ホンダ 早期退職優遇制度導入 定年を65歳へ延ばした先の早期退職優遇と退職特別加算金429億円
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何をなぜ決めたか
- 概要
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2021年度、ホンダは提出会社で早期に退く従業員へ割増の一時金を払った。費用は退職特別加算金として2022年3月期に36,098百万円、2023年3月期に6,825百万円が特別損失に立ち、累計は42,923百万円に達した。制度の名称も募集人数も有価証券報告書には記載がなく、対象年齢(55歳以上)は報道で伝わるだけで、外からたどれるのは費用の額と、そのあとに残った人員の数だけである。
- 背景
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2020年4月にホンダエンジニアリングを合併し、提出会社の従業員数は1年で10,402名増えて35,781名となった。一方で2021年12月には埼玉製作所狭山工場の四輪完成車の生産を終え、寄居工場への集約が完了した。平均年齢は2019年3月末に45.6歳と45歳台に乗ったままで、2016年8月に決めた定年の60歳から65歳への延長が、その手前の世代の滞留と重なっていた。
- 内容
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費用は提出会社の損益計算書に「退職特別加算金」として区分掲記され、連結(IFRS)では区分されていない。2022年3月期の特別損失合計46,077百万円のうち8割近くをこの科目が占めた。計上は2期で止まり、2024年3月期には区分掲記そのものが消えて、前事業年度分は営業外費用の「その他」へ組み替えられた。
- 含意
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提出会社の従業員数は2021年3月末の35,781名から2023年3月末の33,065名へ、2期で差し引き2,716名減った。減少の大半は四輪事業で、平均年齢は44.9歳から44.7歳へ0.2歳下がったにとどまる。会社は現在の事業環境を「第二の創業期」と位置づけ、電動化を担う人材は幹部レベルを含む外部採用でも確保するとした。
いつ何が起きたか 8件
筆者の見解
設備ではなく人の側に立った再編の費用
この判断は、人員の若返りというより、抱える人が一気に増える一方で工場が減った時期の帳尻合わせだっただろう。2020年4月の合併で提出会社は1年に1万人を超える人を新たに抱え、その翌年には四輪完成車の一角を止めた。増やした頭数と、動かす工場の数が逆を向いたとき、割増を積んで出口を用意する以外の手は残っていなかったのだろう。定年を延ばした4年後に早期退職の窓を開けるという順序の悪さも、あらかじめ描いた設計というより、目の前の重さへの対処だったことをうかがわせる。特別損失に現れた429億円は、この時期の再編の費用が設備ではなく人の側に立ったことを示している。
もっとも、送り出した先で年齢の構成はほとんど動かなかった。平均年齢は44.9歳から44.7歳へしか変わらず、差し引き2,716名が抜けてなお、若返りという言葉で説明しきれる結果ではない。制度の名称も募集人数も有価証券報告書に記されないまま、金額と人数だけが残ったことも、この手当てが説明よりも処理を先に置いたことをうかがわせる。出す側の窓を2期で閉じたあと、会社が語るのは電動化を担う人材の外部採用である。人の入れ替えは、出口の始末を終えて、ようやく入口の設計に移ったばかりだとみられる。
Yutaka Sugiura, 2026年7月
業績の推移
早期退職優遇の条件
早期退職優遇の条件
| 科目 | 概要 | 備考 |
|---|---|---|
| 制度の名称・募集人数 | 有価証券報告書に記載なし | 開示されるのは費用の額と、提出会社の従業員数および平均年齢の増減だけ |
| 費用の科目 | 退職特別加算金 | 提出会社の損益計算書に特別損失として区分掲記。連結(IFRS)では区分されない |
| 実施した年度 | 2021年度 | 2022年3月期に初めて計上した。前事業年度の計上額はない |
| 計上額(2022年3月期) | 36,098百万円 | 同期の特別損失合計46,077百万円の78%にあたる |
| 計上額(2023年3月期) | 6,825百万円 | 同期の特別損失合計は21,031百万円 |
| 計上額の累計 | 42,923百万円 | |
| 費用計上の終了 | 2024年3月期 | 区分掲記が消え、前事業年度分は営業外費用の「その他」へ組み替えた |
| 提出会社の従業員数 | 34,067名(2022年3月期末) | 前事業年度末は35,781名。差し引き1,714名の減少 |
