ホンダ 狭山工場閉鎖し寄居集約 国内四輪生産を一拠点にまとめる生産体制の再編

更新:

時期 2017年10月
当時の社長 八郷隆弘
論点 国内生産体制の集約と固定費の削減
何をなぜ決めたか
概要

2017年10月4日にホンダが「日本の四輪車生産体制を進化」として、埼玉製作所の狭山と寄居の完成車工場を最新の生産技術が備わる寄居完成車工場へ集約する方針を示した経営判断。1964年11月の稼働以来維持してきた最初の四輪拠点を畳み、2021年12月に四輪完成車の生産を終えた。八郷隆弘社長の主導による国内生産再編の一環である。

背景

国内四輪市場の縮小と生産能力の余剰、電動化への投資負担を背景に、狭山と最新設備を備える寄居の二拠点を並べて抱える非効率が重荷になっていた。55歳以上を対象とするライフシフト・プログラムによる人員構成の見直しと表裏をなす国内再編でもあった。

内容

集約は2021年度を目処に完了する予定とし、狭山完成車工場の従業員は寄居完成車工場を中心に異動するとした。あわせて寄居完成車工場内に、電動化などの新技術に対応した生産技術を構築・標準化し、海外の生産拠点へ展開させるグローバル生産技術機能を新設する計画を示した。

含意

"現地で作る"拡大期に国内で積み増した生産能力を、需要の縮小と電動化を前に引き算する判断であった。1964年に始めた四輪の拠点は2021年12月に量産の役目を終え、埼玉製作所の設備の帳簿価額は2018年3月期の1,514億円から2023年3月期に1,197億円へ減った。

いつ何が起きたか 3件
筆者の見解
筆者の見解

拡大の裏返しとしての国内再編

この判断の中心にあるのは、拡大期に広げた生産の版図を、需要の縮小と電動化を前にどう畳むかという問いである。1978年に北米メアリズビルで"現地で作る"拡張を始めたホンダは、その裏側で国内にも生産能力を積み増してきた。狭山の閉鎖は、外へ広げる論理で膨らんだ国内の設備を、内側から引き算する作業にあたる。好調のさなかではなく、市場の縮小と電動化投資の重さに追われるなかで最初の四輪拠点に手を入れた点に、拡張を重ねてきた時期とは異なる性格がうかがえる。

この再編は単独では完結しない。狭山を畳む動きは、英スウィンドン工場の閉鎖による欧州完成車生産からの撤退や、ライフシフト・プログラムによる人員の若返りと同じ時期に重なり、いずれも2021年の脱エンジン宣言が掲げた電動化への資源集中という上位の命題につながっていた。もっとも、電動化の先行きにはなお不確実さが残り、国内の生産をどこまで絞り込むかという問いは、その後も宙に置かれたままと思われる。7年をかけて閉じた狭山工場は、拡大と収縮のあいだで揺れるホンダの国内事業の縮図として残った。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

業績の推移
国内四輪生産体制の再編の条件

国内四輪生産体制の再編の条件

科目 概要 備考
公表日 2017年10月4日 「日本の四輪車生産体制を進化」として国内3拠点の再編をまとめて示した
対象拠点 埼玉製作所 狭山完成車工場 1964年11月に狭山製作所として稼働し、1973年1月に埼玉製作所 狭山工場となった
集約先 埼玉製作所 寄居完成車工場 2013年7月稼働。最新の生産技術が備わる完成車工場と位置づけた
集約の理由 電動化など新技術への生産対応 電動化や知能化の急速な進展で自動車産業は過去にない大転換期にあるとした
集約の完了予定 2021年度を目処
狭山の従業員の扱い 寄居完成車工場を中心に異動 これまでに培ってきた生産ノウハウを最大限に活かすとした
寄居に新設する機能 グローバル生産技術機能 新技術に対応した生産技術を構築・標準化し、海外の生産拠点へ展開させる
鈴鹿製作所の役割 軽乗用車とスモールカーの技術構築 構築した技術・ノウハウを引き続きグローバルに水平展開する
ヤチヨの完全子会社化 検討する基本合意書を同日締結 四日市で受託する少量モデルのさらなる効率化を目指すとした
完成車生産の終了 2021年12月 埼玉製作所の所在地表記は2022年3月期から大里郡寄居町となった
減損損失・構造改革費用 個別の開示がない 有価証券報告書に狭山の集約に係る減損損失・費用の記載はない

