親和銀行を完全子会社化(2007年・ふくおかFGの決断)

更新:
論点県境を越えて持株会社で統合するか
ふくおかFG:業績の推移
売上高(億円)経常利益率(%)
共同株式移転による持株会社の設立と、その傘下への複数地銀の集約

何をなぜ決めたか:共同株式移転による持株会社の設立と、その傘下への複数地銀の集約

概要

2007年4月2日、福岡銀行と熊本ファミリー銀行は共同株式移転により持株会社ふくおかフィナンシャルグループを設立し、普通株式を東京・大阪・福岡の3証券取引所に上場した。福岡銀行頭取から初代の取締役会長兼社長となった谷正明氏の主導で、同年10月には長崎県の親和銀行も完全子会社に加え、九州北部3県にまたがる3行体制となった。

背景

福岡銀行は預金の9割超を福岡県内で集める地盤集中型の地方銀行で、人口減少と低金利のもとでは県内の貸出競争を続ける以外の道が乏しかった。隣県には、公的資金300億円の資本増強を受けた熊本ファミリー銀行と、不良債権処理に追われる親和銀行があった。

内容

株式移転比率は福岡銀行の普通株式1株に対し持株会社1株、熊本ファミリー銀行の普通株式1株に対し0.217株。会計処理は福岡銀行を取得企業、熊本ファミリー銀行を被取得企業とするパーチェス法によった。取得原価は63,590百万円で、のれん60,534百万円が発生している。

親和銀行については、九州親和ホールディングスが持つ親和銀行としんわDCカードの株式を総額760億円で取得する株式譲渡契約を2007年7月に結んだ。同年9月28日に第三者割当増資の払込を完了して議決権比率59.9%を取得し、10月1日の株式追加取得で100%とした。取得原価は176,372百万円、のれんは122,896百万円にのぼる。

含意

2行分ののれんは合計183,430百万円で、いずれも20年間の均等償却に付された。年9,171百万円の償却が20年続く計算になる。受け入れた資産は熊本ファミリー銀行が1兆3,110億円、親和銀行が2兆1,857億円で、親和銀行分には1,706億円の貸倒引当金が含まれる。第1期の連結当期純利益は12億円にとどまり、3行のシステム統合が完了したのは2010年1月であった。

いつ何が起きたか9件
考察:先駆けという言葉の前にあったもの
考察

考察:先駆けという言葉の前にあったもの

福岡銀行が引き受けたのは、公的資金300億円の資本増強を受けた熊本ファミリー銀行と、不良債権処理に追われる親和銀行という、財務の傷んだ隣県の2行であった。谷正明会長兼社長が選んだのは、預金の9割を県内で集める安全な位置から降り、183,430百万円ののれんとともに他県の損失を財務ごと抱える方針であったのだろう。親和銀行から受け入れた資産には1,706億円の貸倒引当金が付いていた。

もっとも、その道が早く報われたわけではない。のれんの償却期間は20年で、年9,171百万円が2027年度まで利益を圧迫し続ける。第1期の連結当期純利益は12億円にとどまり、3行のシステム統合が完了したのは2010年1月、設立から3年近く後であった。県境を越える統合の効果は、決めた年ではなく、傷んだ資産を処理し終えた後にようやく数字へ表れるといえる。

Yutaka Sugiura, 2026年7月
数字で見る3表

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図と表

ふくおかFG:のれんの未償却残高と資産規模の推移

のれん(百万円)
ふくおかFG:のれんの未償却残高と資産規模の推移
(百万円)のれん総資産純資産備考
2008年3月期177,33211,363,902592,516第1期は2007年4月2日から2008年3月31日までの変則期間。2行分ののれんを計上
2009年3月期168,16011,781,256589,941
2010年3月期158,99111,836,273640,912
2011年3月期149,81712,580,400652,306
2012年3月期140,64612,963,202692,765
2013年3月期131,47413,277,578754,283未償却残高は6期で45,858百万円減少した。償却は2027年度まで続く
出所:ふくおかフィナンシャルグループ 有価証券報告書(2008年3月期〜2013年3月期)【連結貸借対照表】【主要な経営指標等の推移】
出所:ふくおかフィナンシャルグループ 有価証券報告書(2008年3月期〜2013年3月期)【連結貸借対照表】【主要な経営指標等の推移】

