この決断の核心は、9年連続で縮む市場を前に、単独での生き残りより規模の確保を先に置いた点にある。市場が縮むなら、いずれ単独では立ち行かなくなる——その読みが、質の改革をやり切ったという自負と重なって統合を後押ししたのだろう。買収の圧力が現実味を帯びるなかで、規模は攻めの手段であると同時に、守りの盾でもあった。老舗二社がのれんを残して一つの持株会社に入った形には、対等を装いつつ主導権は譲らないという、再編を仕掛ける側の計算もにじむ。
もっとも、規模がそのまま強さに変わったわけではない。松坂屋に課された3年はリーマンショックと市場縮小に阻まれ、百貨店という業態そのものの地盤沈下は続いた。J.フロントはやがて百貨店の規模を追う路線を離れ、不動産型のモデルへ主力を移していく。規模を最優先した2007年の判断は、百貨店を守り切る答えではなく、次の業態転換へ進むための足場になっただろう。縮む市場でまず量を確保するという選択が、その後の質の組み替えにどう生きたのか——J.フロントのその後は、この問いに答え続ける歩みでもあった。