が答えた問いは、創業家が大株主の座を譲るとき、経営の支配と成長の入口をどう両立させるかである。市場での売却なら株主は分散するが、顧客は増加しない。買収者への売却なら顧客は得られても、独立は失われる。松井証券は議決権19.99%の相対譲渡という中間の形を選んだ。筆頭株主は入れ替わる予定だが、上場の維持と独立した経営の尊重は契約に残る。売却の必要を、提携の機会に置き換えた決断である。

松井証券は1996年4月の保護預かり料の無料化、1999年10月のボックスレート導入、2013年1月の一日信用取引の導入と、価格の付け方で客層を選び直してきた。投資に能動的な個人に絞る現在の方針は、その延長にある。同じ選別は規模の限界も生んだ。総口座数は約184万口座で、他の大手4社は1,000万人以上の顧客基盤を持つ企業集団の傘下にある。今回の提携は、選別で築いた強みを保ったまま、顧客の入口だけを外部に求めた判断と読める。

2023年にSBI証券が手数料を無料化し、競争は価格から顧客基盤へ移った。マネックス証券は2024年1月にドコモの連結子会社となり、ドコモは中間持株会社の議決権約49%を持つ。松井証券ではゆうちょ銀行が19.99%にとどまり、位置づけは持分法適用関連会社である。違いを生んだのは、原資が創業家の持株の一部だった点にある。丸六は17.56%、松興社は13.87%を保つ。ただし送客の目標数値は開示がなく、成否は提携の開始後に口座数が動くかで決まる。

Yutaka Sugiura, 2026年11月

数字で見る

数値:意思決定前後の事業数値3件

松井証券:創業家の資産管理会社2社の所有株式数の割合

有限会社丸六(%)有限会社松興社(%)
松井証券:創業家の資産管理会社2社の所有株式数の割合
(%)有限会社丸六有限会社松興社備考
2022年3月期33.7713.89
2023年3月期33.7513.89
2024年3月期33.7413.88
2025年3月期37.5613.88丸六の所有株式数が86,812千株から96,706千株へ増加
2026年3月期37.5413.87
出所:松井証券 有価証券報告書 第106〜110期(2022年3月期〜2026年3月期)【大株主の状況】
出所:松井証券 有価証券報告書 第106〜110期(2022年3月期〜2026年3月期)【大株主の状況】

松井証券:営業収益と利益の推移

営業収益(百万円)当期純利益率(%)
松井証券:営業収益と利益の推移
(百万円)営業収益経常利益当期純利益備考
2022年3月期30,38812,79111,439営業収益は第109期の表示方法の変更を反映した組替後の値
2023年3月期29,60511,2537,823営業収益は第109期の表示方法の変更を反映した組替後の値
2024年3月期36,80115,0549,790営業収益は第109期の表示方法の変更を反映した組替後の値
2025年3月期39,20415,29210,501
2026年3月期52,66023,81315,480
出所:松井証券 有価証券報告書 第110期(2026年3月期)【主要な経営指標等の推移】 / 松井証券 2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信(2026年10月28日)
出所:松井証券 有価証券報告書 第110期(2026年3月期)【主要な経営指標等の推移】 / 松井証券 2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信(2026年10月28日)

松井証券:議決権比率の異動(2026年12月28日予定)

譲渡が実行されると、丸六の議決権比率は37.55%から17.56%へ下がる予定

松井証券:議決権比率の異動(2026年12月28日予定)
(%)ゆうちょ銀行有限会社丸六備考
異動前−37.55ゆうちょ銀行との資本関係はない
異動後(予定)19.9917.56ゆうちょ銀行が第1位、丸六が第2位となる予定
出所:松井証券 適時開示「主要株主及び主要株主である筆頭株主並びにその他の関係会社の異動に関するお知らせ」(2026年11月4日)
出所:松井証券 適時開示「主要株主及び主要株主である筆頭株主並びにその他の関係会社の異動に関するお知らせ」(2026年11月4日)
人物:意思決定前後の取締役9名

取締役9名(2026年6月株主総会議決)

区分役員名役職
取締役業務執行担当領域
業務執行兼務和里田聰金融取締役:代表取締役業務執行:社長執行役員担当:
鵜澤慎一金融取締役:取締役業務執行:専務執行役員担当:コーポレート部門担当
松井道太郎金融取締役:取締役業務執行:担当:
高橋武文金融取締役:監査等委員・常勤業務執行:担当:
独立役員小貫聡金融取締役:取締役業務執行:担当:
堀俊明取締役:取締役業務執行:担当:
小駒望会計取締役:監査等委員業務執行:担当:
川西拓人法曹取締役:監査等委員業務執行:担当:
塩見めぐみ取締役:監査等委員業務執行:担当:
この一覧は2026年6月の定時株主総会の直後に提出された有価証券報告書の【役員の状況】による。
参考文献

参考文献

参考

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