ふくおかFG:経常収益と利益の推移

経常収益(億円)経常利益率(%)
ふくおかFG:経常収益と利益の推移
(億円)経常収益経常利益当期純利益備考
2008年3月期2,77825912親和銀行の業績は2007年9月30日から、熊本ファミリー銀行は通期で連結
2009年3月期2,81231219経常利益は3,095百万円まで減少した
2010年3月期2,572331284
2011年3月期2,510499260
2012年3月期2,543377282
2013年3月期2,550688321
出所:ふくおかフィナンシャルグループ 有価証券報告書(2008年3月期〜2013年3月期)【主要な経営指標等の推移】
出所:ふくおかフィナンシャルグループ 有価証券報告書(2008年3月期〜2013年3月期)【主要な経営指標等の推移】

統合の条件

統合の条件
科目概要備考
結合当事企業(持株会社設立)福岡銀行と熊本ファミリー銀行両行を完全子会社とする共同持株会社を設立した
企業結合の法的形式(持株会社設立)株式移転による共同持株会社の設立2006年10月に共同株式移転契約を締結し、12月の臨時株主総会で承認
企業結合日(持株会社設立)2007年4月2日同日、普通株式を東京・大阪・福岡の3証券取引所に上場した
株式移転比率福岡銀行1株に1株、熊本ファミリー銀行1株に0.217株熊本ファミリー銀行の第一回第一種・第二種優先株式は各1株に同種1株
交付株式数(株式移転)普通株式755,916,290株ほかに第一種優先株式18,742,000株、第二種優先株式40,000,000株
会計上の取得企業福岡銀行を取得企業、熊本ファミリー銀行を被取得企業パーチェス法を適用。普通株式は合意公表日前5日間の平均株価830円で評価
被取得企業(熊本ファミリー銀行)の取得原価63,590百万円被取得企業の株主に交付した株式の価額等
のれん(熊本ファミリー銀行)60,534百万円将来の超過収益力から発生したもので、20年間の均等償却
受け入れた資産(熊本ファミリー銀行)1,311,095百万円うち貸出金979,364百万円、有価証券233,408百万円、貸倒引当金△27,330百万円
引き受けた負債(熊本ファミリー銀行)1,283,007百万円うち預金1,176,954百万円
親和銀行株式の譲渡契約総額760億円2007年7月に九州親和HDが持つ親和銀行としんわDCカードの株式を取得する契約
企業結合の法的形式(親和銀行)現金による株式の取得2007年8月29日に九州親和HDの臨時株主総会が承認、9月27日に当局が認可
企業結合日(親和銀行)2007年9月28日第三者割当増資の株式引受契約に基づく払込を完了した日
取得した議決権比率(親和銀行)59.9%2007年10月1日の株式追加取得により以降100%
被取得企業(親和銀行)の取得原価176,372百万円
のれん(親和銀行)122,896百万円将来の超過収益力から発生したもので、20年間の均等償却
受け入れた資産(親和銀行)2,185,777百万円うち貸出金1,451,166百万円、有価証券568,080百万円、貸倒引当金△170,688百万円
引き受けた負債(親和銀行)2,127,204百万円うち預金2,002,576百万円
出所:ふくおかフィナンシャルグループ 有価証券報告書(2009年3月期)【企業結合等関係】前連結会計年度、【沿革】
出所:ふくおかフィナンシャルグループ 有価証券報告書(2009年3月期)【企業結合等関係】前連結会計年度、【沿革】
参考文献

参考文献

参考
  • 金融再生委員会「熊本ファミリー銀行に対する資本増強の審査結果について」(1999年12月)
  • ふくおかフィナンシャルグループ 有価証券報告書「2009年3月期【企業結合等関係】前連結会計年度」
  • ふくおかフィナンシャルグループ 有価証券報告書「2009年3月期【沿革】」
  • ふくおかフィナンシャルグループ 有価証券報告書「2009年3月期【主要な経営指標等の推移】」
  • ふくおかフィナンシャルグループ ディスクロージャー誌「FFG REPORT 2007」

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