| うち四輪事業 | 27,949名(2022年3月期末) | 前事業年度末は29,625名。差し引き1,676名の減少 |
| 臨時従業員(外数) | 2,794名(2022年3月期末) | 前事業年度末は3,964名。年間の平均人数を就業人員の外数で記載している |
| 提出会社の平均年齢 | 44.7歳(2022年3月期末) | 前事業年度末は44.9歳。平均勤続年数は22.5年から22.2年へ短くなった |
出所:本田技研工業 有価証券報告書 第98期(2022年3月期)・第99期(2023年3月期)・第100期(2024年3月期)【損益計算書】【従業員の状況】【表示方法の変更】
提出会社の従業員数の推移
ホンダ:提出会社の従業員数の推移
| (名) | 従業員数 | 臨時従業員 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2017年3月期 | 21,903 | 4,570 | 平均年齢45.0歳 |
| 2018年3月期 | 21,543 | 5,370 | 平均年齢44.9歳 |
| 2019年3月期 | 22,675 | 6,034 | 平均年齢45.6歳 |
| 2020年3月期 | 25,379 | 5,489 | 平均年齢45.5歳 |
| 2021年3月期 | 35,781 | 3,964 | ホンダエンジニアリングの合併で10,402名増。平均年齢44.9歳 |
| 2022年3月期 | 34,067 | 2,794 | 退職特別加算金36,098百万円を計上。平均年齢44.7歳 |
| 2023年3月期 | 33,065 | 2,309 | 退職特別加算金6,825百万円を計上。平均年齢44.7歳 |
| 2024年3月期 | 32,443 | 2,549 | 平均年齢44.7歳 |
| 2025年3月期 | 32,088 | 2,809 | 平均年齢44.5歳 |
出所:本田技研工業 有価証券報告書 第93〜101期(2017年3月期〜2025年3月期)【従業員の状況】
退職特別加算金と提出会社の特別損失
ホンダ:退職特別加算金と提出会社の特別損失
| (百万円) | 退職特別加算金 | 特別損失合計 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2017年3月期 | − | 19,014 | |
| 2018年3月期 | − | 43,004 | |
| 2019年3月期 | − | 54,782 | |
| 2020年3月期 | − | 48,261 | |
| 2021年3月期 | − | 23,992 | 退職特別加算金の計上はない |
| 2022年3月期 | 36,098 | 46,077 | 退職特別加算金が特別損失合計の78%を占めた |
| 2023年3月期 | 6,825 | 21,031 | |
| 2024年3月期 | − | 99,727 | 表示方法の変更で前事業年度の特別損失は営業外費用へ組み替えた |
| 2025年3月期 | − | 87,873 |
出所:本田技研工業 有価証券報告書 第93〜101期(2017年3月期〜2025年3月期)【損益計算書】(提出会社)
同じ問いに直面した会社
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参考文献
- 本田技研工業 有価証券報告書 第97期(2021年3月期)【沿革】
- 本田技研工業 有価証券報告書 第97期(2021年3月期)【従業員の状況】
- 本田技研工業 有価証券報告書 第98期(2022年3月期)【沿革】
- 本田技研工業 有価証券報告書 第96期(2020年3月期)【従業員の状況】
- 本田技研工業 有価証券報告書 第95期(2019年3月期)【従業員給付】
- 本田技研工業 有価証券報告書 第98期(2022年3月期)【損益計算書】(提出会社)
- 本田技研工業 有価証券報告書 第99期(2023年3月期)【損益計算書】(提出会社)
- 本田技研工業 有価証券報告書 第98期(2022年3月期)【従業員の状況】
- 本田技研工業 有価証券報告書 第100期(2024年3月期)【表示方法の変更】
- 本田技研工業 有価証券報告書 第100期(2024年3月期)【従業員の状況】
- 本田技研工業 有価証券報告書 第99期(2023年3月期)【人的資本(人材の多様性を含む。)に関する戦略並びに指標及び目標】
- 本田技研工業 有価証券報告書「第101期(2025年3月期)【損益計算書】【従業員の状況】」
- 本田技研工業 有価証券報告書「第93期〜第97期(2017年3月期〜2021年3月期)【損益計算書】【従業員の状況】」
- 本田技研工業 有価証券報告書「第99期(2023年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】」