出所:本田技研工業 ニュースリリース「日本の四輪車生産体制を進化」(2017年10月4日)/有価証券報告書 第98期(2022年3月期)【沿革】

日本での四輪車生産台数

ホンダ:日本での四輪車生産台数

(千台) 日本での生産台数 備考
2013年3月期 876 生産の海外へのシフトはあったが、国内での販売増加で前期比0.6%の増加
2014年3月期 936 前期比6.9%の増加。この11期のなかで最も多い
2015年3月期 868 国内の販売台数減少により前期比7.4%の減少
2016年3月期 761 輸出は増えたが国内の販売台数減少により前期比12.3%の減少
2017年3月期 810 輸出台数の増加により前期比6.5%の増加
2018年3月期 829 2017年10月に狭山と寄居の完成車工場を寄居へ集約する方針を公表した
2019年3月期 912 輸出台数と国内販売台数の増加により前期比10.0%の増加
2020年3月期 808 新型「N-WGN」の部品供給制限の影響により前期比11.4%の減少
2021年3月期 687 部品供給制限と需要の減少により前期比14.9%の減少
2022年3月期 634 2021年12月に狭山工場の四輪完成車生産が終了。前期比7.7%の減少
2023年3月期 643 前期比1.4%の増加
日本での四輪車生産台数
日本での生産台数(千台)

出所:ホンダ 有価証券報告書 第89期〜第99期(2013年3月期〜2023年3月期)【経営成績等の状況の概要】

埼玉製作所の設備の帳簿価額

ホンダ:埼玉製作所の設備の帳簿価額

(百万円) 土地建物及び構築物機械装置及び備品合計 備考
2013年3月期 26,30666,60422,189115,099 従業員4,955名。この期の列名は「建物」で、翌期から「建物及び構築物」となる
2014年3月期 24,32270,60168,166163,089 従業員5,049名。2013年7月に寄居工場が稼働した
2015年3月期 24,83867,33469,630161,802 従業員4,911名
2016年3月期 24,82864,37366,948156,149 従業員4,816名
2017年3月期 24,82862,10362,247149,178 従業員4,952名
2018年3月期 24,90359,28767,304151,494 従業員4,962名。所在地は埼玉県狭山市
2019年3月期 24,90356,31161,957143,171 従業員5,272名
2020年3月期 24,92054,45555,749135,124 従業員5,295名
2021年3月期 24,94964,13053,593142,672 従業員4,997名
2022年3月期 24,94961,02441,955127,928 従業員4,349名。所在地の表記が狭山市から大里郡寄居町へ変わった
2023年3月期 24,93957,09037,717119,746 従業員4,003名
埼玉製作所の帳簿価額
合計(百万円)

出所:ホンダ 有価証券報告書 第89期〜第99期(2013年3月期〜2023年3月期)【主要な設備の状況】

四輪事業の売上と営業利益

ホンダ:四輪事業の売上と営業利益

(百万円) 売上収益営業利益 備考
2013年3月期 7,709,216285,991 米国会計基準。外部顧客への売上高
2014年3月期 9,176,360403,701 米国会計基準
2015年3月期 9,603,335279,756 この期からIFRS。外部顧客への売上収益
2016年3月期 10,625,405153,366
2017年3月期 10,086,816501,181
2018年3月期 10,852,171373,840
2019年3月期 11,072,117209,694 欧州の四輪車生産体制の見直しにより68,092百万円の損失を認識した
2020年3月期 9,959,080153,323
2021年3月期 8,567,20590,255
2022年3月期 9,147,498236,207
2023年3月期 10,593,519△16,629
四輪事業の売上と営業利益率
売上収益(百万円)営業利益率(%)

出所:ホンダ 有価証券報告書 第89期〜第99期(2013年3月期〜2023年3月期)【セグメント情報】

同じ問いに直面した会社
参考文献
出典・参考
  • 本田技研工業 ニュースリリース「日本の四輪車生産体制を進化」
  • 本田技研工業 決算説明会質疑応答「2024年3月期 第1四半期 決算説明会 質疑応答要旨」
  • ホンダ 有価証券報告書「第98期(2022年3月期)【沿革】」
  • ホンダ 有価証券報告書「第89期〜第99期(2013年3月期〜2023年3月期)【主要な設備の状況】」
  • ホンダ 有価証券報告書「第89期〜第99期(2013年3月期〜2023年3月期)【経営成績等の状況の概要】」
  • ホンダ 有価証券報告書「第89期〜第99期(2013年3月期〜2023年3月期)【セグメント情報】」
  • ホンダ 有価証券報告書「第96期(2020年3月期)【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】」

免責事項およびポリシー