ワンズワンへブランド集約(1992年・積水ハウスの決断)

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論点 乱立した商品ブランドを集約するか
売上高(億円)経常利益率(%)
乱立した商品ブランドの集約と購買層別の再編

乱立した商品ブランドの集約と購買層別の再編

概要

1992年末、積水ハウスは28種類あった個人向け一戸建て住宅の商品名を7種類に、11種類あったアパートを3種類に、10種類あった木造ツーバイフォー住宅を"ワンズワン"1ブランドに集約し、購買層別のブランド体系へ再編する経営判断を実行した。大阪・東京・広島の3設計部がそれぞれ独自に名付けてきた商品名を整理し、ブランド力の向上と商品開発体制の見直しを同時に進めた。

背景

1970年代後半からの多角化で鉄骨系・木質系・コンクリート系・ツーバイフォーへ商品を広げた結果、3設計部が独自に商品名を付ける体制のもとで一戸建てだけで28種類に膨らみ、個々の商品の存在感が薄れていた。バブル崩壊後は貸家需要が減少する一方、一戸建て住宅も価格競争が激化し、ミサワホームや大和ハウス工業が低価格の新製品を投入していた。

内容

個人向け一戸建てを28種類から7種類、アパートを11種類から3種類に、ツーバイフォー住宅を1ブランドに集約した。分類は価格帯でなく購買層を軸とし、最高級"イズ"は建て替え客、"ローラ""セントレージ"は1次取得層・都会の建て替え層、"オリジナル"は自由設計層を狙った。ブランドごとに部材・形式の条件を定め、3設計部の商品開発に共通の枠組みを設けた。

含意

商品名の削減はブランド力の強化とともに商品開発体制の見直しにもつながったが、商品の種類そのものが減ったわけではなく、効果は当面、系列化にとどまった。業界トップのシェアを保ちながらも首都圏では劣勢が続き、業績は貸家需要の減少と金融収支の悪化を一戸建て住宅の伸びで補う構図に置かれていた。

いつ何が起きたか 5件
筆者の見解 名称の整理か、開発の合理化か
筆者の見解

名称の整理か、開発の合理化か

この決断の核心は、拡大の産物であった商品名の乱立を、成熟期に入った市場のなかで整理し直した点にある。3設計部が競い合いながら商品を生み出す体制は開発の活力を生んだが、その裏で一戸建て住宅だけで28種類という商品名の膨張を招き、個々のブランドの輪郭をかえって曖昧にしていた。価格帯でなく購買層でブランドを統合し直す発想は、多角化の果実を捨てずに訴求力を取り戻そうとする試みと推察される。

もっとも、この時点の再編は商品名の系列化にとどまり、商品そのものの種類や部品点数の削減にまでは着手していなかった。"将来的には"という留保つきの漆谷常務の言葉が示すとおり、ブランド整理をコスト構造の見直しへとつなげられるかは、なお先の課題として残されていた。首都圏での劣勢や金融収支の悪化という逆風のなかで打たれたこの一手が、単なる名称整理で終わるか、開発と生産の合理化にまで及ぶかは、その後の積水ハウスの経営が問われる分かれ目になったと推察される。

Yutaka Sugiura, 2026年7月

参考文献
出典・参考
  • 日経ビジネス 1993年7月5日号
  • 日本会社史総覧(1995)

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