この株主提案が問うたのは、取締役の顔ぶれというより、事実をどこまで開示するかという一点であったと推察される。提案株主が掲げた三つの理由は、事件そのものの是非ではなく、調査報告書の扱いと人事・報酬諮問委員会の答申の扱いに集中している。求めたのは第三者委員会による解明であり、そのために取締役会の全員を入れ替えるという要求であった。議決権2,162個の提案株主が、11名の候補者を立てて総会に臨んだこと自体が、社内の手続では届かなくなったことの表れだったのだろう。
もっとも、株主が選んだのは会社提案のほうであった。取締役会が反対の根拠に据えたのは、売上高2兆4,151億86百万円という過去最高の業績と、2018年から積み上げたガバナンス改革の項目である。結果としては、提案が求めた事実の解明も別の経路で進む。同じ総会で取締役の任期は1年へ短縮され、相談役の規定は消え、同年12月には総括検証報告書が公表された。外からの要求は退けられたが、その中身の一部は会社の手で実現していったといえる。